※夢主がなずなちゃんに憑依します。苦手な方はお戻り下さい。
















「じゃあまたねー!」

「はいはい、前向いて歩きなさいね」

「またねー!」

「…バイバイ。…っ!?」


 ブン―…ッ、放課後、別れ道で帰宅部の友だちに手を振り、帰ろうと踵を返した途端急に視界が変わった。見慣れた風景から見慣れない花畑へと、淡い茜色から明るい陽光へと、本当にチャンネルを変えたみたいに一瞬で、何の前触れもなく。
 あまりの展開に体がついていけなかったようで目が回り、体がフラッとよろける。(当然、思考回路もついていけてない)するとこちらを気遣うような聞き慣れない声が聞こえた。
 ズキズキと痛む頭に手をやりながらそちらを見るとそこには髪が緑色の可愛らしい男の子が心配そうに(いや、呆れたように?)こちらを見ていた。…この人は誰?


「…急にどうしたんですか、なずなさん」



 なずなさん?またしても知らない人物の名前だ。それは誰の名前だろう。
 頭痛に顔を顰めながら男の子を見るとその男の子も一拍置いて不快そうに眉をつり上げる。


「…なんですか、そんなに見つめて」

「いや…、!」


 響いたのは可愛らしいソプラノの声。確かに私が私の意志で、私の言葉で発した筈なのに私の声色ではない。口に手を当て、キョロキョロと回りを見回しても私と彼以外ここにはいない。ふと視界の端で赤が見えた。(まさか、)頭の中がやけに冴えていて恐る恐る頭を触ると柔らかい感触が手に当たる。
 ちょっと待ってちょっと待って。私の髪はこんなに…!
 ツゥ…、冷や汗が頬を伝う。一束掴もうとすると指の間からスルリと抜けてしまった。(み、短い!)


「な、に…これ」

「なずなさん?」


 愕然とした思いで彼を見上げると彼は怪訝そうに私を見る。その目に映るのはビックリしたように目を見開き、癖っ毛の赤髪を持つ女の子。私の面影はどこにも無い。あぁ、目眩がする。私はまた手を頭にやった。


「頭でも打ってしまわれたのですか、まったく…。怪我をしたのは僕の方だって言うのに…」

「あぁ、いや、大丈、ぶ…はぁ」

「…本当に大丈夫ですか?」


 大丈夫じゃない。実は全然大丈夫じゃない。
 私はそんなことを考えながらはっ、と自嘲気味に笑い、眉を下げて心配そうにする彼に何でもないと手を振ってフラフラと方向転換する。どこへ行くかなんて決めてないがこれ以上真面目に現実と向き合ってるとこっちの頭がおかしくなる。(夢なら早く覚めて欲しい)痛む頭を押さえながら少年がいない方へと進もうとする。


「え?…」


 後ろから戸惑うような声が聞こえた後、足を一歩前へ出そうとすると片方の腕を掴まれた。


「なずなさん、怪我した僕をほっといて逃げるつもりですか?」

「…え」

「あなたも意外と策士なんですね。少し驚きました」

「は?」

「まさか怪我した僕をそのまま放置、だなんてありえませんよね?」

「……ははっ、まさか」


 はっきりと口角が引きつってるのがわかる。ゆっくりと上半身だけ軽く捻り、後ろを振り向くと彼が満面の笑みで私の腕を掴んでいた。
 …仮説でしかないがもしかしたら私は誰かの体に乗り移ってるだけなんじゃないのだろうか?(いきなり人体が変異するというのは聞いたことがない)そして、憶測でしかないが私じゃない、この体本来の持ち主が私が乗り移る前に何かやらかしたんじゃないだろうか?半ズボンから伸びた柔らかそうな白い足に擦り傷が作られている。(…何故太もも?どうやって?)とりあえず、


「じゃあ、責任持って最後までしっかりと手当てして下さいね」


 彼は揚げ足を取るように嫌みっぽくそう言って薄ら笑う。
 こいついい性格してるわ。どんな生活をしたらこんないい性格になるんだ。是非とも見習わせていただきたいね。
 心の中で彼を皮肉った後、1つため息を吐き、彼に向かって(先入観でしかないが)この体本来の持ち主の性格に似せようと気持ち柔らかく笑んでみた。


「…えぇ、もちろん。じゃあ肩を貸しますから一緒に保健室に行きましょうね」

「なずなさん、よっぽど僕に怒られたいようですね?さっき言ったでしょう?あそこまで僕を歩かせる気かと」


 この体の主の名誉の為だと、私の中での最大限の柔らかい笑みはこの彼の言葉で脆くも儚く崩れ去ったと思う。
 そんなこと聞いてるわけがない。漏れそうになるため息を飲み込み、顔が引きつらないように努める。


「じゃあ、






最後主人公はなずなちゃんの二重人格として精神が捕まえられるかも。



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テーマ「人外ファンタジー」
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