「ちょっと辰巳ッ!!」
「聞ーてんのか!?マジでやばいって!!
3年校舎だぞ、ここ!!つか、うちのトップじゃねーか、その神崎って…!!」

古市と2人で必死に辰巳を止めるが、

「別にケンカしに行くわけじゃねーって」

と笑顔で返された

いや、あんたがそう思っててもさ…
向こうは完全に臨戦態勢だから…ッ

「神崎くんってのいるぅー?」
笑顔で手を上げて言う辰巳を見てため息をつく

「神崎さんだ…1年坊」

怖ッ
神崎さん怖ッ

完全に蛇に睨まれた蛙状態の私とは正反対にうはっ、とか言って喜んでいる辰巳
…リアクションおかしくない?


「あーチョットいいですかー?
お前バカ?バカなわけ?この状況で何よゆーぶっこいてんの?死ぬか?」
パンチ頭の人がめっちゃ辰巳を睨みながら近づいてきた
すると、

「アー」

ベルちゃんがペタペタとその人の顔を触って
そして、

「小物に用はねぇ失せろってさ」フ…と笑ったベルちゃんの代弁をするように辰巳が言った

「上等だ、こらッ」
「たつ…ッ「待てっ!!」…?」
声のした方を見れば、
なんかのっそりしたおっきい人が辰巳の前に立った
…でかッ!!

「貴様が男鹿か…神崎さんに何の用だ?」
「あ?」

城山さんの言葉に辰巳が必死に考えているのが手に取るようにわかる

さゆ〜古市〜

口に出してなくても名前を呼ばれたのがわかったくらい
…全くもう

古市と目を合わせると、

「オレ達実は…神崎さんの下につきたくて来たんです」
「辰巳、口べたなんです…」
「あぁ!?」
「口裏合わせてっまずは下手に出ないと話になんないんだから」
古市の言葉に今にもキレそうな辰巳に囁く
…こんなときにも近づくのに緊張するとかどうなのよ、私

「下につきたい?」
「あ…ああっそーなんだよ!!」
「敬語使って」
「でがすよッ!!」
何語よ

敬語は別として…辰巳の下につきたい発言に教室内がざわめく

毎年、勢力争いしてるらしいし…
辰巳が他のとこにつくよりも、信用できなくても自分の下においときたいはずだしね

「ククッおもしれーじゃねーか」

え?
「神崎さん!!」
「強い奴は大歓迎だ」
「ま…待って下さいっ!!こんな奴ら信用しては…」
「だったら証明してろよ、城山」
神崎さんは飲んでいたジュースパックを握りしめると、

「てめーに負ける様な奴はいらねぇ」

と城山さんに言った

こっちとしたらいい流れだけど…
なんかごめんなさいっ城山さん…ッ!!


「あんたに勝ったら信用してもらえるんだな」
「…何を企んでいる?」
「あ?」
「オレはな。お前みたいに神崎さんに近づいて寝くびをかこうって輩を何人もつぶしてきた。お前も…」

コキンッ

城山さんの声が途絶えたと思ったら、教室に響いた甲高い骨の鳴る音

「城山さーん!!」
…容赦ないんだけど

なんの躊躇いもなく裏拳で城山さんを殴った辰巳を見て口角がひくつく

せめて最後まで聞きなさいよ…

「プックハハハハハッ
いいだろう、ようこそ3-Aへ」

神崎さんが拍手をしながらそう言った瞬間、

「待って下さい…まだやれます」
城山さんが床から身体を持ち上げた

「まだ、オレは…負けてな…」
ガッ

「な…ッ!?」
自分の仲間を蹴った!?

「クク、かっこいいなぁ、おい
てめーはもう用無しだ。消えろ」

てか辰巳
あんただけ反応おかしいからッ!!

みんなが固まる中、1人だけ「いーね」と喜んでいる辰巳
…こんな奴が気になる自分が心底嫌になるんだけど


「待って下さい、神崎さん
その男は…その男は危険です!!
信じて下さいっっ!!オレはいつだって神崎さんの為に…」

城山さん…

「立てるか…?」
神崎さんの言葉に、城山さんはゆっくり立ち上がった

「よーし、立ったな…」

神崎さん、ホントは優し、

「じゃ、その窓から飛びおりろ」

くなぁぁあぁいッ!!!!
えっなに、あの人!?

「はーい。全員拍手ー!!」

拍手、じゃないでしょッ

「−というわけだ。みんな期待してるぞ、側近気どりの城山くん」

なに、これ…城山さんは神崎さんを思って言っただけなのに…ッ

「どーした?やっぱり立つのがやっとで歩けねぇってか?しょーがねーな」

神崎さんはベルちゃんの頭に手を乗せると、

「男鹿、最初の仕事だ。こいつを窓からぶん投げろ」

と言った

「た、辰巳…」
今この状況で神崎さんの発言を否定したら…
殴られるどころか、殺されるかもしれない

でも、

「やっぱアンタじゃなかったわ…」

城山さんを助けて

そう言おうとする前に

「お前がとんでけ」

辰巳は神崎さんを思いっきり殴って神崎さんを窓から文字通り、飛ばした

いや、確かに助けてほしかったけどさ…

やり過ぎでしょぉおぉッ!!「ダーブー!!」

みなが絶句する中…
魔王のおたけびだけが
春の空に、高く高く
ひびいたという


「さゆさ、あんとき何言おうとしたんだ?」
「あのとき?」
なんかゴタゴタしたあとの帰り、古市が思い出したように聞いてきた


「ほら、城山を窓からぶん投げろ。って神崎が言ったとき、男鹿になんか言いかけたろ?」
その言葉でさっきのことを思い出し、

「城山さんを助けて、って言おうとしたの
神崎さんのしようとしたことはムカついたしね」
と当たり前のように返した
すると、

「バカかッ!!」
「いたッ」
古市に頭を叩かれた

「なにすんのよッ!!」
「神崎がいる前で言ったらさゆが投げられてたぞ!!」
「それでもいいから城山さんを助けたかったのッ!!」
私の勢いに押されたのか、古市が「う…ッ」と口をつぐんだ瞬間、

「バカか、お前は」
「は!?」
後ろを歩いていたはずの辰巳がいつの間にか隣にいて、普通に頭を叩かれた
…本日2回目だ

「っ…別にいいじゃない、辰巳と古市に害が及ぶわけじゃないし」
叩かれた場所を抑えながら呟けば、

「…全く気づいてないんだけど、あいつ」
「仕方ないだろ。さゆの鈍さはハンパじゃない」

2人でコソコソ話を始めた

なんなんだ、一体…

「とにかくっもう危険なことはするな!!」
…無理やりまとめた感しか残らないけど、心配してくれたのが嬉しかったからとりあえず頷いておいた



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -