「深刻そうな顔してる」
「みんなそんなヤワじゃないから大丈夫よ!
余計な心配しないで声出しなさい!」
「…ウス!」
火神くんの頬に遠慮なく拳を当てたリコに苦笑いが漏れる
…ミシ、っていったよ

ダムッ
「もらった!!」
「あぁーっ」
「さすかっっ」
8番のシュートをすかさず日向くんが止めて、俊くんから水戸部くんに回る

「止めれないよ、そんなDFじゃ」
ボールペンでボードに記入をして呟く

水戸部くんはフックシューターですからね

水戸部くんのシュートに観客が湧き上がる

「なんの〜まだまだっ」
見たことがないくらい柔らかいタッチでスクープショットを決めた春日さんに思わずペンの動きを止めたが、すぐに小金井くんが返してくれた

「やっぱりしっくりくるわねー…」
「え?」
「日向くんのアウトサイドシュートに、水戸部くんのフックシュート。それを軸にしてチームOFで点を取る今の型が、1年かけて作った型だから」
嬉しそうに言うリコを見て私も嬉しくなる

やっぱいいなぁ…バスケって。
知れば知る程面白くて、もっともっと、って思える

「あと、」
「え?」
再び湧いた歓声で我に返り、口を開いたリコを見る

「伊月くんは見えるのよ。『イーグルアイ』を持ってるからね!」
「イーグルアイ?」
残念ながら、まだ知識の乏しい私にはわからない単語だ

「彼は身体能力は恵まれてないけど、頭の中で視点を瞬時に変えられる
つまり、物を色んな角度から見れるから常にコート全体が見えてるのよ」
そっか…だから、

「だからリコは大丈夫、って言ったんだ」
「大丈夫だもの。日向くんたちは万能じゃないけどみんな1つは特技を持ってる
しかもそれを1年磨いてきたのよ」
「やっぱスゲェっす先輩たち…
じゃあ小金井先輩と土田先輩も…!?」
「え…うん」
期待を込めた目で見てきた1年生にリコはちょっと言葉を濁した

「うりゃーっ」
「小金井くんはオールレンジからシュートが打てるわ!!」
「おおっ」
しかし、小金井くんのシュートを放ったボールは呆気なく外れた

「けど成功率はそこそこっ」「それけっこー普通じゃね!?」
リコのドヤ顔と火神くんのツッコミに小金井くんがショックを受けた表情を見せた
…どんまい

ちなみに土田くんはリバウンドが得意らしい

そんなこんなで残り2:11

誠凛 49
正邦 54

5点差かぁ…
なんて思っていると、小金井くんと7番の人の小競り合いでボールが弾かれた

出る…ッ
そう思ったのに、小金井くんはそのボールに向かって走ってボールをコートに戻した

「とぉっはっん!?んぎゃーっ」
奇声と共に小金井くんはベンチの後ろに背中から倒れた

「小金井くんっ大丈…ッじゃない!?目ぇ回してるッ!!」
「軽い脳震盪だと思うけど、交代しかないかも…」
小金井くんの頭を支えて苦笑いを浮かべるリコの言葉に、

「じゃあオレを出してくれ!…ださい!」
「何言ってんだ、オマエはダメだ」
即声を上げたのは、やっぱり火神くんで
すぐに日向くんに断られた

「その元気はなんのためにとっといてるか忘れたんか、だアホ!ちゃんとケリつけてくっから待っとけ!」
「だからってやっぱジッとしてるなんてできねーよ!何か先輩たちの力に…ッ」
「ボクもそう思います。だから4ファウルの人はすっこんでてください」
本日2回目の頬への攻撃を受けた火神くんは、怒りを露わにしながら黒子くんの頭を掴んだ

「あと5分の6点差…日向くん、どうする?」
日向くんは少し間を開けると、

「わかった…じゃ、1年同士津川は頼むわ、黒子」

と言った



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