「…っ、た」
ずきずきと痛む頭に手を当てながら身体を起こす
今の、夢?
幼い頃の貴志の傷ついた表情が思い浮かび、唇を噛み締めた
「あんた、最低だね」
「…ッ」
声に反応して顔を上げると、意識をなくす直前に見た妖が石の上に座ってあたしを見ていた
「さっき見てたのはあんたが一番後悔してること
…謝って許してもらえると思う?」
「そ、れは…」
貴志ならきっと、笑って許してくれると思う
ただ、貴志の傷が癒えるわけじゃない
「ほら、そうだろ?だったら、あんな男とは離れたらいい
お前がわざわざ傷つく必要なんかないんだ」
そう言うと、妖は私に手を差し出した
「…どういうつもり?」
「私と一緒にこい、やはりお前には"こっち"より、"あっち"の方が向いてるみたいだ」
「は、?」
"こっち"?"あっち"?
なに言ってるの?
妖は未だに座り込んだままの私に視線を合わせるようにしゃがむと、
「お前の祖母は私の親友だったんだ」
と言った
妖と親友だった?私のおばあちゃんが?
昔、アルバムで見た祖母の顔を思い浮かべる
私が生まれる前に亡くなったと聞いていた祖母との思い出はまったくなくて、母や祖父に聞いたことしか知らない
でも、
「なんで、あなたとおばあちゃんが親友だったわけ?人間と、妖なのに…」
そう尋ねる自分の声がひどく情けなくて、
「人間?あいつが?」
妖は、笑顔を崩さないまま口を開いた
…私は、どこか気づいていたのかもしれない
「妖だったよ、お前の祖母はな」