「古市、ヒルダさん…ッ!!」

身体を思いっきりひねって姫川さんから離れる

「やだ…起きてよッ」
2人のそばに駆け寄って声を上げる

それでも目を開けなくて

「っ起きろ、バカ古市ッ!!」
叫びながら古市のお腹を蹴る

「ってぇ!!なにすん…さゆ?」
「あっ起きた」
私を見て驚いた表情をした古市にいつも通り笑顔を見せた

「お前、なんでここに…ッ」
「ヒルダさんッ起きてくださいッ!!」
「無視!?」
(めんどくさいから)古市の言葉を無視してヒルダさんに声をかける

「どうしよ…古市ならまだしもヒルダさんを蹴るなんて…」
「さゆさん!?」
「うるさい古市」
顔をしかめながら、なんとか紐をほどけないか手を動かす
そのとき、

「女なら当分起きねーぜ」

私を拉致ってきた男が得意気に言った

え…あの拳銃から出てる液体でコンクリート溶けてるけど!?

「何をした…?」
「何を、した?」
男は古市を睨みながら椅子から立ち上がり、私たちに近寄ってきた

「立場が分かってねーよーだな1年坊
てめーは今ラチ監中なんだぜ?」

コンクリート溶けてるってばぁあぁッ!!

「てめーを煮るも焼くもオレの気分次第だ
あんまナメた口きいてっと、その口溶けちまうぜ」

「古市…ッ」
「待てよ」
拳銃を突きつけられた古市の前に移動した瞬間、後ろから声がした

「なるほど、こりゃ上玉だ」

振り返れば、ヒルダさんの髪の毛を掴んで顔を見ている姫川さんがいて

「姫川さん」
男は少しびびった表情をした

「−で、こいつは?」
2人の視線が古市に移る

「あぁ、男鹿のツレっス
女と一緒にいたので連れてきました」
「フーン」
姫川さんは立ち上がると、

ドカッ

「…ッ!?」
男を思いっきり蹴った

仲間なんじゃないの!?

「余計な事してんじゃねーよ
オレの完璧な計画が狂ったらどーしてくれんだ?コラッ」
男(アシッド鈴木、らしい)に文句を言いながら踏みつけていく

「なによ、あれ…」
「抑えろよ、さゆ」
「…わかってる」

「−フン、なかなか見所のある奴ではないか」
「ヒルダさんッ」
「気がついたんですか」
「あぁ…だが、何か強い薬をかがされたらしい
体の自由がきかん」
強い薬?てか…

「悪魔にも薬とか効くんですか?」
「まぁ、ものにもよるがな…相性が悪ければ死ぬ事も…」

ヒルダさんと古市が上を見上げた
…姫川さん


「さてと、男鹿くんを呼び出してーんだが…
ケータイかしてもらおーか」
「ケータイ?何だ、それは?そんな物持っておらんぞ」
…ヒルダさんが携帯知るわけないよね
悪魔だもん

「そーかい」
姫川さんは口元を上げながらヒルダさんに拳銃を向ける

「お…おい、何する気だッ」
「サービス、サービス」
慌てる古市とは正反対に楽しそうに笑いながらヒルダさんに液体を打ちつける

「くっ」
「な…ッ」
「おーっ楽しーな、コレ」
「ヒルダさんッ!!」
ヒルダさんの洋服が溶けていく

なんでこんなこと…ッ

「じゃ、さゆは?」
「え?」
「ケータイ、持ってるだろ?」
ヒルダさんに向けられていた銃口が私に向けられる


「…家にある」
「ホントに?」
「嘘つくわけないじゃない
あるならとっくに掛けてますけどね」
姫川さんのマネをして口元を上げて言えば、

「じゃ、さゆもサービスな」
なんのためらいもなく液体が打ちつけられた

あー…このワンピ気に入ってたのに…

溶けていく洋服を見てなんだか切なくなってくる

てゆかさ、私、ヒルダさんみたいに胸おっきくないし需要なくない?
…あっ自分で考えて泣きたくなってきた

「やめろって…言ってんだろ!!」
古市は後ろで縄を掴んでいた男から離れて姫川さんと私の間に立った


「ケータイならオレが持ってる
オレのを使えばいいだろ」
「−…だよねー」


「…ありがと、古市」
「は?」
「お気に入りだったんだよね、このワンピ」
「服かよ!?」
「あと、こんな醜い身体晒したくないし」
「…そんな姿してたら男鹿に怒られんぞ」
「辰巳?別に怒んないでしょ」
「……はぁ」
「ため息つくなよ、バカ古市」

「もしもーし、男鹿くん?」
古市を睨んでいると、姫川さんの声がした

辰巳…ッ

「あーいーよ、いーよ、そーゆーリアクションは
用件だけいうからアホみたいに聞ーてろ
君のヨメと幼なじみと友達はあずかりました
返してほしけりゃ今からゆートコまで1人で来い」


「…辰巳来ないねー」
窓から外を見れば、いつの間にか昼間から夕方へと変わっていた

「プックククッバーカ
あいつが来るわけねーだろ。アホだアホ!もーケンカしねぇつってたよ!!そーいや、今頃家に帰ってテレビでも見てるんじゃねーの?」

ガッ

「古市ッ」
姫川さんは古市を殴ったあと

「せいぜい祈るだな
奴がこなけりゃてめーら生きて帰れねーぞ」

と、当たり前のように言った


「古市…辰巳、来ないのかな…」
「来ないわけねーよ」
古市はゆっくりと身体を起こして

「あいつは絶対来る。大丈夫、そーゆー奴だ」

私とヒルダさんを見て言った


「姫川さん、人影です!!誰か入ってきました!!」
「よーし、とりあえず囲め」

「ほらね」

「えぇー…」
古市と喜び合ったのも束の間
ボコボコにされて入ってきたのはアランドロンだった

「ククッ残念だったな、タイムリミットだ」
「…ッ男鹿のアホーッ!!ボケーッカスーッ
てめー絶対化けてでてやるからなーッ!!」

「誰がアホだ、こらっ」

アランドロンから聞こえた声にみんなが注目する

「−ったくてめーら
世話やかしてんじゃねーぞ」

そんな中、辰巳とベルちゃんがアランドロンを割って中から出てきた

「おっ…おがっ…」
名前を呼んだ人がすぐさま殴られた

遠慮ないなぁー…
「おまたせ」

一瞬その場が静かになった

「ケンカ、しないんじゃなかったの?」
「ケンカじゃねーよ。今からすんのは、王の処刑だ」



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