キュッ
「うわ…ッ」
「スゴい圧力…」

火神くんにDFをしてきた津川くんを見てリコと2人で呟く

DVDで見たけど…生だとここまで!?

「火神持ちすぎだ!よこせ!!」
火神くんから俊くんにボールが渡り、レイアップの体制に入る

もらったッ

そう思ったのに、完全フリーだと思ってたところに岩村くんが現れ、カットされてしまった

「まだ誠凛点が獲れない!!」
「すげぇぇッ」
観客の歓声に眉をひそめる
…声おっきい

「誠凛って基本スロースターターだしね
そこで初っぱなアクセル踏み込むのが火神くんだけど…まだこないからなおさら乗れてないね…」
「あら、さゆ詳しいじゃない」
「もち幸ちゃんの入れ知恵ですがね」
「…関心したのに」
リコにジト目で見られた瞬間、

「なんだとテメッ…」
「ったっ」
火神くんが津川くんにぶつかった

ピーッ
「チャージング!白10番!!」
すかさず審判の声と笛の音が響く

…もうファウル2コ目なんだけど

「あのアホは〜どんだけ頭に血が昇りやすいの!?」
「火神ー!落ち着け!!」
リコと小金井くんが叫ぶ
…聞こえてるのかな?

「パスもろくに出せないなんて…」
「黒子くんとの連係もほとんど使えないよね…」
ボールを持った黒子くんを見れば、パスコースがないことに気づく

「また!?」
「正邦のDFは全員マンツーマン
…でも並のマンツーじゃなくて常に勝負所みたいに
超密着でプレッシャーかけてくるから、ちょっとやそっとのカットじゃ振り切れないよのよね…
いくらパスがすごくてもフリーがほとんどできなきゃ威力は半減するのよ」
「DFが厳しいのはわかったけど…
そんなやり方じゃ最後まで体力保たなくない?」
「それでも保つのよ。なぜなら…」

「誠凛タイムアウトですッ」

「なぜなら、なに?」
さっきの続きをリコに促す

「正邦は古武術を使うのよ」
「古武術…!?」
「蹴らないよ!それにそれ古武術違うッ」
火神くんの想像にすかさずつっこむ

「じゃなくて正確に言うと『古武術の動き』を取り入れてるの
その技術の1つに『ナンバ走り』っていうのがあるわ
普通は手足を交互に振って走るけど、ナンバ走りは同じ側の手足を振って走る
『ねじらない』ことで体の負担が減ってエネルギーロスを減らせるらしい」
「へー…」
だからDFの圧力が強いんだ…

「ナンバ走りの他にも、
ふんばらずに力を出したり
タメを作らず速く動いたり
色んな基本動作に古武術を応用してる
それが正邦の強さなのよ」
古武術の動き…
あの違和感はそーゆーことね

「でもさ、消えたり飛んだりするわけじゃないし、相手は同じ高校生、でしょ?」
「さゆの言う通りよ。フェイクにもかかるし、不意をつかれればバランスも崩れる」
「つまり、やってるのは同じバスケ
いつも通りやればちゃんと通用する
まだテンパるとこじゃないじゃない」
リコと目を合わせて笑い合う
なんだ。弱点だって普通にあるんだ

「伊月センパイ…ボール回してもらえないすか」
「え?」
「もっかいアイツとやらせてください」火神くんはシャツをズボンにしまいながら言った

「じゃ、いいか?任せて。なんか秘策あり?」
「いや…けど、とどのつまり同じ人間すよね?
相手より速く…ぶち抜きゃいいんだよ…です」
「うおお〜なんだソレ?大丈夫か?」
「多分大丈夫だと思うよ」
不安を全開にしてる俊くんに笑いながら話しかける

「火神くん、やる時はやるもん」
「…さゆ、信用してんな」
「とーぜん、みんなのこと信用してますよ?」
ニッと笑ってピースをする

「んじゃま、その信用を無くさないようにちょっくら勝ってくるか」
「わわっ」
くしゃっと撫でられた髪の毛を整えてコートに入ってく俊くんの背中を見る

「相変わらず熱いわね〜」
「リコ…ッ」
「いちゃついてないでちゃんと作戦考えてよね」
「…はーい」

キュッ
火神くんと津川くんの1オン1が始まり、試合に集中する

切り返してチェンジオブペース!?

「はや…ッ」
「おおおッマジか今!?」
「はえぇー電光石火!!」いけるかもしれない、なんて考えはすぐに消えた
…抜かれた津川くんの笑顔に、鳥肌が立った



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