「幸ちゃんっ」
「おっさゆ」
「え、さゆさん?」
手を挙げる幸ちゃんと、その隣で不思議そうな顔をしている黄瀬くんに早歩きで近づく

「幸ちゃんがね、今日応援に来てくれるってメールくれたからお出迎えです」
そう言って幸ちゃんの隣に立って歩き出す

「お前、ちゃんと仕事してんのか?」
「失礼な!頑張りすぎってくらい頑張ってやってますよ」
「さゆさん、練習試合のときも頑張ってましたもんね」
「ほーらっ幸ちゃんがわかってなくても黄瀬くんはわかってくれてる
ちゃんと女の子のこと見てないからモテないんだよ」
べっと舌を出して言えば思いっきり頬をつねられた

「いひゃいいひゃいッ!!」
「別にいんだよ、モテなくても」
「てか、笠松先輩モテるじゃないスか」
「え、そうなの!?」
ひりひりと痛む頬をさすりながら幸ちゃんと黄瀬くんを見る…と、

「さゆ、電話だぞ」
そのタイミングで携帯が鳴った
…幸ちゃんの前でよくメールとか電話するから着信音バレバレなんだよね

「もしもし」
[さゆ?俺だけど…]
「俊くんっ」
にやける口角を隠すように2人に背中を向けて電話に集中する

「どうしたの?」
[今アップ終わって控え室に向かう途中なんだけど、もう戻って来れないか?]
「ん、わかった。すぐ戻るねっ」
電話を切って2人を見れば、スッゴい笑顔の黄瀬くんと呆れた表情の幸ちゃんがいた

「わ、私先戻るねっじゃあ後で!!」
今までにないくらい急いで走り出す

「…あいつわかりやすすぎだろ」
「彼氏からだって一発でわかったっスよね」

なんて会話を私は知らない

「いま戻りまし、た…?」

え、なにこの空気。超重いんですが…

「リコ…みんな固くない?」
「そうなのよね…よしっ」
リコはみんなの前に立つと、

「全員ちょっと気負いすぎよ…
元気でるように1つごほうび考えたわ!」

声を張り上げた
…まさか

「次の試合に勝ったら…みんなのホッペにチューしてあげる!どーだ!!」

マジだったぁあぁッ!!

しかし、
「ウフッってなんだよ…」
「星出しちゃダメだろ…」
容赦ないみんなからの一言

「バカヤローッ!義理でもそこは喜べよ!」

そして日向くんからのとどめの一言
…みんな容赦ないなぁ

「…フ、フフフ」
「リ、リコ?」
「ガタガタ言わんとシャキッとせんかボケー!!
去年の借り返すんだろが、ええおいッ!?
1年分利子ついてえらい額になってんぞコラー!!」
ぎゃーっと叫んだリコを抑えて水戸部くんと2人でなだめる

「わりーわりーわかってるよ」

日向くん?

「…おっしゃ!!…行く前に改めて言っとく
試合始まればすぐ体感するけど、1年はちゃんと腹くくっとけよ。正邦は強い!
ぶっちゃけ去年の大敗でオレらはバスケが嫌いになって、もうちょいでバスケやめそうになった」

沈んだッ!?

日向くんの言葉に1年生が全員うつむいた

「うわ!暗くなんな!立ち直ったし!元気だし!
むしろ喜んでんだよ!
去年と同じには絶対ならねー!それだけは確信できるくらい強くなった自信があるからな!」

笑顔で言った日向くんに自然と頬が緩む

ホントにバスケが大好きなんだなぁ

って思うくらいの笑顔だ

「あとは勝つだけだ!いくぞ!」
「オオウ!!!」


[それではこれより、Aブロック準決勝第1試合
誠凛高校対正邦高校の試合を始めます]

試合をするわけじゃない私まで手が震えてくる

死に物狂いの対王者二連戦…

最初の王者、正邦!!

「おおッ」

ボールが宙に投げられた



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