さよならきのうまたあした(静雄と幽)


 
 
 
午後のLHRも終わり、帰宅しようと静雄が中身の入っていない薄い鞄を片手に持って椅子から立ち上がる。


そのまま何気なく窓の外を見た途端、静雄は息をのんだ。


放課後の教室のざわついた音が遮断されたように遠くに聞こえる。


「かすか…?」


無意識にぽつりと呟かれた言葉はひどく小さい。


静雄が呼んだ名前は彼の弟のもので、しかしここに居るはずの無い人の名であった。


真白な脳内で彼がここに居る理由など考えられる訳も無く、静雄は唯弟の元へと走った。


静雄が息を切らせ近付いて見ると、幽は校門に寄り掛かるようにして、自身の足元を見つめていた。


「幽、」
「…静兄」


困惑したまま静雄が弟に声をかけると、幽は一つ瞬きをして視線を上げた。


「お前、何でここに…?」


反応があったことに静雄が安堵しながら問えば、幽はゆっくりと歩き出した。
静雄も慌てて後を追う。


「迎えに来た」
「は?なんで…家で何かあったのか?」
「無い」


その言葉に静雄が訝しげに眉を寄せると、幽は横顔だけで珍しく微笑んだ。


「迎えに来たかったから」


暖かな声音でそう言われると、静雄は何とも恥ずかしいような嬉しいような、そんな気持ちになった。

一緒に家路を歩くなんて何年ぶりのことだろう、と浮ついた思考の中で思う。


思わず頬がゆるむのがわかったが、静雄は知らない振りをした。




****


しらないふり。しらんぷり。
どっちも語感が可愛い気がして使いたくなかったのに…

ブラコンな静雄
隠れて臨也への牽制をする幽

幽の静兄呼びは萌えを詰め込んだ結果です





 










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