「みせるねぇ、いい登場だ
マジシャンにでもなるつもりか?」
「−あぁ。男鹿くんのびっくりイリュージョンの始まりだ…全員消します」

いつもの2倍くらい悪い表情をする辰巳に逞しさを感じながら姫川さんと辰巳を見る

「いくらだ?」
「は?」
「お前、いくらでオレの下につく?」

またお金かよッ!!
あのフランスパン抜くよ!?

「悪い話じゃねーぜ?オレはお前の事かってんだ
どうやってか知らねーがさっきのマジックも大したもんだ。望む報酬を用意しよう
オレとお前が組みゃ石矢魔統一なんてわけねぇんだから」
「わわッ」
いきなり引っ張ってきたかと思ったら、窓際にあった椅子に座る姫川さんにさらに怒りを覚える

猿以下の扱いなんだけどッ!!


「つーか、誰だ?てめー」
コキ、と心地良く首を鳴らした辰巳が姫川さんを見下ろす

固まる男たちを余所に、私と古市は思わず吹いた

「オラァッ!!すっとぼけてんじゃねーぞダボが!!」
「石矢魔住んでて姫川さん知らねーわけねーだろ」…私、知らなかったのだが

てか、ダボってなに?
工場現場のおじちゃんたちのズボン的な?

「あ」
スゴい地鳴りのあと天井にめり込んだ2人と

「知らねーよ」

2人を蹴ったと思われる体制の辰巳
…下半身しか出てないんだけど


「いいだろう」
「ぃたッ」

え、ちょっと
縄が腕にくっついて半端なく痛いんだけどッ!!


「相手してやるよコゾー
オレに勝ったら人質ははなしてやる
ただし、負けた時は大人しく下についてもらうぜ」

は!?

「いいのかよ?せっかくの人質をそんな簡単にはなして
ふつー命がおしくば動くなとかやんじゃねーの」
「ククッそんなもんはサンシタのやる事だ
オレには必要ねぇよ
そいつらはてめーをここにこうして呼び出す為だけのコマだ
それ以上の価値なんてねーよ」
「っや…ッ」

姫川さんに肩を掴まれ、溶けた服から肌が出始める

目の前に辰巳がいるのに…
見ないで…ッ


「さゆ、動くなよ」

辰巳は小さく笑うと、姫川さんのお腹を殴った


「…え?」

一瞬、なにがあったのかわからなかった

でも大きな物音に反応してそっちを見れば
立ち上がってる最中の姫川さんが見えた


「立てよ。腹になんか仕込んでんだろ?」

姫川さんを見る辰巳の拳から血が流れている

あー…だから時々動きが鈍かったんだ…


「く…くくっいいね」
姫川さんは背中に回して棒のようなものを手に取ると、


「最高だよ、お前!!」


辰巳に向かって振りかぶった


バチッ

電気が流れたような光が周りに溢れた


「でたーッ!!姫川さんのデビルズショック!!」
「大の大人でも半日は意識がふっとぶぜ!!」

周りが喜びの声を上げた
しかし、


「ベル坊の夜泣きの方が全然いてぇ」

辰巳は平然と動いた
…マジですか

「なっ嘘だろ!?くっ…お前ら!!
何ぼーっと見てんだ、人質だ!!人質を使え!!」

「…フ…」
いつの間にかヒルダさんが立ち上がっていて、私の縄をほどいてくれた

「ヒルダさん…ッ」
「立て、さゆ」
ヒルダさんに引かれて立ち上がる

「もうよい。貴様の器は知れた。消えろ」

ヒルダさんを見て姫川さんと古市は妙な表情をした

「古市」
「さゆ…大丈夫か?」
「大丈夫だよ」
固まってる古市に声をかけながら縄をほどく


「ベル坊」
「ダ」
ベルちゃんに話しかけた辰巳を見る

「男は一度決めた事は貫き通さなきゃならねぇ
そう言ったよな」
「ダ」
「−でもな。ダチと大切なヤツがやられて黙っているのは男ですらねぇ。わかるな?」
「ダ!!!」

ベルちゃんが力強く返事をした直後、辰巳の腕に電流とアザが広がっていくのが見えた


なに?あれ…


「ひ…まっ待て…ッ」
「おかえしだ」
辰巳が姫川さんのお腹を殴ってすぐ、なにかが割れる音が聞こえた


男たちが慌てる中、辰巳が近づいてきた

「たつ、」
「さゆ、お前バカか」
「あぅッ」


え、普通傷ついた女の子にデコピンします!?


「なに捕まってんだよ」
「…ごめん」
なんとなく自分にも非がある気がして大人しく謝れば、学ランのジャケットを投げられた


「え?学ラン?」
「それ着とけ」
「いや、でも…」
好きな人の学ランとかさ、なんかもー、嬉しいやら緊張やらで着れないんですけど…ッ!?

しばらく迷ってると、辰巳は私から学ランを取って肩にかけてきた

「えっちょ…ッ」
「嫌っつっても知るか」
「えぇ!?」
なんて理不尽なッ!!


「んな格好で歩かせれるかよ」


たった一言。
その一言でいつの間にか私は辰巳の学ランの裾をギュッと握って、


「…ありがと、辰巳」


辰巳にお礼を言っていた



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