「ただいまー」
偵察を終えてみんながいる体育館にリコと入る

「カントク、今日はスキップとか…」
「するか!!」
「さすがに公式戦でスキップはないよ」
声をかけてきた1年生をニラんで言ったリコの肩を叩いて落ち着くように促す

「…にしても機嫌悪ーな。強いのか相手?」
「ちょっとやっかいな選手がいるのよ
とりあえず、ビデオはあとで見せるとして、まず写メ見て」
「…これは!」
日向くんが見た画面には寝っ転がっている猫の写メ
…マジ萌える…ッ

「かわいいが…」
「…ゴメン、次」
「次?」
カチッと機械音がした直後、日向くんの表情が固まった

「名前はパパ・ンバイ・シキ
身長200cm、体重87kg
セネガル人の留学生だって」
「セネガ…でかぁ!!」
「アリなの!?」
「留学って…てゆーかゴメン、セネガルってドコ!?」
「でかいだけじゃん?」
みんなが盛り上がっている中、火神くんだけが冷静に呟く
そのでかさが問題なんだけどね…「このパパ・ンバイ…なんだっけ?」
「パパ・ンバ…」
「話が進まん!
黒子くん、なんかアダ名つけてっ」
黒子くんを見れば、
パパ…
と呟いている
予想ついた…

「『お父さん』で」
「何そのセンス!!?」
やっぱりーッ!!

「だからこのお父さんを…聞けよ!!」
みんなプルプルしてるしっ

「特徴は背だけじゃなくて、手足も長い
とにかく『高い』の一言に尽きるわ!」
「戦力アップのために外国人選手を留学生として入れる学校は増えてるらしいの
次の相手の新協学園も去年のビデオを見る限りは中堅校ってカンジだけど…
お父さんの加入で完全に別物のチームになってた届かない、それだけで誰も止められないんだよ」
リコと私の言葉を聞いてから体育館が静まり返った

「だからって何もしないワケないよっ
で、火神くんと黒子くん、2人は明日から別メニューね」
「予選本番は5月16日!!
それまで弱音なんてはいてるヒマないわよ!!」
「おう!!」

「さゆ!!」
「んー?」
「これ、買ってきてくれない?」
リコに手渡された紙を見て思わず目を見開いた

「え、ちょ…ッ1人で持てるわけないッ!!」

テーピング
洗濯用洗剤消毒液
絆創膏
包帯
その他もろもろ…

「多すぎでしょッ」
「もー…何言ってるのよ?」
「は?」
リコは私の肩にぽんっと手を置くと、

「伊月くん誘ってきなさい」

超いい笑顔で言た

「な、何言ってんの!?練習あるのに…ッ」
「大丈夫。そんなに距離ないし、力もつくから」
「えー…」
私今超気まずいんだよ?
いや、勝手に気まずいだけなんだけど…

「あのね、さゆ」
「…何でしょう」
「いい加減告白しなさいよね!?
見ててこっちがどれだけもどかしいか…ッ」
「え、なんで?」
「うるさいっ」
「ぁうッ!!」
頭殴ったよ、この人!!

痛む頭を抑えていると、
「伊月くん、ちょっと」
「なに?カントク」
リコは伊月くんに何かを言っていた

「カントク、遠慮ねーな」
「あっ日向くん」
「赤くなってんじゃねーか」
「え…」
え、あれ?なんか日向くんの顔が近…ッ

「わっ」
近づいてくる日向くんの顔に戸惑っていると、後ろから腕を引っ張られた

「行くぞ、清水」

誰、と思う時間もなく伊月くんの声がして、あたしが返事をする前に腕を引っ張られながら体育館から出ていた

「い、伊月くんっ」
え、ムシ!?

何回か名前を呼ぶが伊月くんは一回も振り返らない
それどころか、名前を呼ぶたびに腕を掴む力が強くなっていく

「っいた…ッ」
「あ…」
思わず漏れた言葉に反応して伊月くんが立ち止まった

「…ごめん、清水」
「ううんっ大丈夫っ」
腕から手が離れて改めて周りを見る
…あれ、周りに誰もいない

いたのは公園みたいな場所
でも誰もいなくて、2人きりだと気づいたら一気に身体を緊張が走った

「…清水」
「な、なに?」

しばらく続いた沈黙にどうしよう、と頭をひねっていると伊月くんが口を開いた

「あのさ」
「?うん」
「今から言うこと驚かないで聞いてくれよ?」
「?」
伊月くんにしては妙に歯切れが悪くて、その空気に緊張がほぐれていく

「あー…え、と…」
伊月くんが何回か口をもごもごと動かしたと思ったら、

「好き、なんだ、けど、」

耳に届いた言葉。
すぐに理解できなくて思わず固まってしまった

「清水?」
伊月くんの声にはっと我に返る

「え、あ…えと…」
夢じゃないん、だよね?
私、確かに伊月くんに告白してもらったんだよね…?

何回か深呼吸をして

「わ、私も、好き…、です…!」

小さく、本当に小さく呟いた

それでも伊月くんには聞こえたようで、ちょっと照れた満面の笑みを見せてくれた
「私ね、今のクラスになってすぐ伊月くんのこと好きになったんだ」
繋がれた手のあったかさに少しむずがゆく思いながらも幸せを実感する

「俺はもっと前かな」
「え?」
「入学してすぐ」
「うそ…ッ」
伊月くんは悪戯な笑顔をしながら

「カントクに会いに体育館に来てただろ?そのときから」

と言った

「…全然気づかなかった」
「さゆは鈍いから」
「鈍くなんか…あれ?いま、名前…」
さゆ、って言った、よね…?

「もう付き合ってるんだから名前でいいだろ?」
「まぁ、ね…」
「だからさゆも伊月くん、じゃなくて俊、って言ってよ」
「ぁ、う…」
にこにこと笑いながら私の言葉を待つ表情に顔を赤くしながら

「っ俊…ッ」

頑張って口を開いた
でも…

「や、やっぱり…もうちょっとかかります…ッ」

恥ずかしくて死にそうです…ッ!!


5月16日(土)
AM 8:00

「全員揃ったわね!」
リコが携帯を閉じて言った
…火神くん、また眠れなかったんだ

黒子くんの隣で目の下に隈をつけている火神くんを見て苦笑する

これから試合ごとに毎回隈作ってくるのかなぁ…

第一試合
誠凛高校 対 新協学園
10:00〜

ダムッ

「ねーリコ」
「なによ?」
「お父さんいなくない?」
「…そういえばいないわね」
リコと周りを見渡していると、

「すみません、遅れましたーアィテッ
日本低イ、ナんデも…」
扉で顔をぶつけたあと困った表情をしながら体育館に入ってきた

やっぱ長いな、お父さん

「何やってんだ、早く来い!」
「すみません、遅れましたー」
「なんでそこだけ流暢なんだよ!!」
言い慣れ過ぎでしょッ

「なんか感じ悪い…」
日向くんに何かを言ってる新協の人たちを見て呟く。
内容はわかんないけどね
なんとなく良い話じゃないのはわかる

「あっ黒子くんにぶつかった」
「あれは見えてないわねー…」
お父さんは何回か周りを見渡すと、黒子くんの存在に気づいてひょいっと抱き上げた
…超軽々となんだけど

「さゆ、仕事しなさいッ!!」
「はーい」
燃え上がったみたいなみんなを見てからリコのところに行く

初めての公式戦観戦

楽しみになってきたっ

「…あっ」
この試合終わったら伊月くんとのことリコに言わないと……絶対からかわれるな



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