ザッ…、ザッ…、広大な荒野の端で程よく伸びた草を踏む音が響く。その足音からは気だるそうに、重そうに地面を擦って歩いているのが想像できた。足を引きずるように歩く少女――ミカはやせ細っていた。服はボロボロのワンピース一枚を身に纏っていてハァハァ、と息を乱し、小さく手を振りながら進んでいる。目はやや濁っており、体はフラフラとしていて危うい。ミカは飢饉の危険に晒されていた。
「ハア、ハァ…う、く…ぅ」
ミカの体が大きくふらつきそのまま草の上に倒れ込む。ミカはせき込みながら眠るようにスゥ…と目を閉じた。ミカの目からはやや黒く濁った涙が零れていた。
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あの人の優しさにいつも私は怯えていた。あの人の優しさはふわふわしていて気持ちいいけどまるで卵の殻の上を歩くみたいに、いつ壊れるかとビクビクして。ビクビクしながら生きるのならば最初っからこんなものいらないと思っていた。
何も変わらないものなんてない。良しも悪しもいつかは変わる。現に私は今ここにいる。
あなたはいつもぶっきらぼうに私の傷口をさすってくれた。それが痛くて、痛くて、涙が出るくらい痛くて。そして、少しくすぐったかった。
一度傷つけられた心を、空いてしまった穴をあなたは埋めるわけでもなくさすってくれる。ゆっくりと、自分の体温を分け与えるように。