「何?結局全面使うの?」
「ゴールぶっ壊した奴がいんだってよ!」
「はぁ?…うお!マジだよ!!」
海常の人たちの声を聞きながら荷物を持って移動する

「わわっ」
ふらふらしながら荷物を運んでいると、ふと、腕の中の荷物がなくなった

「お前危なっかしすぎ」
頭上から聞こえた声に顔を上げれば、昔よりも遥かに大きくくなった身体で私を見ている幸ちゃんがいた

「幸ちゃんッ」
「幸ちゃんゆーな」
「った…暴力反対!!」
叩かれた頭を抑えて涙目で訴えれば無視して誠凛ベンチまで荷物を持って行ってくれた
…なんだかんだ優しいよね

「ありがと」
「おう」
さっきは叩いた頭を今度は撫でて海常ベンチに戻って行く背中を見て、ふと浮かんだ疑問
…女の子の苦手意識なくなったのかな?

そんなことをぼんやりと考えながらベンチに座れば、リコが楽しそうに隣に座ってきた

「もーさゆってば、向こうの人とらぶらぶじゃないっ」
「いや、らぶらぶ違う」
「冗談よ、冗談♪それより、」
リコはあたしの耳元に口を寄せると、

「伊月くん、機嫌悪くしてたわよ」

と囁いた
機嫌悪く、って…

「わ、私…なんかしちゃったのかな?」
ちら、と伊月くんを見てリコに尋ねれば

「…予想通りの反応ね」
呆れたように言われた
予想通り?
頭を動かしだした瞬間、

ピーッ
「それでは試合再開します!!」
笛の音と審判の声が響いた
そしてざわつく体育館

「スゴい…」
リコみたいな目じゃなくてもわかる
モデルだなんて雰囲気、微塵もない

「キャアアッ黄瀬クーン!!」
自信満々でコートに立つ黄瀬くんを見て周りにいたファンが叫ぶ
正直うるさくてたまんない

「うぉわ!?なんじゃい?」
「あーあれ?
アイツが出るといつもっすよ」
日向くんの言葉に幸ちゃんは呆れたように答え、

「てゆーか、テメーもいつまでも手とか振ってんじゃねーよ!!」
「いてっスイマッセーンっっ」
思いっきり黄瀬くんを蹴って一言

「シバくぞ!!」…もうシバいてますけど

「幸ちゃんきょーぼー」
ボソッと呟くと、スッゴいニラまれた
地獄耳…ッ!?

キュッ
開始直後、幸ちゃんが伊月くんを抜いてボールは黄瀬くんに回った

「こっちもアイサツさせてもらうっスよッ」
黄瀬くんは跳ぶと日向くんの上からダンクを決めた

あれってさっきの火神くんの!?

「おおっ!!」
「おおおおおお!!」
客席からは歓声が上がり、

「バカヤロー、ぶっ壊せっつったろが!!
まだくっついてんよ!!」
「いってっスイマッセン!」
幸ちゃんからは不満の声が上がった

なんてめちゃくちゃな主将…

再び蹴られた黄瀬くんに心の中で手を合わせた
てゆか、

「威力は火神くんよりあんじゃん…」
いまだにギシギシと音をたてるゴールを見て呟く
そのとき、

「女の子にはあんまっスけど…
バスケでお返し忘れたことはないんスわ」

黄瀬くんはカッコよく言った
いや、自慢じゃないよね

「上等だ!!黒子ォよこせ!!」
火神くんの声と同時にボールが黒子くんから火神くんに回る
驚く海常をよそに決まったダンク
…ダンク以外しないのかな


「誠凛16の海常17…ッ!?」
「なんなんだ一体!?このハイペースは!?」
まだ始まって3分なのに…ッ

これが『キセキの世代』同士の衝突…!?
それに、
黄瀬くん以外の4人の圧力もスゴいし…

ダムッ

「後ろに…フェイダウェイ!?」
しかし、黄瀬くんは難なく火神くんからボールを取ってフェイダウェイを決めた

また火神くんと同じッ!!

「…リコ」
「?」
「あくまでもあたしの意見ね」
「えぇ」
「TOした方がいいかも」
「?」
「火神くんをクールダウンさせなきゃ…ッ」
そう言えばリコは私の頭に手を置いてTO申請に行った

…間違った選択じゃなかったんだ

「誠凛TOですッ」
ベンチにきたみんなを見てタオルとドリンクを持った手が止まる。
まだ5分なのに、みんなの体力消費が半端ない…

「さゆッ!!」
リコの声で我に返り、慌ててタオルとドリンクを渡していく

「はい、伊月くん」
「あぁ、ありがと」
伊月くんにも渡してその場を離れようとした瞬間、

「ひゃ…ッ!?」
突然腕を引かれ、ベンチに座り込んでしまった

「い、伊月くん?」
今にも飛び出してきそうな心臓を落ち着けようと必死に息を整えながら伊月くんを見る

「話聞くの、ここでいいでしょ」
ちょっと顔を赤らめて言った伊月くんに、落ち着いてきた心臓が再びうるさく鳴りだしたのは言うまでもない

「さゆ聞いてる!?」
「えっ?」
「ちゃんと聞きなさいッマネージャー!!」
「ごめんなさぁい…」

小さく呟いて集中しようとするがさっきの伊月くんの表情が頭から離れなくて…
再びリコに怒られてしまった
…だってリコさん

好きな人が隣にいる状況で集中できるほど、私はまだ大人じゃないんです



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