多軌ちゃんと分かれてすぐ向かった教室には、カバンを肩にかけた貴志と目が合った
「…さゆ?」
久しぶりに私だけにまっすぐ向けられたまなざしと声に胸がきゅうっと締めつけられた
私、やっぱり、貴志が好きなんだなぁ…
そう実感したら、なんだか無性に泣きたくなった
「貴志、私…今までずっと誤魔化してた」
「え?」
「貴志が私に隠してること、気にしないようにしてた」
そこまで言うと、自分の手をぎゅうっと握りしめた
「でも、ごめん。やっぱり私、好きな人に頼ってもらえないなんて我慢できないや」
自分でもわかるくらい不自然な笑顔を浮かべて貴志の目の前に立つ
「貴志が話したくないなら無理して聞かないよ
でも、私は貴志に頼ってほしい
その¨秘密¨が原因で距離を置いてるなら、1人で抱え込ま…」
抱え込まないで、そう言いたかったのに、貴志に抱きしめられた驚きで言葉を思わず飲み込んだ
「…さゆ、ごめん」
「たか、」
「ずっと、巻き込みたくなくて隠してたんだ」
「…貴志は優しすぎるからそうだと思ったよ」
今度は自然な笑顔で笑いかけると、「そっか」と笑顔で呟いた
「でも、もう隠さない
さゆにちゃんと全部話すよ」
貴志の言葉に小さく頷きながら、制服を掴んでいた手に力を込めた