「ちょっと調べたいことあるから部活遅れるね!!」
とリコに告げて向かったのはパソコン室
そして調べているのは、

「あった…『キセキの世代』」

『キセキの世代』について。
バスケの知識はある程度詰め込んだけど…
そんな人たちがいたなんて知らなかったから、言葉すら初めて聞いたのだ

帝光中学校バスケットボール部
部員数は100を越え
全中3連覇を誇る超強豪校

その輝かしい歴史の中でも特に「最強」と呼ばれ無敗を誇った−
10年に1人の天才が5人同時にいた世代は『キセキの世代』と言われている
−が『キセキの世代』には奇妙な噂があった

誰も知らない
試合記録も無い

にも関わらず、天才5人が一目置いていた選手がもう1人−
幻の6人目(シックスマン)がいた
−と

「『キセキの世代』の名前は書いてない、か…」
ちょっと情報は少ないけど、ないよりはマシでしょッ!!
そう思ってすぐそのページをコピーする

「よしっ」
その紙を持ってパソコン室を飛び出す

「あれー?」
体育館に向かっていると、他校の制服の人が周りを見渡していた

「どうしました?」
後ろから声をかけると、その人は驚いたように振り向いた
…あれ、この人

「あー…体育館ってどっちッスか?」
「え、体育館?」
爽やかイケメンくんを見ると、勢いよく頷いている

「私も行くんで、一緒に行きますか?」
「はいっ」
…犬の耳と尻尾が見えた気がした。に、しても、
「私たち、初対面ですよね?」
「え?」
「どっかで見たことある…」

金髪のイケメンくん

…なんて名前だっけ?
あー…いー…う…?
なんか違うなぁ…

「あぁ、多分…」
イケメンくんが口を開いた瞬間、
「あっここだよ、体育館」
体育館に着いてしまった

「あ、名前…」
「また今度でいいッスよ」
「そう?あっ私、清水さゆ
気が向いたら覚えておいてッ
じゃあね、金髪イケメンくん!!」
そう言って手を振りながら体育館に入って行く

「…すぐ会うんスけどね」
なんて呟きは聞こえなかった

「リコーッ!!」
「遅いッ」
「はぁうっ」
叩かれた頭を抑えながら紙を差し出す

「これ調べてたのッ」
「これ…」
「私、『キセキの世代』全く知らなかったんだもん」
だから、と続ければ今度は頭を撫でられた
…なんか嬉しい
その時、急に体育館が賑やかになった

「ちょ…え?何!?なんでこんなギャラリーできてんの!?」
リコの言葉に反応して周りを見渡せば、どこを見ても女の子だらけ
…バスケ部ってこんなに人気あったんだ。

「あーもー…。
こんなつもりじゃなかったんだけど…」

え、この声って…

「…アイツは…ッ」
「……お久しぶりです」
「黄瀬涼太!!」
日向くんと黒子くんの声のあと、誰かが叫んだ名前。

「スイマセン。マジであの…え〜と…
てゆーか5分待ってもらっていいスか?」

そう言って軽く手を上げている人物は、間違いなくさっきまで一緒にいた人で−

「あっ」
そうだ…黄瀬涼太!!
友達がファンだって言ってたっけ

てゆか…
「なんで黄瀬くんが?」
「あっさゆさんっ
いやー次の相手誠凛って聞いて、黒子っちが入ったの思い出したんで挨拶に来たんスよ
中学の時一番仲良かったしね!」
へー…
黒子くんと中学同じだったんだ

「フツーでしたけど」
「ヒドッ!!」
仲良くはないみたいだけど

「すげー…ガッツリ特集されてる…」
隣でそう呟く部員が持ってる雑誌を隙間から覗く

中学2年からバスケを始めるも、恵まれた体格とセンスで瞬く間に強豪・帝光でレギュラー入り。
他の4人と比べると経験値の浅さはあるが急成長を続けるオールラウンダー

…黄瀬くんって『キセキの世代』だったんだ
てゆか、

「中2から始めて『キセキの世代』!?」
「いや、あの…大ゲサなんスよその記事ホント
『キセキの世代』なんて呼ばれるのは嬉しいけど…つまり、その中でオレは一番下っぱってだけスわ〜」
調べた限り、『キセキの世代』ってホントにスゴいのに…
黄瀬くんって謙虚だなぁー

「だから黒子っちとオレはよくイビられたよ、な〜っ」
「ボクは別になかったです
てゆーかチョイチョイテキトーなコト言わないでください」
「あれ!?オレだけ!?」
黒子くんと話かみ合ってないけどね

「あっさゆさん」
「なに?」
「これ、さっき落としましたよ」
黄瀬くんに差し出されたのは見覚えのあるハンカチ
…全然気づかなかった

「ありがとうございますっ」
そう言って受け取ろうと腕を伸ばした瞬間、

「危ないっ!!」
「え?」
ふいに抱きしめられた感覚と頭上で聞こえたバチッという鋭い音と、黄瀬くんの戸惑う声

え、私…っ!黄瀬くんに抱きしめられてません!?

どうしたらいいのか、とか
伊月くんが見てる…ッとか

いろいろ焦ることはあるけど
とりあえず気になるのはボールを投げてきた相手

「った〜ちょ…何!?」
「せっかくの再開中ワリーな
けどせっかく来てアイサツだけもねーだろ
ちょっと相手してくれよイケメン君」

火神くんかいッ!!
いやっなんとなく予想はついたけどねッ

「火神!?」
「火神くん!!」
日向くんとリコの声が聞こえ、我に返り、慌てて黄瀬くんから離れる

「かっ庇ってくれてありがとうございました…ッ」
なんか恥ずかしくて、黄瀬くんの顔を見ないままお礼を言ってリコの背中に隠れる

「は、恥ずかしすぎて死ねる…ッ」
制服を掴みながら言えば、

「ほらっマネージャー!!始まるわよっ」
…頭叩かれました
しぶしぶ顔を覗かせればちょうど始まったところで、

ダムッ
キュッ

ドリブルする音とバッシュの音が体育館に響く
そして、

「彼は見たプレイを一瞬で自分のものにする」

黒子くんの声と同時に、黄瀬くんは火神くんの周りをドリブルしながら回り、ダンクを決めようとジャンプをした

見たプレイ、ってことは…
これは火神くんのプレイ?

「うおっ火神もスゲェ!!」
「反応した!?」
すかさず火神くんが反応して止めに入るが、

ドッ
「がっ…!?」
黄瀬くんは火神くんを弾き飛ばしてダンクを決めた

「これが、『キセキの世代』…
黒子くんの友達スゴすぎるでしょっ」
「……あんな人知りません」
「え?」
知らない、って

「正直さっきまでボクも甘いことを考えてました
でも…数か月会ってないだけなのに…彼は…」
黒子くんはそこで口を閉じたけど、言いたいことはなんとなくわかる

予想を遥かに超える速さで『キセキの世代』の才能は進化してる…ッ

「ん〜…これは…ちょっとな〜」
「?」
突然口を開いた黄瀬くんにみんなが注目する

「こんな拍子抜けじゃやっぱ…挨拶だけじゃ帰れないスわ
やっぱ黒子っちください」

は…?

「海常おいでよ。また一緒にバスケやろう」
「なっっ!?」
黄瀬くん!?

「マジな話、黒子っちのことは尊敬してるんスよっ
こんなとこじゃ宝の持ち腐れだって」
…こんなとこ?何それ。

「…によ、それ」
「さゆ?」
リコの声を背に、黄瀬くんに近づく

「さゆさん?」
不思議そうな目で私を見る黄瀬くんを睨んで口を開く

「こんなとこって、宝の持ち腐れって何よ!!
確かに黄瀬くんはスゴいよ!?
今はまだ勝てないかもしれないっ
それでも…ッ誠凛は絶対強くなる!!
海常なんかに負けないんだからッ!!」

…言い切ってから気づいた
私、とんでもないこと言った!?

「さゆさん…」
「ごっごめんなさぁい…ッ」
なんとなく周りをみるのが怖くて俯きながら謝れば、頭上に柔らかい感触

「先輩、ナイスです」
「く、ろこくん…」
見上げれば、優しく笑いながら頭を撫でてくれている黒子くん。
黒子くんは頭から手を離すと、口を開いた

「そんな風に言ってもらえるのは光栄です
丁重にお断りさせて頂きます」
「文脈おかしくねぇ!?
そもそもらしくねっスよ!勝つことが全てだったじゃん
なんでもっと強いトコ行かないの?」
「あの時から考えが変わったんです
何より火神くんと約束しました
キミ達を…『キセキの世代』を倒すと」
「…やっぱらしくねースよ。そんな冗談言うなんて」
黄瀬くんの雰囲気が変わった気がして、背中を冷や汗が伝った

『キセキの世代』は黒子くん以外、みんな

勝つことが全て

なんて考えかと思うとゾッとした

「清水」
「いっ伊月くん…ッ」
黄瀬くんに抱きしめられたのを見られたかと思うと恥ずかしすぎて顔に熱が集まる

「…え?」

目の前には伊月くんの肩
あたしの背中には伊月くんの腕

…えぇぇぇぇッ!?

あまりに突然の出来事に頭の中が真っ白になる

「消毒」
「…消毒?」
身体が離れて一言目の言葉に首を傾げると、
「わからないならいいよ」
と伊月くんは笑ってみんなの元に走って行った
………なんの消毒?



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