「清水さゆ」
低く冷たい声に背中が震えた
女の子、の声?
「声、出さないでよ」
首に冷たいものを当てられ、固く頷くと、口と身体を抑えていた手から力が抜けたのがわかった
「…え?」
振り返った瞬間、自分の目を疑った
「あれ?清水さゆ、休みか?」
担任の声にクラスメートの視線が自分に集中したのがわかった
「清水とお前、付き合ってるって噂広がってるぞ」
登校してすぐ田沼に言われたことを思い出して小さくため息をつく
清水さん、転校してきてそうそう噂が流れるなんて思ってもなかったよな…
「さゆなら校内にいるぞ」
嫌な予感を感じながらゆっくり鞄を見ると、にゃんこ先生がニヤリと笑いながら鞄から顔をだしていた
「ぅわぁッ!!」
「な、なんだ夏目!?」
「すいません…ッ」
謝りながら先生を鞄に詰め込むと呻き声が聞こえた
「…どういうことだよ?清水さんが校内にいるって
だったらなんで教室に来ないんだ」
「教室に来ん理由は知らん。ただ、ニオイはする」
それを聞いた瞬間、素早く手を上げて「早退します」と嘘をついた自分に驚いたのは、他ならぬ俺だった
…にゃんこ先生がにやけていたのはこの際見なかったことにしよう