折紙ワルツ


赤白黄色。あと水色とピンク。小さく切り分けた正方形の紙で作るのは鶴と紙飛行機。
テーブルの上にたくさん、たくさん。
虎徹さんがこの間教えてくれた鶴を折り、それを紙飛行機に乗せた。こうすれば飛べない折鶴も飛ぶ気分を味わえるだろうか。私は空への憧れを込めて折り込んでいく。
最後の一枚が余ってしまったがしょうがない。あらかた折り終えてしまって、さてその一枚をどうしようかともてあましたところにキースがやってくる。


「何を作ってるんだい?」


私は鶴と飛行機、と短く答え、残った一枚をしょうがないので飛行機にして投げたけれど、やっぱりすぐに落ちてしまった。失敗作だ。残念。私の紙飛行機はいつも飛んでくれない。


「ね、空を飛ぶってどんな感じ?」
「気持ちいいよ、そして楽しいね」
「ふぅん」


紙飛行機が空気を切り裂くようにスカッとする感じだろうか。綿毛みたくふわふらした感じだろうか。残念ながら私にはそれはわからない。
落ちた紙飛行機をキースは拾い上げてひょいと投げる。今度は長く飛んで、私の手元に帰ってきた。


「鶴は?飛ばさないのかい?」
「だって折紙の鶴は飛ばないのよ」
「それじゃ鶴が可哀相だ」


そうして彼は一羽の鶴を見初めると、手の平に乗せる。ちょいちょいと頭を手品のようになぜると鶴が風に乗ってふうわりと飛んだ。一羽が飛び始めると二羽、三羽と飛び始めて、飛行機も一緒にくるくると宙を舞う。

「わあ…」
「鳥も飛行機も飛ぶものだからね!」


器用に私とキースの周りをくるくるとカラフルな折紙達がワルツを踊る。

柔らかい風が髪を巻き上げて、頬を優しく撫でる。普通ではあり得ない光景に見惚れていると、キースが恭しく手を差し出してきた。


「お手をどうぞ、レディ」


意図が汲めずに、大きな手に自分の手をそっと重ねれば、足元がふわりと軽くなった。
突然の浮遊感に、バランスを崩しそうになった私を支えるようにキースが空いた手を取り、私は空間に浮きあがる。


「わ、わわ」
「怖かったら捕まっていて構わないよ。どうだい?」
「すごい!」
「それはよかった!」


こわごわと足を踏み出せば、足元から掬うように風が吹いて私はステップを踏む。

1、2、3。1、2、3。

ふわふわしていて、ドキドキしていて、身体が熱い。周りを折り鶴がパタパタと飛んでいって、ダンスホールのよう。
片手だけそっと離してターン。一周回って満面の笑顔。もう一度手を繋いで、私はそっと床に下りる。


「どうだったかな?」
「魔法みたいだった!風とワルツしてるみたい!」


すごいすごいと騒ぐ私に小さく人差し指を当てて、「でも二人の時だけだよ、」と悪戯っぽくキースが囁く。
そして今度は少しだけ距離を縮めて、


「では2曲目のお相手をよろしいですか」
「もちろん!」


今度は二人、空のダンスホールにて。



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(110601)

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