「今日は手塚と大石、途中から参加かぁ…」
ぼんやりとホワイトボードに書かれた文字を眺めていると、

「ちぃーす」
後ろから声が聞こえた
振り返れば、あくびをしながら部室に入ってくる越前くんの姿があった

「スゴかったね、桃との練習試合」
「…桃?」
「桃城武、試合したじゃない」
そう言えば、少し考えてから「あぁ、あの人」と呟いた

桃、結構印象強かったと思うんだけど…

「名前、覚えてあげてよ?」
「気が向いたらね」
「いいよ、それで」
笑いながら部室の隅に置かれていたボール籠に手を伸ばす

地味に重いんだよね、これ…

「せーの、と?」
籠を持つ手に重なった手
驚いていると、タイミングを合わせて一緒に持ち上げてくれた

「あ、の…越前くん…ッ」
心臓がばくばくうるさいくらい高鳴ってる
今まで彼氏くらいできたことはあるし、手だって繋いでた
でもそれとは全く違う緊張感に身体も頭もついていけない

「さゆ先パイ、これどこに運ぶの?」
「えと、とりあえず外に…」
「りょーかい」
越前くんはそう言うと、私の手を籠から離して1人で部室の外に置きに行ってくれた

「あ、りがと…」
「顔、赤すぎ」
指摘されてさらに暑くなる頬

「っ仕事、あるから」
それを隠すように慌ててその場を立ち去る

落ち着け、私…ッ


なんとか冷静になって仕事をすること1時間

「おい、また荒井が越前にからんでるぜ」
「無茶苦茶言ってんなぁ」
そんな2年生の声が聞こえてきて、隣のコートを見ると、荒井が偉そうに腕を組ながら越前くんを見ていた
…また?

「どうする、止めるか?」
「もうすぐ部長たちも帰ってくるし、見つかったらどやされるぜ!」
「止めようよ。また怒られたくないよ、私」
手塚怖いし、という言葉は飲み込んで乾と英二に言う

「…うーん」
隣で楽しそうに考える周助を見てると、嫌な予感しかしない

「1年のお前にはそのラケットがお似合いだぜ
これに懲りて二度と出しゃばろうなんて思うんじゃねぇぞ
そうすれば、大事なラケットも3本とも出てくるかもな!」
3本?なんでラケットの本数知ってるの?

「お…おい?越前…どこへ…」
「いるよね、弱いからって小細工する奴」
あー…荒井が隠したのか

「いーよ、やろうか」

「もうちょっと見てみる事にした」
予想通りの周助の言葉にため息がこぼれた
…私は止めたかんね



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