「そォォォォらァァア!」
「おおっあのデカい1年フッ飛ばした!」
「ジャァァァ!」
「田中うるさい!」
「喜びすぎ!」
「まだ1点だろ!」
「おい脱ぐな!」

龍の歓声にブーイングが飛び交う
…みんな遠慮ないな

「日向!」
影山くんがトスを上げて日向くんが勢いよく飛ぶ

見慣れてきたその光景にも、いまだに身体がぞくり、と震える

あー、日向くんのスパイクすきだなー

なんて思っていた矢先、

バチッ
月島くんの手のひらにボールが止められてしまった

「…高い、高い壁」
思わず口から零れた言葉

日向くんのスパイクは1回も決まることなくことごとく月島くんにブロックされている

龍のスパイクは結構決まってるんだけど…


「行けっ殺人サーブ!」
日向くんがボールを持った影山くんを見て叫ぶ
…殺人サーブって

ドゴッ

聞いただけで痛そうな音を発しながら影山くんのサーブが飛んでいく
しかし、

ドッ

威力を吸収するかのように大地さんが綺麗にレシーブを返し、月島くんがトスを上げて山口くんがスパイクを決めた

大地さんの武器はあの安定したレシーブなんだよねー、守備力ハンパないです、大地さん

「…何点か稼げると思ったか?突出した才能は無くとも2年分、お前らより長く身体に刷り込んで来たレシーブだ。簡単に崩せると思うなよ」
…カッコいいです、大地さん

「ホラ王様!そろそろ本気出した方がいいんじゃない?」
「ムッ!?なんなんだお前!昨日からつっかかりやがって!王様のトスってなんだ!」
月島くんの言葉に日向くんが怒る

確かに月島くん、影山くんにずっとつっかかってるんだよね…

「君、コイツが何で"王様"って呼ばれるのか知らないの?」
「?こいつが何かすげー上手いから…他の学校の奴がビビってそう呼んだとかじゃないの?」
「ハハッそう思ってる奴も結構居ると思うけどね」
「…え、違うの?」
思わず呟いた私を月島くんは一瞥すると、口角を上げてフ、と笑いながら

「…噂じゃ"コート上の王様"って異名、北川第一の連中がつけたらしいじゃん
"王様"のチームメイトがさ、意味は−自己チューの王様、横暴な独裁者
噂だけは聞いたことあったけどまだあの試合見て納得いったよ。横暴が行き過ぎてあの決勝、ベンチに下げられてたもんね」


−第1セット
相手のセットポイント
トスを上げた先、そこに誰も居なかった

それはあの日何度目かのコンビミス
でも最後のアレは"ミス"じゃない

あれは拒絶だ
"もうお前にはついて行かない"とあいつらが俺に言った一球だった

「−影山、お前、もうベンチ下がれ」



「クイック使わないのも、あの決勝のせいでビビってるとか?」
「…てめぇさっきからうるっせんだよ」
「田中」
月島くんに威嚇の目を向けた龍に大地さんがなだめるように声をかける

「…ああ、そうだ。トスを上げた先に誰も居ないっつうのは、心底怖えよ」

影山くん…


「えっでもソレ、中学のハナシでしょ?おれにはちゃんとトス上がるから別に関係ない。どうやってお前をブチ抜くかだけが問題だ!」

…日向くんのあーゆう真っ直ぐなとこ、羨ましいなー

「月島に勝ってちゃんと部活入ってお前は正々堂々セッターやる!そんでおれにトス上げる!それ以外になんかあんのか!?」
影山くんは日向くんみたいなタイプ苦手みたいだけど

「チャンスボール!」
「田中さん!」
「任せろ!」
龍が返してボールが影山くんに渡る

『俺に上げろ!』

龍と日向くん、同時にトスを求めて叫ぶ

まだ月島くんに真っ向勝負で勝てない日向くん
ポイントを稼げてる龍

影山くんはどっちに上げる?日向くん?龍?

「田中さ「影山!」!?」
影山くんと日向くんの声が被る

−そこに、だれも、

「居るぞ!」
「っ…!」

影山くんは日向くんにトスを上げ、日向くんはそれをなんとか打った

「アッブねー…空振るトコだった…」

いや、ホントだよ!あぶな!

「お前何をイキナリ、」
「でもちゃんとボール来た!
中学のことなんか知らねぇ!おれにとってはどんなトスだってありがたぁ いトスなんだ!おれはどこにだってとぶ!どんなボールだって打つ!だから、おれにトス、持って来い!」

はっきりと影山くんに言った日向くん

その姿がいつもよりもおっきく見えた



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