「おお〜広〜やっぱ運動部に力入れてるトコは違うねー」

海常を見て日向くんが一言
うん、確かに広い

てゆか、
「海常って誰かいたような…」
誰だっけ?
なんて考えていたら、

「どもっス。今日は皆さんよろしくっス」
爽やかな声が聞こえた
黄瀬くんだ
…ちょっと気まずいよね

さりげなくリコの背中に隠れながら再び頭を動かす

俺、高校海常になったから

あれは誰の言葉だったっけ…

「あ、ここっス」
黄瀬くんの言葉に体育館を覗く

「…って、え?」
「片面でやるの?」
もう片面は練習中なんだけど
「てかコッチ側のゴールは年季入ってんな…」
リコと私の声に続いて誰かが呟いた

「ああ、来たかヨロシク
今日はこっちだけでやってもらえるかな」
相手の監督
どう見てもタヌ…げふんっ

「こちらこそよろしくお願いします
…で、あの…これは…?」
「見たままだよ
今日の試合ウチは軽い調整のつもりだが…
出ない部員に見学させるには学ぶものがなさすぎてね
無駄をなくすため他の部員たちには普段通り練習してもらってるよ
だが調整と言ってもウチのレギュラーのだ
トリプルスコアなどにならないように頼むよ」

「…リコ、落ち着いて」
怒り狂って今にも監督を殴りそうなリコの肩を叩いてなだめる
…実際私も結構キてるけど
つまり、
「練習の片手間に相手してやる」
ってなことなんでしょ?
ふざけんなよ、タヌキじじぃ
…あっ言っちゃった

「…ん?何ユニフォーム着とるんだ?黄瀬、オマエは出さんぞ!
各中学のエース級がごろごろいる海常の中でもオマエは格が違うんだ
黄瀬抜きのレギュラーの相手も務まらんかもしれんのに…
出したら試合にもならなくなってしまうよ」

タヌキの背中越しに海常レギュラーを見つけて記憶が綺麗に蘇った

海常に進学した人、ようやく思い出せた
…じゃなくて、今は

「…リコ、とりあえず下剤でも盛って来ますよ、あたし」
「目マジだからやめなさい」
ホンットあのタヌキムカつくんだけど!!「大丈夫ベンチにはオレ入ってるから!
あの人ギャフンと言わせてくれればたぶんオレ出してもらえるし!
オレがワガママ言ってもいいスけど…
オレを引きずり出すこともできないようじゃ…『キセキの世代』倒すとか言う資格もないしね」
…結局、黄瀬くんもあのタヌキと同じなんじゃん
完璧に誠凛を見下してる

「オイ、誠凛のみなさんを更衣室へご案内しろ!」

「アップはしといて下さい
出番待つとかないんで…」
「あの…スイマセン
調整とかそーゆーのはちょっとムリかと…」
黒子くんは黄瀬くんに
リコは監督に
そして、

「覚悟しなさいよ、幸ちゃん!!」

あたしは幼なじみであり、海常の主将でもある笠松幸男に

「「「そんなヨユーは
すぐなくなると思いますよ」」」

体育館を出ながら幸ちゃんに向かってベッと舌を出した。
口に出してなくてもわかる
幸ちゃんが…幼なじみが何を思ってるかなんて

幸ちゃんも、黄瀬くんと監督と同じ考えだってこと
あと、私、幸ちゃんに誠凛でマネやってること言うの忘れてたや

−in 更衣室−

「さゆって海常に知り合いいたんだ」

みんなの着替えを待つ間、座ってたらリコが言葉を漏らした
「うん、幼なじみ」
ついさっきまで忘れてたけど

「じゃあ、あの人が初恋の相手とか!?」
「……んなベタな」
「なによその間は」
「さーて…ドリンクの準備でもするかなっ」
できる限りのさりげなさを装って立ち上がれば、右腕をリコに引かれて再びイスに座ってしまった

「…リコ?」
「ふふっあ私に嘘つくのかしら?」
「まさかっ!!」
笑顔が怖いリコを見てちょっとびびる
…今後ろに般若が見えた

「もう一度聞くわよ?
あの人はさゆの初恋の相手よね?」
もはや質問じゃないのだが

「そうよね?」
「…そうですけど」
「やっぱりね」
「なんでわかったの?」
今はなんとも思ってないから顔に出ないと思うんだけど…

「だって、今さゆが好きな人に似てるもの」さすがリコ…めっちゃ鋭い…ッ

「さてと…みんな着替え終わったー!?」
リコッ!?
「ちょっ迷いなく開けるな!!」
なんの躊躇いもなく私たちを遮っていたカーテンを開けたリコに苦笑いしながらも、ドリンクやタオルの準備をする

さてっ
あっちの監督をギャフンと言わせに行こっか

「それではこれから
誠凛高校対海常高校の練習試合を始めます!!」
審判の声に双方の選手がコートの真ん中に集まる
…が、

「…や、あの…だから始めるんで…
誠凛早く5人整列してください」
審判が戸惑いながら言う
いや、うーん…目の前にいるんだけどね

「あの…います5人」
「…おおぇ!!?」
「うおっ…なんだアイツ!?」
「薄っすいな〜カゲ…」
「あんなんがスタメン!?」
黒子くんの主張を皮切りに体育館中から様々な声が飛び交う

素直すぎるだろ、海常

「どしたん?リコ」
隣で口を開けたまま固まってるリコを見る
…もしかして、

「フィジカルじゃ完全に負けてる?」
あたしの呟きに小さく頷いた
さすが全国クラス…

「っし!んじゃまず一本!キッチリいくぞ!」
ジャンプボールは海常が取り、すぐさま幸ちゃんに回った
そして幸ちゃんがボールをバウンドさせていると、

ビッ

黒子くんがボールを弾いた

「なっ…にぃ〜!?」
幸ちゃんの驚愕した表情にちょっと笑いそうになる
…試合中試合中

幸ちゃんが取る直前に火神くんにボールが回ったかと思えば、

バキャッ

「お?」
高く飛んでダンクを決めた直後に響いたバキッという音。
そして火神くんの驚いた声
彼の手には、

「…あれってゴールだよね?」

ゴールが握られていた
「おおおぇぇ〜!?」
「ゴールぶっこわしやがったぁ!!?」
「あっぶね
ボルト一本サビてるよ…」
「それでもフツーねぇよ!!」
慌てる声に混ざって妙に冷静な声
…フツーボルトがサビててもゴールって取れないよね

「どーする黒子コレ」
おーリングって思ったよかデケーな。
なんて自分の顔と比べてる火神くんを見て、黒子くんは「どーするって…まずは謝ってそれから…
すいません、ゴール壊れてしまったんで全面側のコート使わせてもらえませんか」

極当たり前のように言った



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