ひとりぼっち(社会人承花)

 
 


ずっと一人で生きていくのだと思っていた。

家族がいても、いつか友達ができても、自分との距離はどこか離れていて。
一生隣りに居てくれる人など、自分がそう望む人など、できる筈がないと虚ろに考えていた。


だけど。


「大人になることが嬉しいことだったなんて、君と出会って初めて知ったなぁ」


はぁ、と白い息を吐きながら花京院は言った。

研究が一段落した承太郎と、余っている有休を使った花京院は、久し振りに二人揃っての休日を満喫していた。

とは言え昼過ぎまでのんびりと眠っていたので、録画していた映画を観たり、部屋の掃除をしたりと色々やっているうちに日はとっぷりと暮れ、夕飯の食材の買い出しを終えた今ではもう辺りは闇に包まれてしまっていた。


冬は夜が訪れるのが早い。
自宅からスーパーまでは少し距離があるけれど、雲の無い濃い闇の中にある星々をゆっくり見て歩くには丁度いい。

花京院がそんなことをぼんやりと考えていたら、隣りの承太郎がぼそりと何かを呟くのが聞こえた。


「何?」
「…いや。」
「なんだいそれ。気になるよ」
「大したことじゃねぇ。それより…」


花京院が首を傾げると、承太郎はためらうような表情をみせた。

ようやくあぁ、と思い当たり、花京院は緩く微笑む。


「僕がまだ高校生やほんの子供だったら、君と一緒に居られなかったんだろうなぁと思って」
「普通逆じゃねぇのか」
「どうして?自立して生きていれば、誰からも文句は言われない。幸い僕には文句を言うような近しい人間はいないけど」
「…そうか」


承太郎はきっと、世間の風当たりとか、そういったものは大人になってからの方が厳しいのだから、一緒に生きることがより困難になるのではないかと思ったのであろうと、花京院は分かっていた。

しかし花京院にとって世間とか他者、仕事上の地位などはさして重要なものではない。


「それに歳を重ねていなかったら、僕にとって君を信じることは酷く難しかった。僕はずっと自分が一人で生きて行くものだとばかり思っていたし、他人が僕の一生に付き添ってくれるだなんて思ってもいなかったから。」


抱きあえる距離、笑いあえる幸せを噛み締めている今でさえ、どうして承太郎が隣りに居てくれるのか分からない。

分からないが、それでもいいと、思えるようになった。
理由を知らなければ不安で仕方なかったことが、そしてそんな弱い自分がいたことが、今は許せるようになった。


だから花京院は、一人でいても生きてゆけるけれど、だけど手をつないでいてくれる承太郎に笑って言うのだ。


「君と出会えて、本当によかった」



(でもとなりにはきみがいる)



***

あえて幼い感じで。












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