◎依拠―プロローグ―
HUNTER×HUNTER/?




「――ハンター試験?」

「なんだ、知らねぇのか」

「はい、聞いたことないです」


 よく晴れたある日の昼下がり、人気の少ない路地裏でスーツを着たガタイのいい銀髪の男と、厚いコートを腕に掛けるように持つショートパンツにハイネックの服を着た女が対峙していた。女の足元には小さな虎が尻尾を振りながら女の足に体を押しつけている。
 男は懐から取り出したタバコに火をつけて吹かすと、呆れたような顔をして女の顔を見た。女は男の口から吐き出された紫煙を目で追い、それが空気に溶けて消えるとまた目線を男に合わせた。


「ハンター試験って言うのはだな、…まぁ、なんだ。お前には難し過ぎる試験ってことだよ」

「そんなのわからないじゃないですか」

「三年に一人」

「…?」

「…合格できる確率だよ。何年も合格者が出ねぇって話も聞いたことがあるな」


 男が口に咥えたタバコを指に挟み、宙で灰を落とす素振りをしながらそう言うと女はムッとした顔をする。恨めしそうに男を睨め付けるも男は無表情で見つめ返すだけだ。
 己が内から僅かに湧き上がる憤りを鎮めるように女が握った拳に力を入れ、下を向くとグイグイと自分の体を押しつけてじゃれてくる子虎が目に入る。それが煩わしかったのか女は片方の足を上げてやや前に移動した。
 執拗に体を押しつけていた子虎は支えを失いコテ、とゆっくり倒れ、瞬時に体制を整えて当惑した様子で辺りを警戒している。


――…どうして、認められないのだろう。


「…それでも」

「あ?」

「あ、いえ…。…とにかく!私は何が何でもやり通しますよ」


 心なしかしょんぼりして見えた女は男が話かけると戸惑った顔をした後、握った拳を前に出してやる気を見せていた。それを見て男は苦笑する。


「やりづれぇ女だなぁ。やる気を削ごうとお前には無理だってぇとやる気出すし、かと言って誉めたら更にやる気出すし…お前、諦める、て言葉知ってるか?」

「知ってますよ。ただ今がその時じゃないだけで。ふふ、それにそんなの今更じゃないですか」

「そうだな。あーあ、あん時ほっときゃあよかったぜ」


 額に手を当て大袈裟に落ち込んで見せる男の脳裏を掠めるのは今から約一年前の出来事。
 たまたま仕事で出向いたザバン市で強姦紛いなことをされそうになっている女――××を助けたのが運の尽きだ。それからというものの何故か行く先々に××が居て(本人曰わく散歩だそうだ)、その度に会話を重ね懐く懐く。終いにはお礼がしたいからと自分の仕事を手伝いたいと言い出した。
 男は思わずと言った風にため息を吐いた。


「幸せ取りこぼしますよ?」

「お前のせいだ」


 クスクスと笑いながら少しズレたことを言う××にわざと一音一音区切って強調するように言うと可笑しそうにケタケタと笑いだした。子虎が主人の笑い声にビックリしたのか××から距離を取る。
 それを見て男――ランディは吹き出すように笑った。


「ランディさん?」

「くくっ…いや、ワリィワリィ」

「いえ、構いませんが…ランディさんも笑うんですね」

「お前は俺を何だと思ってんだ」


 ランディは心外だとぶつくさと言いながらタバコを下に落とし、子虎が近づく前に革靴の底でにじり潰した。後から近づいてきた子虎が煙を嗅ぎ、くしゃんっとくしゃみをする。


「そういえばハンター試験っていつあるんですか?」

「んなことまで知らねぇよ。帰ったらネットで調べてみな」

「…私使ったことないんですよね」

「…はぁ!?」


 今やパソコンは世界中に普及しているはずだ。
 今××が泊まり込みのバイトをしているという薬屋の婆さんの家に無くて使えないというのはまだ肯ける(ババァが使える物じゃねぇしな)。しかし、こいつは今使ったことがないと言った。
 今年で18にもなる今時の若者が使ったことがないなどと…。

 有り得ないという表情で見られて××は照れたように笑う。それを見てランディはなんで照れんだと××の頭をしばいた。


「痛いです。なんで叩くんですか」

「叩き安いところにあるテメェの頭が悪い」


 ××は叩かれた箇所をさすりながら理不尽だ!と抗議の声を上げる。ランディはそれを聞き流し疲れた様子で××を見た。


「お前の住んでたなんとか島」

「くじら島」

「…くじら島ってのはそんなに不便なのか?」

「とてもいい所ですよ!自然に囲まれているので動物は多いですし水は綺麗ですし。それにみんな優しいですしね」

「ちゃんと会話しろ」


 話が噛み合ってねぇ、とランディはまたため息を零した。


――こいつといると疲れる。


 自分の感情に素直な所は嫌いではないのだが。


「わかった。今回は俺が日付見て申し込んでおいてやる」

「ありがとうございます」

「とにかくだ。俺の仕事を手伝いたいならハンター試験合格しな。裏の世界は」

「生半可な覚悟じゃすぐ死んじゃうんですよね?」

「…わかってんじゃねぇか」

「耳にタコですもん。大丈夫です、この半年間何もしなかったわけじゃないですから」


 厭に自信を持って言う××にランディは表情には出さないものの内心では盛大にため息を吐いていた。

 この小娘はハンター試験をどう想像しているのか知らないが総合的に自分から見て××が受かる確率は限りなく0に等しい。
 それをわかっていてハンター試験合格を条件に出す自分も相当意地が悪いが、


――ま、これで諦めるだろ


 ランディは笑みを隠せなかった。





始まりの始まり


(やけに自信あり気だな)
(ちょっとしたことがキッカケでマチさんって人に修行つけて貰ってたんです。と言ってもメニュー課せられただけなんですけど…。最近連絡取れなくなっちゃったんですよね)
(ほー…、強いのか?)
(それがスゴく強いんですよ!私が薬屋で店番してる時に店を荒そうと入店してきたお客達がいたんですけどその人たちを投げ倒しちゃったんです)
(へー…すげぇな)
(それでですね)
((どうせ堅気だろ))



ランディ(オリキャラ)はマフィアです。ん?マフィアでいいのか?
子虎が空気orz




11/11 21:40



mae top tugi


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