誠凛 19
正邦 19

同点かぁ…

「まだ勝負は始まったばかりよ!
フォーメーションは攻守共このまま行くわ!
ただパス回しにつられすぎてるから、ゾーンも少しタイトに。あと、火神ファウル多い!」
「う…」
「相手に合わせようなんて腰が引けちゃ流れ持ってかれるわ!攻める気持ちが大事よ!!」
「おう!!」
リコが意気込んだ直後、

ビーッ
「第2Q始めますッ」
第2Q開始の音が会場に響いた
…大丈夫なのかな、あの作戦

自分で提案をしておいて、いまさらながら不安になる

「大丈夫だ」
「え?」
自然と下がっていた頭に感じたぬくもり

「俊、くん…」
視線だけを上げると、微かに笑みを浮かべている俊くんと目が合った

「さゆと日向が提案したんだから大丈夫だって。自信持てよ」
「…うん、ありがと」
もやもやが晴れて、笑顔で俊くんを見送った
…つもりだった

「…俊くん、行かないの?」
俊くんは少し頬を赤く染めながら、口ごもっていた

「あのさ、さゆ」
「うん?」

何かを決めたように目を合わせてくる仕草に胸が高鳴る
「…キス、したくなった」
「へ?」

耳元で囁かれた言葉に、一瞬、思考停止になる
そして一気に顔が紅潮した

「しゅ、俊くん…ッ!?」
「…なんてな」
「え?」
「冗談だよ。じゃ、行ってくるわ」
触れられた頭を抑えて俊くんの背中を見送る
…試合に勝ったら、たまには私からしてみようかな

「うっおっ…」
「すっげえ!!一段と厳しい!!」
「いよいよ東京最強のDF全開か!」
スゴいプレッシャー…
火神くんでも抜けないの!?

焦った表情をする火神くんを見て思わず眉をひそめた。しかし、

「ええ!?」
黒子くんとの連携プレーで上手く津川くんを抜き、すぐさまヘルプにきた岩村さんも抜いた

「ぅ、わ…ッ」
綺麗にダンクを決めた火神くんに、思わず感嘆の声が漏れた

でも、

「気になるなぁ…」
「えっなに?付き合って間もないのに、もう気になる人ができたの?」
「そんなわけないでしょ」
至極楽しそうに聞いてきたリコに冷静に返せば、唇を尖らせて「つまんない」と呟かれた
…かわいいんだけど

「火神くんの汗の量、おかしくない?第2Qでかく量じゃないよ」
「…マズいわね」
「え?」
「10番のマークが効いてるのよ」
「マーク…」
それが効いてオーバーペースになってるってこと?

キュッ
急にプレッシャーをかけなくなった津川くんの前をすり抜けるように火神くんが動く
でも、

「だめ、火神くんッ!!」

声を上げたときにはもう遅くて…
シュート体制に入った火神くんと、DFをしにきた津川くんがぶつかってしまった

「OFファウル!!白10番!!」
「4つ…ッ」
「うわぁあっ4つ目だー!」
「誠凛のスコアラーがファウルトラブル!!」
「まだ第2Qだぞっ!?」
「バッカたれ…!」
観客の声のあと、ため息をつきながら呟いたリコは、そのまま立ち上がって交代申請をした

津川くん、わざと…
「大丈夫すよ、こんぐらいっ!
もうファウルしなきゃいいんだろ?いけます!」
日向くんは1つため息をつくと、

「ま、ちょーどいいわ。オマエと黒子はどーせひっこめるつもりだったからな」

腕を首の後ろに回しながら言った

「…え?」
「ボクもですか?」
「最初から決めてたからな。お前ら2人は前半までって
まぁ心配すんな、正邦はオレ達が倒す」
「そんな、なんでだよ…ですか!
オレと黒子が前半までって…ッ」
「理由はまぁ2つ…かな。
1つは、緑間を倒せるのはお前ら2人しかいないからだ
もしこの試合勝ったとして、秀徳に勝つには緑間攻略が必須条件だ
けど秀徳は予想通りすでに緑間を温存している
消耗したお前らじゃ勝てない
この試合、2人がフル出場すれば正邦に勝てる可能性は上がる
が、次の秀徳に勝てる可能性はない
2人を温存すれば正邦に勝てる可能性は大幅に下がる…が、決勝リーグへ行ける可能性が数%残る」
「いや、疲れててもなんとかして緑間倒してみせますよ!それに…ッ」
「火神くん…言う通りにしましょう」
「なっ?」
「ボクは先輩達を信じます。それに大切なのはきっと…もう1つの理由の方です」

ビーッ
「誠凛メンバーチェンジです!!」
黒子くんの説得に応じた火神くんがようやくおとなしくベンチに入ってくれた

水戸部くんのダンクで1点差まで詰めたスコアボードを見て思わず口が緩む

「さゆーマヌケな顔になってるわよ」
「いひゃいッ!!」
一瞬つままれた頬をさすりながらリコを見る
「みんなの雪辱戦なのよ?
1年生に頼って勝っても威張れないんだから…
あたしたちも頑張って勝算上げるわよっ」
「トーゼンですよ」
みんなに勝ってもらいたいからね



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