「貴志、授業終わったよ」
「ん、」
軽く肩を叩くと、眠そうに目をこすってゆっくりと身体を起こした

「大丈夫?」
「…大丈夫」
「はい、ノート」
「ありがとう」
今さっき終わった授業のノートを渡し、トイレに行こうと席を立った

「夏目、眠そうだな」
「あ、田沼くん
…貴志、私には何にも教えてくれないから」
しばらくは落ち着いていた妖たちが、再び貴志を訪ねて家に来るようになった

「助けて、あげたいんだけどね…」
田沼くんはボソ、と呟いた私の頭をわしわしと撫でたあと、

「名前、呼ぶようになったんだな」

と言った

「名前?」
「清水も夏目も、先週まではお互い名字で呼んでただろ?」
「…まだちょっと恥ずかしいけどね」
さゆ、と呼ばれるたび
貴志、と呼ぶたび
胸が温かくなって、どこかくすぐったい

「今、夏目が一番信頼してるのはお前だ」
「え、」
「あいつの一番近くにいて、一番身近な存在なんだよ、清水は」
「そう、かな?」
そう言われても、あまりピンとこない

私から見てると、貴志が信頼してる相手は田沼くんだ
私は、幼なじみで彼女
だからといって、信頼してる、と言われてもただただ、首を傾げるだけだ

「あー…だから、なんつーか…そのうち話してもらえると思うから、あんま気にすんなよ」

少しだけ照れたように頭を掻いた田沼くんがなんだか可愛く見えて、思わず笑みがこぼれてしまった

「…なんで笑うんだよ」
「ううん、なんでもない…ただ、」

そんなに貴志を信じることができる田沼くんが羨ましかっただけ

とは言えず、誤魔化すように笑ってからその場を離れた

帰ったら、なにか私にできることはないか聞いてみよう

理由はまだ聞かない
貴志の気持ちが落ち着いたそのときに、



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