「越前！マジで２年のレギュラーと試合すんのかよ!?」
ふらふらと歩いているとそんな声が聞こえてきた
テニスコートかな？
ふと頭によぎった考えになんとなく確信が持てて、テニスコートに向かって歩き出す
時間あるしね、今日
「もっもしーろくん」
「げっさゆ先輩…ッ」
コートに立つ後輩を見つけて笑顔のままコートに入る
「何してんの？」
「いや、これは…」
「まだＮＧだよね？」
思いっきり頬を引きつらせる桃の服を引っ張って顔を近づける
「先輩、近…ッ」
「そこまでしても戦いたい相手なわけ？」
少し赤くした頬をすぐに真面目な顔に戻して力強く頷いた桃を見て口角を上げて笑いかける
「よし、じゃあいいよ」
「さゆ先輩!?」
「あんたらがカモってたことみんなに内緒にしといてあげるからさ」
コートの隅にちょこん、と置かれていた空き缶を指差して言えば、２人は明らかに顔をひきつらせた
「思いっきりやんなさいよ」
「もちろんッスよ!!」
笑顔で対戦相手に近づく桃を見てベンチに腰を下ろす
さっき、誰かが「越前」と呼んでた
だからきっと彼が「越前リョーマ」なのだろう
…見させてもらいますよ？越前リョーマくんの実力
「バアさんから聞いたんだけど…ツイストサーブ打てるんだって？」
「そーなんッスか!?」
へー…１年生にしてツイストサーブ打てちゃうんだ
感心をしていると、隣からツイストサーブの説明が聞こえてきた
ちょっとー…新入生に教えてもらわないでよね…
「要するに、顔に向かって跳ね上がってくるってこと
中学生じゃまずこれが出来る人はいないよ」
「いーから早くやろうよ」
ありゃ、話遮られちゃったや
少しムッとした表情の越前くんを見ておとなしく試合開始を待つ
「フィッチ？」
「スムース」
「残念、ラフだ！サーブはやるよ
こっちのコートをもらう」
「えっ!?先にサーブ取らねぇのかよっ」
「はやくツイストサーブ見てぇじゃん!!」
いやー…楽しそうだね、桃…
あのひねくれ者があっさりツイスト打ってくれるとは思えないんだけど
「ザ・ベスト・オブ・１セットマッチ
越前サービスプレイ!!」
周りで見ていた男の子の声がコートに響いてゲームが始まる
ヒュッ
「はぇぇッ!!」
「いきなりエースとりやがったッ」
「すご〜い！テニスもうまいなんて！応援よ、応援！」
「う、うん」
周りからいろんな声が飛び交う
…あの女の子たちは越前くんのファンですか？
「いーよ、スライスサーブは。出し惜しむなよ！」
「やだ…」
どんまい、桃
ちょっと悔しがってる桃を見て思わず頬が緩む
「１５−０」
ポーンポーン
数回ボールをバウンドさせ、膝を軽く曲げてサーブを打つと、
パァンッ
桃のラケットが勢いよく飛んだ
「すっげぇ！あれがツイストか!?」
桃のラケットが飛ぶくらいの威力…
「あービックリした」
「大丈夫？」
「…コノヤロウ」
あっ越前くん、気づいてたんだ
桃の足のこと…
「３０−０」
パァンッ
「よしっドンピシャだ!!」
「ダメ…返せない…ッ」
ラケットに当たったにも関わらずボールの威力は無くならずに再びコートに落ちる
「タイミングだけじゃ返せねぇってことか…おもしれぇ！」
「あの桃城がパワーで押された？」
「タイミングはバッチリだったのに…すげぇ威力ってことか…？」
なんだかんだ気づいたら１ゲーム取られたなぁ…
むむ…と唸りながらツイストの攻略法を考える
タイミングはつかんでるし、あとは完璧パワー勝負なんだよ、ね…？
「返した!?」
桃がツイストを打ち返せば、すぐに越前くんがボレーで返す
そして、
フワッ
「ドロップボレー…」
リターンボールを綺麗に受け流し、桃側にポトリと落ちた
パワーにコントロールに技術
全部兼ね備えてるんだ、越前くん
クルッ
越前くんはラケットをクルクルと数回回したあと、右手から左手に持ち替えた
え、左利き？
「ちょっとタンマ!!やーめたっもういいや」
「ええーッ!?」
「おい桃、どうしたんだ、突然!!」
「この辺で勘弁しといてやるよ!!」
「なーにが、勘弁しといてやるよ!!よ？危なかったくせに」
背中をパンッと軽く叩いて言えば、はは、と苦笑いを返された
「おい、いいのかよ桃。このままじゃ１年にナメられっぱなしじゃねぇか」
「しっかしよう…右足の捻挫さえ治ってればお前なら−」
「いや…アイツ気づいてたよ！ハナっから」
「まぁ、痛みわけじゃない？来週の校内ランキング戦が楽しみだなぁ♪」
「…さゆ先輩、スイッチ入って…」
「あーやっぱいいなぁ、強い人同士の試合はっ」
カバンを取って伸びをする
右手であんなに強ければ左手はもっとスゴいんだよね？
「やっばい…ッ超興奮するんだけどッ!!」
桃が後ろでなんか言ってるけど聞こえないふりをしてコートをあとにする
帰ったらちょっと調べてみよーっと♪