「ねぇ、夏目くん、お願い、話して…ッ」
明らかに戸惑っている夏目くんを見つめながら口を開く

「なつ…ッ」
「夏目!!」
後ろから聞こえた声に反応して振り返れば、男の子が立っていた

「…ごめん、清水さん」
「あ…ッ」
男の子に気を取られているうちに緩んだ私の手を離して夏目くんは再び妖の元に向かって走って行った


「夏目くん!!」
「行くな!!」
「離して…ッ」
掴まれた腕を振りほどこうと動くと、さらに強く掴まれた

「夏目の気持ちも考えてやれよ!!」
「…ッ」
夏目くんの、気持ち…?

さっき見た、苦しそうな夏目くんの表情が思い浮かんで、抵抗していた力が緩む

「あいつが話せるようになったらちゃんと聞いてほしいけど、それまでは無理矢理聞かないでやってほしいんだ」
「…ごめん、なさい」
そう呟くと、腕を掴んでいた力が消え、腕が解放された

「あー…俺こそ、初対面のくせしてキツいこと言って悪かった」
「ううん。夏目くんのことが大切なんだって、スゴい伝わってきた」
「…その言い方はちょっと」
気まずそうに頭を掻く仕草がなんか可愛くて、思わず笑いが零れた

「清水さん、田沼ッ!!」
「あっ夏目くん」
「夏目」
振り返ると、息を切らした夏目くんが、頭に猫ちゃんを乗せて走ってくるのが見えた


「清水さん、あの…」
「さっきはごめんなさいっ」
困ったように私に近づいてきた夏目くんに向かって頭を下げる

「夏目くんが、話してくれるまでもう何も聞かないから……許してくれる?」
「許すも何も…話さなかった俺が悪いんだし、清水さんは悪くないだろ?」
「いや、でも…」
「もういいだろ、2人とも」
「久しぶりに会ったくせに仲良くなりおって
見ていて背中がむず痒いわいっ」
田沼くんと猫ちゃんに言われ、夏目くんと顔を見合わせて苦笑いを漏らす

「…帰るか」
「そうだね。塔子さんが待ってるし、夏目くんのお父さんにも挨拶しなきゃ」
「は?なんで清水が夏目の親に挨拶するんだよ?」


「他の人には内緒ね。夏目くんモテるだろうし、女の子にバレたら私、殺されちゃう」
夏目くんに話を聞いて唖然としている田沼くんに笑いながら言えば、笑顔で頷いてくれた

「…別にバレてもいいと思うけど」
「夏目は自覚した方がいいと思うぞ」
「カッコいいのにね、夏目くん」
「照れるな」
微かに私から目を逸らした夏目くんの頭を猫ちゃんが叩いた

妖のことはいまだによくわかんないし、さらにわからないことが増えたけど…

「清水さん?」
「あっいま行くっ」
夏目くんが笑ってくれるならいいかな…

「…違うっ」
なんか私が夏目くんのこと気になってるみたいじゃんッ!!

「ないないないっ」
「清水さん…?」
「百面相してるな」
久しぶりに会って、大人っぽくなってて驚いただけだよ、うんっ



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