影山くんは龍の方に上げようとしてたのに、日向くんの声と動きに咄嗟に反応してあそこまで正確なトスを上げた…。

さっきのトスを思い出してぞくりと背中が粟立った

影山くん、やっぱりすごい…!


「おい、お前ら!速攻使えんのか!?」
「クイック?」
「今みたいな速い攻撃だよ!!」

龍がにやにやしながら2人に近づいていく
嬉しそうだなぁ…。

「?全然。おれ、ポォーンって高く山なりに上がるトスしか打ったことないです」

え。

「でも今やったろ!?
それにお前中学ん時、素人セッターのミスったトス打ったろ!ああいう…」
「えっ?でもどうやったか覚えてないです」
覚えてない…?え。感覚でやってたの?

信じられない、という気持ちを隠しきれないまま呆然としてしまった

影山くんのトスを打てず空振りしてもネットに飛び込んでも日向くんなら、という気持ちが消えず、期待を込めて見つめてしまう


「…あれ、スガさん?」

そんな私とは裏腹にスガさんが深刻そうな表情でコートに向かっていく


「それじゃあ中学の時と同じだよ」

影山くんと向かい合ったスガさんの顔に以前見た試合の光景が思い出された
…王様のサーブのこと言ってるんだろうな


「日向は機動力に優れてます
反射、スピード…ついでにバネもある…慣れれば速い攻撃だって…」
「−日向の、その…"すばしっこさ"っていう武器、お前のトスが殺しちゃってるんじゃないの?…日向には技術も経験も無い」
「!?菅原さん!?」
ド直球ストレートですね…。
「中学でお前にギリギリ合わせてくれてた優秀な選手とは違う」
「す、スガさん…」
日向くんのメンタルが…っ
「でも素材はピカイチ」
「!エッそんな…天才とか大げさです。いやそんな」
言ってない
「…お前の腕があったらさ、なんつーか、もっと日向の持ち味っていうか才能っていうか、そういうのもっとこう…えーっと…」
「スガさんファイト!」
「なんなうまいこと使ってやれんじゃないの!?……俺も…お前と同じセッターだから、去年の試合…お前見てビビったよ。
ずば抜けたセンスとボールコントロール!
そんで何より…敵ブロックの動きを冷静に見極める目と判断力!!
…俺には全部無いものだ」

初めて見たスガさんの寂しそうな表情に胸が痛んだ
そんなことないですよ、って私が言ってもスガさんはきっと聞き入れてはくれないだろうなぁ…。
当たり前の事実にまた胸がずきん、と鳴った


「技術があってヤル気もありすぎるくらいあって、何より…"周りを見る優れた目"を持ってるお前に、仲間のことが見えないはずがない!!」

スガさんの言葉に影山くんも日向くんも何かを感じてくれたような気がした



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