今は便利になっている。米を炊こうと思えばすぐに炊飯器がしてくれるし、洗濯も手が荒れないようになった。時代の流れはこういうものか、空はあっちの時代のほうが綺麗だ。
長くは感じなかった、室町に生き現代に生きたけれども、待ち疲れたわけでもなくただ気付いたらビルが建ち木がなくなって今があった。これが現代。不思議と自分の姿は変わらなかったし、筋肉も衰えなかった。死ななかったし、寿命も来なかった。化け物なのかと思ったけど、左門も変わらず昭和の時代にあった。にこにことしているのは変わらず今でも頬が緩んだのを思い出す。
室町の頃の友人もいた。仙蔵も食満も長次も小平太も伊作もいた。当たり前だと思った。だってあいつらは俺と同様に成長したと思ったのだ。不自然なく、ただ「そうだろうな」と。(もちろん勝手に思ってるだけで、本当のことは分からないが)
「小平太」
「ん」
「変わったな、」
「文次郎も。変わったな。小さい頃から私はお前と一緒に居てたけど、変わった」
「…ああ」
そうかも、と紡ぐ言葉は薄い。「昔から一緒に居た」なら、どんなに楽だったか。やっぱり前世は覚えてないのか、あの頃俺たちは恋仲で、ずっと一緒に居たのに。お前は忘れないといったのに。なのにどうしてそう簡単に忘れたんだろうか。じゃあ、じゃあ、みんなも覚えてないのか。食満も伊作も長次も仙蔵もみんなあの頃を忘れたのか、そんなの酷い、酷い、一人だけだなんて
「小平太、俺な、」
「ん」
「前世は、忍者だった」
「私もだよ?」
「…は、?」
「忍術学園6年ろ組七松小平太。城はお前と一緒に就かないでフリー忍者になった。んで体育委員長でいけいけどんどん言ってた。そうだろ、文次郎。覚えているだろ、だって私たちは恋仲だろう」
覚えていた、はっきりと。しかも関係性も。小平太は覚えていた。それが嬉しくて堪らなかったんだ、ただそれだけなんだけど涙が止まらなくて、吐き出したい言葉はいっぱいそれこそ溢れんばかりの数なのに吐き出せない。
「文次郎、私も不安だったよ。だけどお前だから信じたんだ」
「そ、うか」
「文次郎のこと、好きだよ」
こんなに嬉しいことはない。ありがとうと言えば風が祝うように緩く吹いた。
01:変わりゆく人と街並のあ様
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