体育館から外を見れば、ものすごいどしゃ降り

「スゴい雨…」
ポツリと呟いた声が雨音で消えた…てゆか、

「なんで私ここにいんの!?」
なんか普通にマネージャーみたいなんだけどッ

「ヤダなぁ、さゆ。あなたがマネやるって…」
「言ってませんけど!?」
笑顔で肩を叩いてきたリコに言い返せば「まぁまぁ」と言い、

「伊月くんとさゆがたくさん話せるようにしてあげたんだから感謝しなさいよ♪」

「はッ!?」
耳元で言われた言葉に顔が熱くなっていくのがわかる

「なっなななっ何言って…ッ」
「見てればわかるわよ」
…鋭すぎるよ

「てゆーことで、よろしくね、マネージャー♪」
「うんッ!!…うん?」
「よしっじゃあ早速、飲み物作ってきて」
リコはニッコニッコと笑顔を浮かべながら私の背中を押してきた

「えっちょ…ッリコーッ!?」
「あっ日向くん、ちょっとー」
「ムシッ!?」
半泣きになりながらも飲み物を用意する

ピッ
「ん?」

笛の音に反応してコートを見れば、2年生と1年生が試合をやっていた

はー…やっぱり火神くんってスゴいなぁ…
普通にダンク決めてる

「うわぁっマジか、今のダンクッ」
「スゲェ!!」
みんなも声を上げた

11対08って…
1年生のが押してる!?
ほとんど火神くん1人で点数稼いでるけど…

そんなことを考えながら飲み物を邪魔にならないようにステージに置いて再びコートを見る

「わ…ッ」
ボールを持った火神くんを2年生が3人で囲む
ボール持ってなくても2人って…
ボールに触らせることもさせないんだ…

そしてしばらくし、

「15対31かぁ…」
2年生のが上手いし、火神くんが攻めれなくなったのがやっぱりおっきいんだ…

「やっぱり強い…」
「てゆーか勝てるわけなかったし…」
「もういいよ…」
「もういいって…なんだそれ、オイ!!」
弱音を吐いた9番の男の子の襟を火神くんが掴んだ

「ぇ、ちょ…ッ」
ケンカになっちゃ…
「落ち着いてください」

火神くんに近づこうとした直後、15番の子が火神くんに膝かっくんをした
…あれ?あの子って、

「黒子くん?」
入部勧誘の時を思い出して顔を一致させる

「がんばれ、あと3分!」
点数係の人が声を上げた直後、黒子くんにパスが回った

…なんだろ、この違和感
何かとんでもないことが起きてる気がする…

フワッ

そんな効果音がぴったり合う。そう思った。
それくらい、黒子くんに回ったパスは綺麗に通った


「…え…あっ」
ボールが回ってきた9番の子は少し驚きつつもシュートを決めた

「スゴい…」
思わず漏れた声

「入っ…えぇ!?今どーやってパス通った!?」
「わかんねぇ、見逃した!!」
周りがざわめく中、黒子くんは順調にパスを繋げていく

「どーなってんだ一体!!?」
「気がつくとパス通って決まってる!?」
存在感のなさを利用してパスの中継役になってる?

ボールに触ってる時間が極端に短くて…
えーと…こうゆうのなんて言ったっけ?

ミステリー?
いや、ないな…推理小説かって

ミスチル?
…確かに好きだけど絶対違う

あぁ、そうだ

「ミスディレクションだ」
自分以外を見るように仕向けてるんだ
…ってなんかの漫画で見たことある

「あッ!!」
黒子くんのパスに気をとられすぎていたせいか、みんな反応が遅れてしまった

「火神!!」

36対37!?
「1点差…ッ」
その時、

「いけぇ、黒子!!」
黒子くんがボールを持ってゴールに向かって走り出した

「勝っ…」

ガボンッ

…ガボン?

「…だから弱ぇ奴はムカツクんだよ。ちゃんと決めろタコ!!」
火神くんは黒子くんの外したボールを取ってダンクを決めた

「1年生が勝っちゃった…」
なんて唖然としていたら、

「さゆーッ」
リコに手招きをされ、飲み物とタオルを持って早歩きで歩く
…てゆか、伊月くんいないんだけど。なんでだよぉ…

そう思いながら頬を軽く膨らます

あと少しでみんなの前

というところで、視線が床に向いた
「…ぁりょ?」
危ないッ!!

ってリコの声が聞こえてから自分の状況に気づく

あ、これってもしかして転ぶ感じだったりしちゃう?

そんなことを呑気に考えていると、

「わ…ッ」
ふいに腕を引かれ、身体が後ろに倒れこんだ

倒れるッ!?

目をギュッと瞑りながら飲み物の容器とタオルをぶちまけないように思いっきり抱きしめる

「あ、ぶな…」
ふいに身体を包み込んだ体温と耳元で聞こえた声に思わず固まる

え、後ろにいるのって…
続きを思い浮かべるのすらおこがましく感じてしまう。…身体動かんわ…

「清水大丈夫?」
心配すらせず、ニヤニヤしているリコに怒りを覚え始めたとき、再び耳元で聞こえた声に意識がハッキリした
そして、思い浮かんだのはとんでもなく恐ろしいこと

「伊月くんッケガしてない!?」
自分のこととか恥ずかしさよりも優先すべきは伊月くんの身体で。
すぐに伊月くんから離れて足が腫れていないかチェックする

「…良かった。どこもケガしてないや」
安堵のため息をついたその時、

「人のことより自分のこと心配しろよな」
「!?」
伊月くんの呆れた声と同時に左右の頬を引っ張られた
「いふきくん…いひゃい…」
「普通は飲み物とタオルより自分のこと守るだろ」
「らって…」

「清水がケガしたら俺が嫌だ」

「…ふぁい?」
勘違いしちゃうんだけど…

「監督に殺される」
…そうゆうことね

わかってたけどやっぱショックかも…
「…それだけじゃないけど」
「っひゃいッ!!」
パチンッと音のつきそうな勢いで頬を離され、情けない声が出た
…てか、

「伊月くん、さっきなんて?」
軽く熱を持っている頬をさすりながら問いかける
…聞こえなかったんだよね

「じゃあみんなのとこ行くか」
「え、質問の答えは!?」
再び聞いても答えてくれない

「…伊月くんのケチ」
なんて呟きながらも緩む頬

触れられた肩がやけに熱くて
伊月くんの手の感覚がハッキリと残っていた

ちょっとは君に近づけたかな



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