「あっさゆちゃん」
「おひさしぶりです」
急にベルちゃんに会いたくなって辰巳の家に行けば、お姉さんが笑顔で迎えてくれた

「あのバカならどっか行ったよ?」
「えっそうなんですか?」
「いつ帰るかわかんないけど、上がってる?」
「いえ、大丈夫です、大した用事じゃないですし…帰りますね」
親指で2階を指差したお姉さんに頭をペコッと下げて男鹿家を離れた


「うーん…辰巳って時間空いたらどこ行くんだろ…」
いくら幼なじみといえど
基本家にいる辰巳が外出して何をするかなんて把握しているわけもなく、とりあえずふらふらと歩き出した

家にいてもやることないし、ベルちゃん抱っこしたいしね


「あっいた」
海を眺めている辰巳とベルちゃん
その近くで釣りをしている古市
それを座って見ているヒルダさんとアランドロンが見えた
…勢揃いなんだけど

「たつ…ッ!?」
辰巳、と呼ぼうと口を開いた瞬間

「悪いな、さゆちゃん」

フードを被った男にお腹を殴られた

あー…バカ古市の忠告ちゃんと聞いとくんだった…

さっきまで話していた古市のムカつく顔が頭に浮かんですぐ、目の前が真っ暗になって意識を失った


「…ッた」
右腕の痺れるような痛みで目を開ける

「…フランスパン」
「誰がフランスパンだ」
一番始めに視界に入ってきたフランスパンのような頭を見て思わず呟いた

…ヤバ、この人絶対石矢魔の人じゃん

ちゃんと顔を見て固まる

死刑確定した感じですか…?

「へー…怯えた表情もいいじゃん」
「ぃた…ッ」
髪の毛を掴まれて顔を上に向けさせられる

え、マジでやめて
髪の毛傷むし、何より頭痛い

「…いいね」
「は?」
「さゆ、お前、いくらで俺の女になる?」
…はい?
俺の女って…姫川さんのですか?
(誰かが名前呼んでたけど…合ってるよね?)


「いくらだ?」
黙っていたら再び聞いてきた

…みんながみんなお金で買えるなんて思わないでよね

「…さぁ?1000万くらいじゃないですか?」
「おい、なめたこと言ってんなよ!?」
「やめろ」
隣にいた男がつかみかかってこようとした腕を姫川さんが止めた

殴らないの?

「さゆ」
「なんですか?」
余裕を見せるために笑って返事をする

いや、ホントは怖くてたまんないんだけどさ

「ぜってー落とす」

ニヤリ、と不吉な笑みを浮かべて言ってきた姫川さんを見て口元がひくっと動いた
…殴られたほうがマシだったかな


「姫川さん、連れてきました」
「おー」
姫川さんは私を繋いでいた紐の端を掴むと、あたしを立ち上がらせて、おもむろに歩き出した

綱渡りの猿じゃないんだけど

「ここだ」

姫川さんを睨んでいると隣の部屋(?)に入れられた

なにすんの!?

そう怒鳴ろうとしたとき、目が一点をみつめて動かなくなった
…なんで、

「古市、ヒルダさん…ッ!!」
傷だらけで2人が倒れてるの…ッ!?



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