アリスと泡沫逆夢1

 
「たくさんのひとのなかで、
貴方はそれでも僕を選んでくれますか」


俯き発せられたその言葉は酷く自虐的な響きで、俺は思わず眉をしかめた。





  アリスと泡沫逆夢





夕暮れの部室は窓から差す傾いた陽のせいでセピアに染まり、また賑やかな女子3人組がいないため(今日は3人で買い物に行くとハルヒが言っていた)静かだった。


俺の正面に座る古泉は普段よりも幾らか沈んだ面持ちで、それはいつもハルヒの前であろうとなかろうと、頼んでもいないのに浮かべているあの笑顔が消えているからだと気付いたのは、情けないことに不穏な冒頭の台詞を聞いてからだ。


「ねぇ、聞いてますか」
「…あぁ」
「答えくらい教えてくれてもいいでしょう」


質問に答えるだけなんだから簡単なことです、なんて泣きそうな顔で言われても、訳が分からなくて泣きたいのはこっちだ。

それに質問の中身が簡単じゃない。何しろ完璧スマイル常備なお前がそんなに酷い顔をしてるくらいだからな。





 











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