「…またやっちまったな…」
「あぁ、やっちまった…」

ミルクを飲むベルちゃんの頭を撫でながら隣に座って反省してる辰巳と古市を見る


「ケンカしねーとかさ、マジで無理じゃね?」
「……すまん」
「ごめん、辰巳」
私らが捕まらなきゃ良かった話だもんね…


「あやまんなよ先に。ボロカス言えなくなるじゃねーか」
「すまん」
「ごめん」
「だから、謝んなってんだろ!!ぶっ殺すぞコラッ!!」
「はぁ!?」
「結局キレてんじゃんッ」
「全っ然キレてませんけどねーッ!!」

キレてんじゃんッ
そんな悪人みたいな顔しといて、キレてないわけないしッ!!


「てめーらが捕まったりしなけりゃこんな風にならなかったんだよっ見ろ、これ!!
変なタトゥーみたいになっちまったじゃねーか!!」
「つか、そもそも誰のせいで捕まったと思ってんだ!!」
「オレのせいだってゆーんですか!?」
「てめーのせーだろーが!!」

そろそろ止めようか

そう思ったとき、


「というより
今回は完全にヒルダさんにハメられたな…」
「…あぁ、あの女狐…結局、捕まったふりかよ…」

辰巳と古市の言葉で昨日の光景を思い出す


「ヒルダ、さん?」
「てめぇ…まさか、わざと捕まってたんじゃ」

ヒルダさんは辰巳に近づくとパシッ、と印のついた腕を掴んでそれを見つめた


「な、なんだよ?」

辰巳が不思議に思ったころ

「フン」
「あぁッ!?」
小馬鹿にしたようにアランドロンと去って行った
…アランドロンも捕まったふり?


「待てこら。試しやがったな
オレだけじゃねぇ、ベル坊だっててめぇを心配して…」
「坊ちゃまは私の心配などせん
貴様の怒りにアテられただけだ」

そう言ったヒルダさんの目はどことなく寂しそうだった…

「ねぇ、辰巳」
「っさゆ…ッその格好で近寄ってくんなッ!!」
「はぁ!?」
ヒルダさんの様子が変だと辰巳に言おうと近寄ると、なんかもー…めいっぱい逃げられた
…泣きますよ?「いいか、ぜってー動くなよ?」
「なんで」
「いいから動くなッ」
「…はいはい」
よくわかんないままおとなしくその場に佇む

「なんなの?辰巳」

目をつぶって近づいてくる辰巳を緊張しながら待つ


ふにょ


…ふにょ?

目の前に来て腕を伸ばした辰巳を一瞥
そして視線を下に落とす
…胸触ってない?

「〜ッ!!!?」
「…あれ?」
キョトンとした表情で私を見る辰巳を睨む
そして、


「なにすんの、ヘンタイッ!!!!」

思いっきり本当に思いっきり殴ってやった


胸が見えていてボタンを閉めようとした

と弁解してもらって許したけど

口で言えば早かったんじゃね?

という古市の一言で終わった


「…ったく。今思い出してもムカつくぜ、あの乳女」
「今思い出してもはずかしいあのテンション…」
…辰巳の手が胸に触れた私が一番恥ずかしいんだけど

「人がせっかく助けにきてやったのに礼の一つもなしかよ
なぁ、ベル坊」
「ベルちゃん?」
じーっと親子を見ていたと思うと、

「ダ」

とベルちゃんは辰巳に言った

「高い高いしてほしいってさ、辰巳」
辰巳は少し考えると、

「たかいたかーいッ」
「ヒョーッ」
ベルちゃんを思いっきり投げた

「目測13mです」
「まてこらぁあッ」
はっとしてベルちゃんを追いかける辰巳を見て古市とため息をつく


「なんなのかなぁ…」
「なにが?」
おもむろに呟いた言葉に古市が反応を示してくれた


「辰巳はさ、どうやったらあたしのこと恋愛対象で見てくれるのかなぁ…」

胸触っても普通に接してくるし…
確かにヒルダさんみたいに胸おっきいわけじゃないけど、少しくらい意識してくれてもいいじゃん…


「、ってこら古市、なに笑ってんのよ」

人が真剣に悩んでるのに隣で肩を震わせて笑いをこらえている古市の頭を軽く叩く

「いや…さゆが男鹿に惚れてから知ったこと多いな、と思ってさ」
「知ったこと?」
別になにか隠してたつもりは全くないんだけど…


「さゆって鈍いよな」
「は?」

いや、鈍くない

「…ここまでくると男鹿が可哀想に思えてくるな」
「ちょっと、どういうこと?」
辰巳が可哀想?なんで?

「なんとも思ってないやつに言わないこと言っただろーが」
「…あ」
もしかして、

「大切なヤツ、ってとこ?」
「どういう意味かわかるよな?」
「当たり前じゃん
大切な幼なじみ、ってことでしょ?」
嬉しかったなぁー…

なんて続けると、古市が盛大なため息をついた
…なんなの?コイツ



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