遅刻して(石矢魔に遅刻なんかないけど)いつも通り屋上に向かえば、辰巳の手にできたらしい印について説明をしていた


「今さらなんですけど…なんで魔王に親が必要なんですか?」
そう尋ねたら辰巳、古市、ヒルダさんに超見られた


「え、だってさ…大魔王の命令で人間滅ぼしに来たのに親が人間って変じゃない?
ヒルダさんが親になればいいんだし」
「うーん…確かにさゆの言うことにも一理あるよな」
「でしょ?」
驚く辰巳を無視して古市と話す

「−つまり、魔王の親というのは
まだ幼すぎる坊ちゃまが人間界で魔力を発揮するには触媒となる人間の助けが必要となるのです
どれ程巨大な電力があってもそれを通す丈夫な電線がなければ意味がないでしょう…
それと同じです」
「−そう、そしてその電線の伝導率が上がれば上がる程、坊ちゃまは巨大な力を引き出せる
貴様の拳の刻印はそのパラメーターだ
坊ちゃまと同調すればする程複雑に増えていくだろう」

…えーと…つまり、辰巳が周りの人間を酷く扱う程真の魔王に近づくわけ!?

3人で辰巳の拳を見て固まる
ケンカすればする程人間じゃなくなってきますよ…?


「なぁ、さゆ」
「なに?古市」
寝不足らしい辰巳がフラフラと頼りない足取りで屋上を出てから、古市が珍しく真剣な表情で話しかけてきた

「お前さ、ヤバくね?」
「は?」
なんだよ、いきなり
述語つけなさいよねー
だからバカなんだ、バカ古市め

「…失礼なこと考えたろ」
「まさか」
平然と言えば、古市はため息を1つついて

「俺は男だからまだいいけど…
さゆは女だろ?いつ拉致られてもおかしくない」
「いや、おかしい」
あ、ジュースなくなった

ズゴッとなんとも情けない音が出たジュースパックを潰して古市を見る

「私が拉致られる意味わかんないし」
「お前を男鹿の女だと思ってるやつがいてもか?」
「……ぇ」
嬉しいんだけど

「今嬉しいとか思ったろ」
「…まさか」
「なんだよ、その間!?」
だって嬉しいじゃん噂だけでも好きな人と両想いってさ

「だから…ッ」
「ま、大丈夫でしょ。古市が心配してることにはなんないと思うよ」
スカートについた砂をはたいてから


「んじゃ、明日ねっ」

授業なんか存在しない学校をあとにした

…ごめん、古市
バカ古市の話でも真面目に聞いとくべきでした



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