「はぁー…スゴい人ー」
中学総合体育大会
男子バレーボール競技
そう書かれた看板の前を通って会場内に入っていく
「まぁ、スカウトに来る人も多いしな」
「あーなるほどです」
大地さんの背中を追いかけつつ周りをキョロキョロと見ていると、スガさんに「危ないよ、さゆ」と笑われた
…相変わらずの爽やかいけめんさですね、スガさん
「お前はそんなんだから生傷が絶えないんだよ、清水」
「うるさい、龍っ」
確かに毎日のようにケガしてるけど…ッ
龍に言われるとムカつくっ
「さゆ、田中、着いたぞ」
大地さんに頭をがしっと掴まれ、龍と2人揃って口をつぐんだ
大地さん怒るとめっちゃ怖いんだよぉおっ!!
「でも何で中坊の試合なんか…」
「¨王様¨を見に来たんだよ、¨コート上の王様¨!」
「王様?」
「北川第一の2番のセッター・影山くんですよ
鋭いトス回しに加えてブロックやサーブでも点数を稼ぐ抜群の身体能力とバレーセンスでコートに君臨する¨王様¨ですっ!!」
「おーちゃんと覚えてきたな、さゆ
それにほら、来年戦うことになるかもだろ?」
「へーっなんかカンジ悪っ」
龍、顔怖いんだけど
「まぁ、ただの噂だし¨王様¨の由来もよく知らないけどね…」
大地さんがあっけらかんと笑ったあと、
「…それにしても…¨王様¨の相手はどこだァ!?高校生対小学生みたいな身長差だなァ」
龍が口を開いた
「雪ヶ丘だって。今回が初出場の無名校だよ」
そう言った直後、試合開始の笛が鳴った
「ナイッサー」
北川第一のサーブから始まり、雪ヶ丘の1番に回った
「行けぇ、翔ちゃん!!」
「高…ッ!?」
飛んだ、そう感じたすぐ後には北川第一のブロックにかかっていた
「あチャー…捕まったか!」
「でも凄ぇ跳んだな」
龍とスガさんの言葉を聞きながら手すりによさりかかる
優勝候補校と素人校かぁ…
北川第一 22
雪ヶ丘 07
「あいたーっまた捕まったーっ!!でも、あの1番ギュンギュンよく動くなァ!!色々ヘタクソだけど!あれで身長があればなぁぁ!!」
「うん、後は…雪ヶ丘中にちゃんとしたセッターが居たらあの1番ももっと活きるんだろうけどなぁ」
「うん…」
「でも、スゴいですよね
初心者寄せ集めみたいなメンバーをよく1人で支えてますよね、彼
逆に−影山くんは周りの恵まれた人たちをイマイチ活かしきれてないですよね
影山くん個人の力は申し分ないハズなのに…まるで、」
独りで戦ってるみたい−…
「うわっ」
また北川第一のサービスエースか、誰もがそう思った
しかし、
「まだっ」
1番の彼が落ちる寸前のボールを追いかけ、転がって壁におもいっきりぶつかった
…痛そう
「これで北川第一マッチポイント!!雪ヶ丘崖っぷちだ!!」
北川第一のサーブを雪ヶ丘がレシーブをし、
「翔陽!!」
「翔ちゃん!!」
ドッ
「ワンタッチ!!」
「触った!!カバーだ!!」
影山くんと5番さんが叫んだが、6番さんは途中で歩き出した
うーん…雪ヶ丘の1番さんが頑張って追いかけてたんだから追いかけようよ…
「…確かに雪中の1番は奮闘してるが、崖っぷちなのは変わらず…」
「どうするんですかね、雪ヶ丘…」
「ネットイン!落ちるぞ、前前っ」
「チャンスボールだ!泉さん!!」
「よっしゃ!」
トスミス!?
雪ヶ丘の6番さんの手からボールが離れた
ドリブルはとられなかったけど…そっちには誰もいない!!
−ハズだった
ついさっきまで左に居たのに
影山くんがマークしてたのに。なんで、なんで右に居るの!?
ドッ
「うそ…」
「マジか!!打ったよアイツ…!」
「驚いたな…」
「あんなムチャブリトスを…!」
興奮した龍とは別に、大地さんとスガさんが驚いたようにコートを見つめた
でも、
「今のスパイク、アウト?」
ピピーッ
1番さんのスパイクが外れたことで北川第一の勝利が決まり、雪ヶ丘の負けが決定した
「うわーっ最後のは惜しかったなーっ」
「あぁ…でも見てみろよ
北川第一の連中、大差で勝った奴らの顔じゃないよなあ」
龍と大地さんの声を隣で聞きながら雪ヶ丘の1番さんの背中を見つめる
無理な体勢から片足で踏み切ってあのジャンプ
しかもセッターのミスでバックトスなんて予想ができたわけがい、なのに、彼はあのトスに反応して打てたの?
「さゆ、大地と田中行ったよ?」
「ねー、スガさん」
「ん?」
「あの1番さん、烏野に来て欲しくないですか?」
にへ、と笑いながら言うと、頭を撫でてくれた