「おらぁ!!」
若松さんは外れたボールを取ると、
「っしゃコラ、どっっ……せーい!!」
おもいっきり投げ、それを今吉さんが取った
「毎度どんなかけ声やねん」
そう言いながらゴールに近づいた今吉さんに急いで俊くんがDFに入った
しかし、
「ダブルクラッチ!?」
放られたボールは俊くんの手に当たることなくゴールに吸い込まれていった
「おおかた、青峰が遅れるて聞いて、できるだけ点差つけようとか思ってたんちゃう
まぁ、スマン。こっちの言い方が悪かったわ
前座言うても、青峰と比べてっちゅー話や
キミらよりは強いで、たぶん」
残り6:11
桐皇 10
誠凛 4
「うお!?やっぱり?」
「センパイ、何見てんすか?」
「予選トーナメントの桐皇のスコア」
小金井くんと降旗くんの会話を隣で聞きながらついさっき見たスコア表を思い浮かべる
…確か、全部100点ゲームだったんだよね
てか、ここまで強くてまだ青峰くんがいない状態なんて、冗談じゃない
桜井くんのシュートは、跳んだと同時にボールを放つから、ブロックしにくいらしく、日向くんがいらいらしてるのがベンチにまで伝わってくる
てか、この人たち…
「味方のケアは最小限、譲り合いなんか全くなしなんだね。OFもDFもとにかく1対1だし」
「ええ、自分でボールを取りにいって自分で決める
個人技でひたすら攻めてくるわよ、桐皇は」
リコの言葉を聞いて、無意識のうちにため息がこぼれた
どこか1ヶ所でも連携プレーをするところがあればそこを崩せばいいんだけど…
個人技で、ってなると誰か1人を止めても仕方ないんだよね
「…次の攻撃のとき、かな」
ボソ、と呟いた直後、
「試合にまで負ける気はねーぞ
主将にもそう言っとけ、謝りキノコ」
日向くんのシュートが決まった
「うお、またロングパス!?」
「速ぇっつか、先頭のアイツCだろぉ!?」
若松さんのあの速さはやっかいだなぁ…
DVDで観るよりも断然速い
「うお速!!」
若松さんが振り返った直後、後ろにいた黒子くんがジャンプをしてボールに手を伸ばした
でも低いよ、黒子くん…ッ!!
「ったく、慣れねーことすっからだ、アホ!」
「高っか…!!」
黒子くんの倍近く跳んだ火神くんがボールを取り、
「ナイス火神!と黒子?」
ボールが俊くんに回った
「…なんか、気持ち悪い」
「えっもしかして妊し…」
「違うから」
目を輝かせたリコの肩を軽く叩いて、再びコートに目を向ける
「空気が気持ち悪いの。桐皇の人たち、冷静過ぎ」