「明日から3日連続、練習試合を組んだわ」
「練習試合?夏休み直前になんでまた…?」
「今のみんなの課題をより明確にするためにね!そして夏休みは楽しくみっちり猛練習ってワケよ?」
俊くんの質問に笑顔で答えたリコに体育館の空気が少し淀んだ気がした
…楽しくみっちり?え、楽しく?

「だから今回は試合に勝つ!だけじゃなくて考えてプレイすることを意識してね!」
「オウ!」
みんなで気合いを入れた翌日、VS徳進との試合を向かえたあたしたちは騒然としていた

「リコ、これどういうこと?」
ユニフォームを着てコートに立っているのは1年生だけで、2年生はみんなベンチに控えていた

「あいつがどーしてもね、1年生の試合も見たいって…」
木吉さんが?

「鉄平!なんだよ一体?」
「んー?」
「んーにゃ、オレわかったよ!」
日向くんの問いに木吉さんが答える前に小金井くんが話し始める

「この試合、たぶん負けるでしょ?」
「は!?」
「最近火神はプレイが自己チューになってる、けどそれじゃ勝てない
だからわざと負けて1人が強いだけじゃ勝てないことを教えるつもりっしょ?」
…確かに小金井くんの話もわかるけど、火神くんって言われなきゃわかんないほどバカなのかなー…

「迷いや悩みは感じなかったけどな、オレには…
むしろ何かに気づいてほしいとしたらカレの方だよ」
木吉さんは話しながらチラ、とコートに視線を向ける
…黒子くん?

「1年生、結構やるね」
「ええ、でも…思ったよりスコアが伸びてない…」
「あぁ、確かに…」

第4Qで32:34
2点差で負けてるけど…
なんだろ、火神くんとの連携がうまくいってないからだけじゃない気がする

「結局試合は勝てたけどさ、」
「うん?」
「火神くん1人で勝っちゃったでしょ?」
俊くんと繋がれている右手をぶらぶらと揺すりながら歩く

「…寂しいなー」
「寂しい?」
「火神くんが、入部したての時に戻ったみたいでさ」
少しずつ、打ち解けてくれてると思ってたのにな、なんて思いながら唇を尖らせる

「…むっ!?」
突然、むに、と右頬をつままれた

「ひゅんくん?」
「そんなに深く考えなくても大丈夫だと思うけどな、オレは」
「ひゃっ…っ!?」
ぱちん、と勢いよく頬から手が離れたと思ったらふいに俊くんが立ち止まった

「なんだかんだ言って、木吉はいろいろ考えてるから」
「…信頼、ってやつですか?」
「そう言われると照れるけど…まぁそうだな」
少し照れたように俊くんは右手で自分の頬を掻くと、

「大丈夫、もう絶対負けない。さゆに無様なところなんか見せないから」

真剣な顔つきで、しっかりと私の目を見ながら言ってくれた

「…うん、期待してる」

繋がれた手に力を込めて、足を進めた



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