スノウマン
自分の数メートル先を時折転びそうになりながらふらふらとおぼつかない足取りで歩く静雄に、臨也は深く息を吸いそのまま大きく声を出した。
「シーズーちゃーん!待ってよー!」
笑い混じりの声に逸早く反応した静雄はばっと振り向くと、うるせぇ!と顔を赤くして憤った。
そのストレートな感情表現に、臨也は無意識の内につい笑みがこぼれた。
「シズちゃん、歩くの、下手だね!」
「うるせぇ!雪のせいだっつの!」
臨也に反論する静雄の言う通り、昨日の夜に降った雪が珍しく積もった為に、雪に馴れていない静雄(又その他大勢)は朝から時間をかけてゆっくりと歩いては滑り転ぶ、といったようなことを繰り返していた。
「駄目だなぁシズちゃんは。こういうのにはコツがあるんだよ」
「あぁ?」
肩を竦めてため息をつく、臨也がそんな芝居染みた仕草で言った言葉は残念ながら訝しげな表情の静雄には届かなかった。
「雪の上に足を置くときは踵から。これ基本でしょう」
言い終わると臨也は、軽やかなステップを踏む様に静雄に向かって歩いてきた、が。
「あれっ?…わっ」
「うわっ臨也手前っ!!」
どすん、という衝撃と共に一瞬の痛みが静雄の身体を駆ける。
思わず瞑ってしまった目を開くと、目の前にはさらりとした黒髪が在った。
刹那、静雄は自分にのし掛かる重い塊を渾身の力で押し退ける。
「いって!!ちょっと何するのシズちゃん!」
「それはこっちの台詞だ!」
近くにあった街路樹に思い切り体をぶつけたらしい臨也が叫ぶが、静雄も負けじと怒鳴る。
二人とも頭から靴の先まで、真白な雪を多いに被りながら言い合う様は他者から見たらとてつもなく滑稽であるということには、本人達は全く気が付いていない。
「この間ネットで見たのに…ガセだったらしい」
「何がだよ」
苛々とした表情を隠そうともせずに舌打ちをする静雄。
臨也は少しの間それをまじまじと見つめ、静雄が眉間の皺を1本増やした所で口を開いた。
「なんかさシズちゃん…俺達馬鹿みたいだけど、これってちょっと青春だよね」
きらりと臨也の目が光るのを見た静雄は立ち上がると、歩道の側に立つ標識を軽々と抜き取り問答無用で臨也に向けて振りかぶった。
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あれ今度は臨也がアホの子だ
子どもっぽい臨静もかわいいと思います。
世間様とは逆方向にむかっていることには気付いている^^
あと東京の雪事情とかそういうのはよく知りません←
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