◎どれくらい好き?
HUNTER×HUNTER/メイン4人組み(ゴン・キルア)


どれくらい好き?
ゴンver


「ゴン、まだ?」

「もうちょっと!」


 港の仕事に行ったミトの代わりに、腕まくりをして朝ご飯に使った食器をせっせと洗うゴンの後ろ姿を××はふてくされた表情で見ていた。座った円椅子の足を前、後ろ、と浮かせながらキィキィと軋ませている。

 ××がゴンを手伝おうとすると××は手伝わなくていいから座っててと言われ、やることがないので洗濯機を回そうかと席を立とうとするともう少しで終わるから待って、と振り返らずに焦った声で訴えてくる(なんで席離れようとしたのわかったんだろ)。

 要は暇なのだ。常にせこせこと動いていないと気が済まないのはミトの血を受け継いだからなのか、ただ単に性格だからなのか。どっちにしろ椅子に座ったままなのは疲れるらしい。
 ××は呆れたように笑いながら席を立ち、腕を伸ばした。椅子に座ったままだと使わない部分が多いためか、いろんな部位から骨が鳴る。
 その音に気づいたゴンが布巾と食器を両手に持って振り返る。


「もう終わるよ?」

「うん、待ってるよ」


 キョトンとしたゴンに××が笑って答えるとゴンは嬉しそうに笑い返した。また、水道の方に向き直り、食器の水を拭き取る。
 ××がその姿をボーっと見ているとふと、意地悪い質問が頭に浮かんだ。××の唇が孤を描く。
 今聞いたら間違いなく皿を割ってしまうだろう、と想定し、皿を拭き終わるまで××はニヤニヤとゴンを見ていた。
 やがて、最後の一枚を食器棚に戻し、ふぅ、と達成感ゆえのため息を吐いたゴンを見て××の目がキラリと光る。


「ゴン」

「なに?」

「私のことどれくらい好き?」

「……え」


 振り返って袖の裾を下ろしながら××の話を聞いていたゴンは顔を上げ、ビックリした表情で××を見る。
 数瞬経っても流れている沈黙に××は気まずそうに自ら沈黙を破った。


「…う、ごめん。なんでもない…よ」

「わー!え、あ、えっと…これくらい!!これくらい好きだよ!」


 ××がシュン、と落ち込んで見せるとゴンがあわあわと慌て出し、両手を横に広げた。ほんのりと頬を染めながら困ったような顔をして××の顔色を窺っている。
 ××はそんなゴンの表現をチラリと盗み見てからまた俯いた。まだ落ち込んでいるように見える。


「…うん」

「これくらいだよ!すごーく好きってことなんだよ!?」


 ゴンは両腕を目一杯広げたまま、まるで幼児が鳥の羽ばたく真似をしようとするように上下にパタパタと動かす。その必死な様子に××は顔を上げ、一瞬キョトンとした後、こみ上げてくる情に身を任せてクスクスと笑い、


「うん、知ってるよ」


と嬉しそうに笑った。
 ゴンは××の幸せそうな笑みを見てピタリと動きを止め、やがてわなわなと震えながら頬を染めた。眉間にシワが寄っている。


「あー!からかったの!?」

「っあはは、からかってないよ」

「嘘つき!もう、××笑わないでよ」

「くく、笑って…ないよ?」

「…うー、なんかムカついてきた」

「ふふ、ごめんって」

「――」


 いつまでも笑い続ける××にゴンはムッとした顔をして一瞬で××との間合いを詰めた。そして、触れ合うだけの口づけを交わす。


「…え?」


 呆けた様子でこちらを見る××の姿にゴンは頬を仄かに染めたままニィっと意地悪い笑みを浮かべ、自分の唇にそっと触れる。その動作を見て××は起こったことを認識したのかリンゴのように頬を赤くし、慌てて自分の唇を隠す。


「これくらい好きだよ」

「!」


 ゴンはさっきの意地悪い笑みと打って変わり、目を細めて口元に笑みを浮かべ、××をまぶしそうに見つめていた。



(××は俺のことどれくらい好き?)
(…う)
(俺言ったよー)
(…私達家族ですよね?)
(血は繋がってないけどね!)
(…)



どれくらい好き?
キルアver


 まだ正午を過ぎたばかりだというのに多くの雲が空を覆って日光を遮断したせいか町の風景がくすんで陰鬱に見える。××が顔を上げて空を見やると雲の脚が早かった。


――雨が降るかもしれない。


 軟風が木々を揺らし、運んできた湿っぽい空気が鼻腔を擽る。××は急にハッとしたような顔をし、口元に手を当てて俯いた。
 そして―…


「ミッ!」

「…何、今の」

「くしゃみを我慢しようと…気にしないでください」


 いつからいたのか、近くから聞こえた声に反射的に答えながら振り向くとここより低い位置の太めの枝に手をかけ、幹に片足を置き、まさに登ろうという姿勢のままで驚いたようにこちらを見上げるキルアがいた。
 その姿を認識すると××はぶっきらぼうにそう言い、すん、と鼻を啜りながら恥ずかしそうに前を向く。
 「よっ…と」という声が聞こえると同時に自分の座っている場所が僅かに揺れた。


「ミトさんが風邪引くから家入れって」

「家に入ってもすることが」

「ゴンが店の手伝いで走り回ってたぜ?」

「…もうちょっとだけ」

「ん。隣座っていい?」


 キルアの質問に××は振り向かないまま太い幹の方へ詰める。足をかける所が無くなってしまった。
 それを見てキルアはムカッとしたような顔をして「嫌がらせか!」と喚き立てる。××は肩を震わせながら忍び笑いをした。

 キルアは××の笑っている姿を見て毒素を抜かれたようにポカーンと見入っていた。
 笑っている。あれほど辛気臭かった××が久々に。もしかしたら、自分が知らなかっただけで××はどこかで笑っていたのかもしれない。

 キルアは頭に浮かんだ考えを消し、苛々したように自分の立っていた木を力強く蹴って××の座っている木に着地した。隣から××の「きゃ…!」と焦った声が聞こえる。
 細い先端に茂っていた葉が何枚かその身を地へと落とした。


「キ、キルア…!」

「悪い悪い」


 ××は幹に捕まるようにしながら非難の声を上げる。キルアはそれを前を向いたまま無表情でさらりと受け流した。
 それは××にキルアがどこか怒っているような印象を与えた。そして、ほんの少し傷ついているようにも―…

 ××は意外なキルアの反応に気まずそうに身を縮こまらせた。キルアが横目で××を見やる。
 しばしの沈黙の末、キルアがそういえば、と沈黙を破った。××がホッとしたような顔をする。


「洗濯物、干しといたぜ」

「うんうん、ありが……え?」


 何も考えずありがとう、と言いそうになったが言われたことを理解して××は驚いたようにキルアを見た。キルアはその表情にたじろぐ。


「な、なんかまずかった?」


 あそこに干したけど、とキルアが指を下に指す。その先を辿れば確かにくすんだ風景に映える白がユラユラと風に揺らされていた。


――雨が降りそうだと気づかなかったのかな?


 苦笑しながら白を見る。きっと初めてすることに精一杯だったのだろう。××はキルアが洗濯物を干すのに奮闘している情景を頭に浮かべてクスクスと笑った。


――どうか、雨が降りませんように


「…なに笑ってんだよ」

「何も?ありがとう」


 急に笑い出した××にまたもや不機嫌になるキルアだったが××が嬉し気にお礼を言うとキルアは「はずい」と呟きそっぽを向いた。


「照れてる?」

「照れてない!」


 キルアの白い頬が仄かに赤く色づいてるのを見て××がその頬をつつくと振り払われた。キルアは無造作に片膝を立て、そこに顔を埋めるようにしながらなにやらぶつくさ言っている。
 ××はそんなキルアを見て薄く笑い空を見上げた。
 空は相変わらずどんよりしている。まるで、あの時みたいな…。


「ね、キルア」

「あん?」

「…ごめん、機嫌直してよ」


 返ってきた機嫌の悪そうな言葉に驚き、視線をキルアにやるとキルアは未だ××と反対の方向を見ていた。完全にへそを曲げている。
 ××は苦笑した。


「ね、キルア」

「…だから何だよ」


――ディズは私といない方が良かったのかな?


 ××を纏う空気が変わったのを感じ取ったのかキルアは顔を上げてちゃんと聞く体勢をとる(それでもそっぽを向いたままなんだけどね)。××はその姿を見て意表を突かれたような顔をし、思わずと言ったように聞きたいことをグッと呑んだようだった。


――サラッと流してくれる程度でよかったのに


 今更怖じ気づいてしまった自分に嫌悪しながら××は自虐的に笑った。何も変わらない。


「…私のことどれくらい好き?」

「……はぁ!?お前っ、何、言って…!」


 面白いくらい動揺してる。予想だにしなかった質問に数瞬してからバッと××の方を向き、耳まで赤く染めながらしどろもどろに言葉を紡ぐ。××は困ったように笑った。
 苦し紛れに言った言葉だからそこまで反応されると少し困る、と言った風に。
 キルアはそんな××を見て感極まったように俯き、やがて小さく呟いた。


「〜っ、すっげー、好き…」

「!!!」


 今度は××が赤面する番だった。小さく呟かれた言葉は××にちゃんと届いた。それも莫大な効力を持って。


――キルアってこんな子だっけ!!?


 ××は口元に手を当てながら視線をさまよわす。キルアは何も言わない××に不安になったのか、恐る恐る顔を上げた。
 キルアが前髪の隙間からチラリと××を見やると顔を真っ赤にした××がいる。唖然とした。


「…××?」

「いやっ、あの…そのっ」


 キルアは驚いたように××を見ていた。いつも飄逸とした態度を崩さない(ヨークシンシティでのことは例外として)××が目に見えて動揺している。
 湧き上がる想いと比例して口角が徐々に上がっていくのを抑えられなかった。嬉しい、嬉しい。少しドキドキして心臓が、痛い。


「××」

「…う、なに…その笑み」


 こちらを向いて仄かに頬が赤いのを隠そうともせずニヤリと猫みたいに笑うキルアに××の頬が引きつる。
 不意に××の腕をキルアが掴んだ。


「っ!?」

「好きって意味、どれで捉えた?」

「!!」


――なんて意地が悪い!


 ××は近距離でキルアと見つめ合うことに耐えきれなかったようでふいっと顔を背ける。キルアがやや目を細めた。


「す、き…は、友愛の」

「ふーん。…知ってるくせに」


 自分の想いを知ってるくせに逃げようとする××にキルアは面白くなさそうに顔を顰める。
 キルアは××の顎を掴み無理やりこちらへ向けた。××は至極ビックリしたようで体を固まらせている。


「ちょ…待っ」


 ××の静止も聞かずキルアは××に口づけた。
 音も何もない、静かに終わる触れるだけのキス。

 唇にぬくもりが消えて××がうっすらと目を開けるとそこには頬を染めながら心底楽しげに笑うキルアがいた。

 空から一筋の光が差して、その銀色を照らした。



(なぁ、お前の全部ちょうだい?)
(い、イヤだよ!私の全部は全部私のだよ)
(…あっそ、ならいいや)
(あ、あぁ、そう?)

(奪うから)
(!?)




――――
こんなつもりじゃなかった
ただ、初め書いたやつの方だとあまりにもシリアスすぎたから甘めに手直しした

…甘すぎたorz
シリアスすぎても最初のが良かったかもしれない←上書きするように書いたから全部消しちゃった奴


しかもキルア気合い入れすぎた
ゴンみたいにサラッと済ませようとしたのに…
おかげでクラピカとレオリオは別枠に作ることになったわ(笑)
4人組の詰め込みにしようと思ったのに


えっとですね、これは“依拠”の連載夢主での絡みです。
ちょうどヨークシンシティが終わった所ら辺ですね。

でもこれ辻褄が合わないしおかしいからIF夢ということで。

好感度設定がヨークシンシティ終わった所ら辺というぐらいの認識でお願いします。

連載ではゴンとあんなことやこんなことしません。あはんうふんまでいきません…たぶん←


ヨークシンシティの夢(どころかプロローグしか)まだ書いてないのにこんな分かりづらいの書いちゃってすみません
頑張ります。

よし、次は愛しのクラピカだぜ!
…ネタどうしようかなぁ




11/15 22:09



mae top tugi


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