あ、やばい

貴志の手が唇と共に下に降りてくる
そんな感覚に頭がくらくらしてきた


「たーだいまー」
「…っ!?」
ふすまの向こうから聞こえてきた猫ちゃんの声に貴志が慌てて私から離れた直後、猫ちゃんが部屋に入ってきた

「お、かえり、猫ちゃん」
「…おかえり、ニャンコ先生」

猫ちゃんは不自然な笑みを浮かべる私たちを交互に見ると、

「…ジャマしたな」

にへぇ、とおじさんみたいな顔をして部屋を出て行った

「…えーと、」

突然訪れた沈黙に戸惑う
…いつも、どうやって貴志と話してたっけ?

「………ごめん」
「え?」
「…さっきの」
「あ、」
猫ちゃんが入ってくる前の状況を思い出して顔が一気に赤くなった


「いや、あの、私こそ…止めなかった、し…」

再び訪れた沈黙

でもそれはさっきまでの空気の重さはなくて

お互いの口元には自然と笑みが浮かんでいた



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