「…はぁ」
ため息をついて目の前にある家を見上げる

古市に言われて来ちゃった私も私だけどさ…

「ありゃ、さゆちゃんじゃん」
「美咲さん…」
辰巳のお姉さんを見て、インターホンを押そうか躊躇っていた手を下ろす

「え、なに?あのバカに用事?」
「えっと…」
どうしよう…用事、あるといえばある
でも、
彼女できたの?
なんて聞けるわけがない

「とりあえず入りなよ
あのバカ、一週間も部屋に閉じこもったままだからリビングに来ないよ」
俯いた私の手を掴むと家の中に入った


「で、どうしたのさ?」
久しぶりに座ったリビングのソファーに頬を緩めていると、コップを持ったまま聞かれた

「…辰巳に彼女できたこと、知ってますか?」
握りしめた拳が震える
…情けないや

「辰巳に彼女?まっさかーっ」
美咲さんは笑いながら立ち上がると、

「だいたいアイツ、ずーっと片思いしてんだよ?」

ソファーの肘掛け部分に腰を下ろした

「片思い?え、辰巳好きなコいるんですか?」
「昔からね。スッゴく鈍い可愛い女の子
…さゆちゃんにはわかんないかもしれないんだけどね」
私にはわからない?

「まだわからなくていいわよ
多分、もう少ししたらアイツの口から教えてもらえるから」
美咲さんは私の頭を撫でると、
「用事あるから、またね。ゆっくりしてきなよ」
と言ってリビングを出て行った

「…辰巳の部屋行くかな」
美咲さんに話して少し軽い気持ちになり、辰巳の部屋に足を運ぶ


小さく息を吸って扉を叩く

「辰巳、あの、私…さゆだけど…」
「さゆ?」
「話があるんだけど、入っていい?」
「あぁ」
少し震える足で部屋に入り、辰巳の隣に座る

「どうしたんだよ?」
「あの…彼女、できたの?」
辰巳が止めたゲームの音がなくなり、部屋には私の声とベルちゃんの寝息だけが響いている
「…は?」
「いや、だから…彼女」
間抜けな顔をした辰巳にもう一度言えば、思いっきり首を傾げられた

「黒髪のメガネ美人ッ告白してたじゃんッ!!」
「?あ、公園デビューのことか?」
「公園、デビュー?は?なんで告白?」
「そういうもんだろ?公園デビューって」
「全然違うしッ!!」

なに?このバカ!!
公園デビューは告白じゃないわぁあぁッ!!

「いや、なんかもう…いいや」
思わず空笑いが零れた

忘れてた。辰巳がものすごいバカだってこと…


「あれ?」
あぐらをかいている辰巳の腕を見てそこで視線を止める

「タトゥーみたいの、なくなってる」
「…これは、」
辰巳は立ち上がると、心底嬉しそうに踊り出した


「は?え、なに?」
「何を小躍りしておる」
「あ、ヒルダさん」
いつの間にか部屋に入ってきていたヒルダさんは、持っていた箱を床に置いた

「フフッ見てのとーりよ」「!貴様…せっかく増えたゼブルスペルを…ッ」
「わっはっはっ!!
−ま、なんつーの?オレってやっぱ善良な一市民ってやつですから?大人しくしてりゃざっとこんなもんよ!!」
「大人しく?」
高笑いをする辰巳を見て尋ねる

「あぁ!!一週間家に引きこもってゲームしてたぜ!!」
ゴシャッ

辰巳の声と機械が踏みつぶされた音が重なった

「−この、クソニートが」
「オレの一週間の結晶があぁあっっ!!
てめぇこら、ふざけんなよっ!!返せ!!オレのミルドラースとデスタムーアとオルゴデミーラ…返せ!!」
「魔王ならもう育てておるだろう」
「ヒルダさん知ってんの!?」
「わめくな。そんな物よりもっとよいおもちゃを持ってきてやった」
「おもちゃ、ですか?」
「坊ちゃまと一緒に遊べる魔界のおもちゃだ
取りに帰るのに少々時間がかかったがな」
「魔界に帰ってたのかよ」
ガサガサと箱をあさるヒルダさんを見て辰巳と顔を見合わせる

「ふむ、組み立てが必要らしいな。おい、手伝え」
「あぁ!?」
「坊ちゃまが寝ている間に作るぞ」
2人の会話を聞きながらいそいそとベルちゃんが寝ているベッドに寝転がる

可愛いなぁ、ベルちゃん…

「ふぁ…」
小さくあくびが出て、布団に顔をうずめる

ここ一週間、辰巳のことが気になってほとんど寝てないんだよね…

気づいたら眠りについていた


「なぁ、さゆ」
「なに?辰巳」
「オレさ…ずっと前から……のこと好きだったんだ」

一番肝心な名前の部分が全然聞こえない

そこをおっきく言ってよ…!

「辰巳、もう一回…」
「だからっさゆのこと好きなんだってんだよ!!」


ドゴオッ
「ひょわッ!?」
ものすごい大きな爆発音で目を開けた

「お、さゆ、起きたのか」
「たっ辰巳…ッ」
さっきの夢を思い出して顔が熱くなる


「さゆ、顔赤…」
「くないからッ!!…ッ私帰るッ!!」
急ぎ足で部屋を出て行く

ありえない、自分…あんな夢叶うわけないのにぃいぃッ!!
…あっそれもそれで悲しい



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -