「男鹿遅くね?」
「もう10分くらい?」
携帯を見てみればちょうど10分経過

どんだけ高くベルちゃんのこと投げたのよ…

「さゆ行ってこいよ」
「は?」
「俺ここにいるし。ほら、早くしろって」
古市に背中を押されてゆっくり歩き出す
…頬が緩んでる気がしないでもない


「あっいた」
少し歩いたところに辰巳が見えて近づいていく


「…誰?」
遠目からでもわかる
長い黒髪美人さんと辰巳が向かい合って立っていた

友達かなぁ…

なんて思いながら声をかけようとした瞬間、


「俺と付き合ってください」

はっきりと聞こえた言葉に思わず足が止まった

女の人の肩に手を置いて告白したのは間違いなく辰巳で

「っほら、深い意味なんてなかった」
小さく呟いて踵を返す

大切なヤツ

姫川さんに捕まったとき、確かにそう言ってくれた。でも、

「大切な幼なじみ、ってことだったんだ」
わかってた。わかってたはずなのに。…胸が苦しい


「失恋、かぁ…」
頬を伝わった涙を裾でぬぐって古市のいるベンチに向かう

「古市」
「あっさゆ」
古市は私の様子を見ると慌てて立ち上がった

「お前、なんで泣いて…」
「失恋、しちゃった」
「はぁ!?」
「っ辰巳に、好きな人いた…ッ」
口を開いた瞬間、ぼろぼろと涙が零れた

「とりあえず落ち着け、な?」
「ん……ありがと」
差し出されたハンカチを受け取って古市に誘導されながら一緒に座る

「落ち着いたか?」
「…だいぶ」
「よし。じゃ、どんな状況だったか話せ」
「…さっき辰巳を見つけて、」
ぽつりぽつりと話し出す

そして、ようやく話終わると

「よし、男鹿殴ってくるか」
古市が立ち上がって言った

「え、いいよ別に。古市死んじゃうし」
「死…ッ!?」
「それに、辰巳が幸せならいいよ」

精一杯の笑顔で言って古市を座らせた
理由はもう1つ

古市が私のせいで死んだら超目覚め悪いし
マジでカンベンだしね、うん



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