部屋の扉を開けてすぐ
「え、タヌキ?」
「誰がタヌキかぁあッ!!」
しゃべるタヌキちゃんに怒られました
「にゃんこ先生ッ清水さんッ!!」
「な、つめくん…」
びっくりしすぎて腰を抜かして座り込んでいると、後ろから夏目くんが現れた
「…なんで清水さんがこの家に?」
「えっと…」
−遡ること10分前
「どこに行けばいい?」
学校が終わってすぐお母さんに電話をかける
帰る場所知らないしね、うん
『あー…ごめんね、さゆ』
「え?」
『そっち行けなくなっちゃった』
あはは、と笑いながら言うお母さんの言葉を頭の中で復唱する
お父さんとお母さんがこっちに来れなくなった
それってさ、
「…私、どうやって生活すんのさ」
お金もたいして持ってない
未成年だから親もいないで家の契約すらできない
生活できないじゃないか
『お母さんの知り合いにさゆのこと頼んでおいたから大丈夫よ。メールで地図送るからそこに行きなさい
それじゃ、また連絡するからっ』
行けなくなった理由とか、何にも言わないで電話は切られた
…我が母ながら、自由すぎる
思わず苦笑いが漏れたが、とりあえず生活する家を知らなきゃいけないと思い、届いたばかりのメールを開いてそこに書かれている家に向かった
「んで着いたのがここのお宅だったんですよ」
「え、じゃあ清水さんって…」
「…ここに住むみたいです」
いまだに怒ってるタヌキちゃんを抱きかかえる
にゃんこ先生、ってことは猫ちゃんなんだよね?
…迷いなくタヌキだと思ってごめん
「えーと…よろしくお願いします
夏目くん、猫ちゃん」
軽く頭を下げて挨拶をすると、夏目くんも慌てて頭を下げてくれた
「離せっ人間め!!」
「ぅあっしゃべった!!…このぬいぐるみ欲しいかも
夏目くん、どこで売ってたの?」
「誰がぬいぐるみだ!!」
「…清水さん、天然」