君を殺す誘い文句
この世界に彼と俺と、2人だけしか存在しなかったら、俺たちは殺し合うことなどなかったのだろうか。
「ねぇどう思うシズちゃん」
「知るか」
「たったの一言で片付けないでよ。よく考えて」
言ってみたはいいけれどシズちゃんって頭わるいからなぁ。
ちゃんと俺を納得させるような答えをくれるのだろうか(もちろん期待はしていない、全く)。
3分くらい経ってようやく、シズちゃんは口を開いた。
「気持ち悪くてそんなこと仮定だとしても考えたくは無いが、例えば世界に俺とお前の2人しか存在しなかったら。やっぱり殺し合うんじゃねぇの」
「その心は?」
「世界に存在するのが俺とお前だからだ」
うん、簡潔でよろしい。
正直俺が想定していなかった答えだけど、言われてみればそうだ。
もし世界に俺と波江しかいなかったら殺し合うなんて不毛なことはしないが、そこにいるのは俺と、シズちゃんなのだ。
「まぁ実際には世界に俺とシズちゃんしかいないなんて有り得ないけど、どっちにしろやることは今と変わんないってことだよね」
スッキリしたところでひとつ、
「今日こそシズちゃんを殺してあげる」
君を殺す誘い文句
(つまり世界がどうなろうとも目の前にいる存在は変わらない訳で。)
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