「さゆ、なんで…」
「…古市には関係ないよ」
わけがわからない、とでも言いたげな古市から目を逸らして東条さんの背中にいるベルちゃんを抱きしめた

辰巳に嫌われたならそばになんていれるわけがない…

何か無性に泣きたくなって、ベルちゃんを抱きしめている腕にぎゅっと軽く力をいれた


「東条さん!!1つ聞いていいっすか!?
今さゆが抱いてる子って東条さんの子っすか!?」
「あん?」
「最近拾ったとか、くっついて離れないとか、そーいうわけじゃないですか?」
「あぁ…こいつか?そうだな、」
東条さんは辰巳に笑いかけると、

「オレに勝ったら教えてやるよ
だからほら、さっさとやろーぜ」

と言った

「…ふざけんなよ、てめー
さゆと赤ん坊が隣にいる状態でケンカする気か!?」
「ん?あぁ…さゆ、庄次のとこ行っとけ」
東条さんに頭を撫でられ、無言で頷いて庄次さんのところに移動する

自分はいっつも気にしてなんかいなかったくせに…

三角座りをして辰巳と東条さんを見つめる

「オレがそうだ。どっからでもかかってこい」
「…ふざけたやろーだ」
…あれ?

心無しか、2人の声が遠く聞こえる
気のせい、そう思っていられたのも最初の内だけで

辰巳が東条さんに殴られて川に落ちたときも
東条さんが辰巳に殴られて後ろに飛んだときも
どうにも頭がふらふらして仕方なくて

視界がはっきり定まらないまま2人を見ていることしかできなかった



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