*苦し紛れに愛を囁く


 
 
※学生
 
 
 
 
「折原先輩、ずっと前から好きでした、もしよかったら付き合ってください」


たった数分前、見知らぬ後輩に呼び出され余りにも暇だったので校舎裏へ行くと、お約束と言うべきか告白をされた。

だがしかし自分はその女子生徒と面識がある訳では無く、会話をしたことも無い、つまり完全なる一方通行な気持ちを自分勝手に吐露されただけだ、というのが臨也の正直な思いであった。

しかもその場面は静雄にばっちり目撃されていたらしく、今こうして一言一句違わずその時に後輩が述べた台詞を厭味のように繰り返された。


「全く知らない子だったんだけど」
「いいじゃねぇか別に」
「でもちょっと気持ち悪くない?こっちは向こうのことなんて気にかけてもいないのに」
「世の中にいる大多数の人間が知らねえ奴らだろ。そんなこと一々気にしてんのかお前」
「俺は知らない人間じゃなくて、自分の想いを一方的に告げて満足するような自己中心的な人間が嫌いで、気持ち悪いの。」


少しだけ眉を寄せて臨也が言うと、静雄は読んでいた雑誌から一瞬だけ臨也と視線を合わせるとふうん、と呟きまた雑誌に目を落とした。


興味が無いと如実に伝えてくる静雄のその態度に臨也は苛立ち、紛らわせるように言葉を放つ。


「あぁでも、シズちゃんからの告白なら受けちゃうかもなぁ。俺シズちゃんのこと大好きだから」


妙に明るい声で告げた言葉に静雄は、雑誌のページを捲る手をひたりと止め、目を見開き惚けたような顔で臨也を凝視した。


静雄のその頬は羞恥から赤く染まっていて、痛々しい金髪のなかチラリと覗く耳も同様に赤い。


臨也はそれを見ると何とも居心地が悪くなり、口を噤んで静雄から目を逸すと手元のペットボトルを意味も無く弄った。




それは冗談と誤魔化してしまえる程、嘘ばかりのものでは無くて。




*****


学生だけどシリーズとは違う設定で書いた気でいるのでこちらに。



 










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