「え、明日さゆもカントクと一緒に車で集合すんの?」
「うん、リコぱぱが送ってってくれるんだって」
合宿の前日、俊くんと帰りながら明日からの話をする

詳しいことは明日の車の中で、ってリコは言ってたけど…。
楽しそうにウィンクをしていたリコを思い出す。あの顔をしたときに良いことがあったためしがない。

「…頑張ってね、俊くん!」
「う…。このタイミングでの激励はあんまり良い予感しないな」
苦笑いを浮かべた俊くんに手を振って家に入る。

みんなには申し訳ないけど、初合宿な私にとってはたのしみで仕方ない

荷物を確認して早めにベッドに横になる
…たのしみだなぁ、初合宿

「海だーっ!」
車の外を見ると一面に海が広がっていた
さっきまでの眠気なんて一気に吹き飛んでいった

「ふふふー…たのしみね、みんなをしごくのが!」
「…リコ、ちょっとは本音を隠して」
目を光らせながら拳を握るリコに部員のみんなの合宿が途端に不安になる

「ほれ、お二人さん、着いたぞ」
リコぱぱに声をかけられ、お礼を言いながら車を降りる

「うん、時間ぴったり。みんないるわね?」
波切荘を見て愕然としていた部員たちを見渡す

うん、みんないる

「じゃあリコ、あとこれをあそこに置いときゃいんだな」
「うん、ありがとーパパ」
「おうガキ共、せいぜいがんばれよー」
車を走らせながら声をかけてくリコぱぱにちょっと拍子抜けする
…あれ、リコ大好きなリコぱぱならもっとなんか、

「あ…けどな、娘に手ェ出したら殺すぞ」

車をわざわざ止めて言われた言葉にみんなが固まる
…予想通りだった。

「ほらタラタラしない!行くわよー
…どこ行くのよ?」
「え…いや、体育館…」
「体育館借りるのもタダじゃないのよ、夕方から!」
「へ…じゃあ昼は…?」
「海よ!」
言い切ったリコにびっくりしたように顔を見合わせるみんなの背を押して海に向かう
…あ、車に乗せたあれって、

「カントク…まさかここで…」

海に着くと、砂浜に設置されたバスケットゴールと引かれたコートの線

持ち運びできるゴールなんて初めて見た…

「そ、バスケするの
前にも言ったけど、この合宿の目的は弱点克服よ」
「…弱点?」
「今誠凛に必要なもの…それは、選手一人一人の個人能力の向上よ。けど、カン違いしないでね
チーム力な向上がかけ算だとしても5人の数値が低ければ大きな数値にはならないわ
個人技を主体としたチームにするわけじゃなく、あくまで束ねる力一つ一つを大きくすることよ
誠凛というチーム一丸で勝つために
そしてシュート・パス・ドリブル…
一つ一つの動作の質を向上させるためにまず大切なのは土台となる足腰よ。そのための砂浜練習
まずはここでいつものメニューの、3倍よ」

語尾にハートでもつけたかのように上着を脱ぎながらリコは可愛く言い放った

「さぁ、始めるわよ、(地獄の)合宿!」

…地獄って聞こえた気がしたのは気のせいかな

始まって早々、火神くんが砂に足を取られたり、黒子くんがバウンズでパスして日向くんに怒られたり…。

やっぱきついんだ、この練習…

頭では分かってたつもりでも、実際にみんなの様子を見ていると思わず呆気に取られてしまう

「おつかれ!夕方からは体育館に移動よ!」
キリがいいところで砂浜での練習は打ち切られ、夕方から体育館に移動する

「っおお!?」
「動きやっす!」
「バッシュってすげぇな!」
「今ならいつもの倍速で動ける気がする!」
砂浜に比べれば足がバタつかないし、動きやすいよね

バッシュを履いて動きを確認するみんなを見ながらちら、とリコをみる
…やっぱりすごいなー、リコは



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