期末テストを無事終え
誠凛バスケ部は創設者である2年生木吉も復帰し
敗戦のショックから立ち直りつつあった

そしてー

夏休み

いよいよウインターカップに向けて本格的に動き始めようとしていた

「今年の夏休みの始めと終わり、海と山で合宿2回よ!」
え、2回!?

リコの言葉に体育館の空気が固まった
…2回か

「合宿は主に予選およびこの前の練習試合で感じた弱点克服が目的よ
さらにウチは少数だから体力向上は不可欠
通常練習は今まで以上に走るわよ」
「夏休み明けたらウインターカップ予選はすぐそこだ
この夏休みをどこまで有効に使えるかが大事だ、気合い入れていくぞ!以上!解散!」
「っつかれしたぁ!」
リコと日向くんの声にいよいよ気持ちが引き締まる

夏休みは8割くらい部活だろうし、みんなの身体に良い差し入れ考えなきゃ…

そんなことを考えながらボールを片付けていると、
「さゆ、ごめん、武田先生が呼んでるらしいから先上がるわね」
「あ、うん、お疲れ様」

申し訳なさそうにリコが体育館をあとにした

その直後、

「全員!もっかい!!集合ーう!」
再び日向くんの声が体育館に響いた

「え、もう練習終わりなんじゃないの?」
「清水、合宿の話でオレ達はいま…重大な危機に直面してるんだ」
…重大な危機?

「今年合宿を2回やるために宿は格安の民宿にした
よって食事は自炊だ…が、問題はここからだ。
カントクがメシを作る」

…あ、
「や、でもほら、リコの料理は…アレだけど、今年は私もいるし…料理上手いわけじゃないけど食べれるのは出せる、よ?」
「そうっすよ、主将!さゆ先輩に作ってもらえば…っ」
「確かに今年は清水がいる。しかし、だ
あのカントクが親友だけに作らせると思うか!?
確実に手を出してくるだろ!」
…確かに

「つーわけでな…」
にっちもさっちもいかなくなった私たちは迷わず日向くんの話にのった

「ではカントク、清水、そろそろいいか…?」
「まかせて!」
「がんばります!」
日向くんの声に2人で頷いて料理を作り始めた傍ら、昨日の話を思い出す

「つーわけでな…カントクには【試食会】と題して料理を作ってもらう」
「試食会?」
日向くんの提案にみんなの頭に「?」が浮かぶ

「マズイから練習しろ、なんていきなり言えねーだろ
食べてからアドバイスして上手くなってもらう!」
「…なるほど」

みんなの好みにそぐわなかったらどうしようかと思って私も【試食会】で料理作らせてもらうように頼んだけど…カレーなら心配いらなかったかな

「何ヒソヒソ話してるの?できたわよ!一品目は…カレーよ!」
「私もできた!」
盛りつけたお皿をリコのお皿の隣に置く
…ちょ、

「リコ、なんで!?」
リコのお皿をみてびっくりした
…なんで野菜がまるごと入ってんの!?

「いや…え、まるごと!?さっきのトントントンはなんだったの!?」
「え?あ、ちょっと食べにくかった?」
「てゆうかなんでカレー?
…カレーだよね?これ…」
「定番でしょ?」
みんなの戸惑う声が家庭科室に響きわたる

カレー?カレ、えぇえ?
「まぁ見た目はともかく味は大丈夫よ!ただのカレーだし!」
「じゃあ…いただきまーす…」
カレーを口に含んだみんなの口からシャキシャキと音が聞こえる
…シャキシャキ、え、?

「やっぱりあんまり…おいしくない…っかな…
さゆのと明らかに見た目も違うし…」
「リコ、」
背中に回された手に見えた絆創膏がたくさんついた指に胸が締めつけられた

「…ごっそさん。うまかったけどちょっと辛かったから飲み物買ってくるわ」
「味は個性的だけどイケるよ。料理に1番大事なもんは入ってる。愛情がな
けど、もしかしたら作り方がどっか間違ってるかもな。もう1回作ってみないか?」
「…うん」
全部食べきった日向くんとおかわりをした木吉さん
…かっこいいな、2人とも

そのとき、

「こんなもんかな」
火神くんがなんとも美味しそうな野菜炒めを机に置いた
…男の子がこんだけ料理上手かったらへこむわ

「火神くん!カレーの作り方教えて…!
まさかキミにこんなこと言うなんて思ってもみなかったわ」
「いっすけど、オレちょっと厳しいっすよ!」

火神くんとリコが共同でカレーを作り始めて数十分後、私たちの目の前に、なんとも美味しそうなカレーが置かれた

「いい!いいよ、うまそう!」
「カレーだよカンペキ!」
「こんどはバッチリよ!さ、どーぞ!」
みんなの反応に自信を持ったリコが笑顔で告げた直後、カレーを口に含んだメンバーが固まった
…え?

「ウソっっ!?なんで!?また失敗!?」
「…リコ、火神くんと作ってたよね?」
「そうよ!味見もしてもらったし…あれー?」
カレーをのぞき見るリコの後ろから鍋をのぞく

うーん、普通に美味しそうだけど…

「そうですか?おいしいですよ」
「黒子もういい!ムチャするな!」
「いえ、本当に…」
「黒子、もしかして…自分でよそって食べたのか?」
「はい」
黒子くんの返事をきいた木吉さんが

「リコ、もう一度よそってくれたいか?」
と言った

「?いいけど…まずゴハンでしょ
で、ルーをかける前に…」
「あ!チーズかかってたんだ…凝って…」
「いや…!?なにそれ!?」
「何って…プロテインとかビタミンC粉末とか…」

ちょ、プロテインにビタミン粉末って!
「カレーだけじゃバランス悪いでしょ?」
「リコ、だったらサラダ作ろうよ!
サプリメントとか怖いから!」
そう訴えると、「…そっか」と返された
…えぇえー



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