一歩先に、進みましょう

銀時のふわふわな髪をなでる。
天パだとからかわれることも多く、本人もコンプレックスのようだが、私はこの髪が好きだ。
なにしろ触り心地が最高なのだ。
確かにくるくるパーだが指通りは最高。
柔らかい髪質はいっそうらやましい。
私なんて長い時間とお金をかけてやっと天使のわっかができるくらいなのに…。

「なー、いつまで髪の毛触ってるわけ?」
「んーもうちょっと。いや?」
「嫌っていうか…何がそんなに楽しいんだかって感じだわ。」
「わかってないなあ銀時。私はこの髪の毛を堪能するためにここに来てるんだから!」
「え?俺に会うためじゃないの?」

俺髪の毛に負けてんの?とかぶつくさ言ってるけど放置。
まあ、もちろん嘘です。
髪の毛は好きだけど、銀時に会う口実です。

こうして毎日万事屋に足を運んでは銀時の髪の毛を触っている私。
残念ながら、付き合ってません。
いやあ、万が一告白して振られたら今後こうやって触ることもできなくなるし…

はい、びびってます。
銀時はこうして隣にいることを許してはくれているけど、うーーーん私のことをそういう意味で好きだとは思えない。
だって今だってこんなに近くにいるのに、石鹸の香水をつけて、ちょっぴり肌見せの多い服を着て密着してるのに。
顔色一つ変えずにジャンプから目を離さない。

脈なし。
だから告わないの。

「銀時〜」
「なんだよ」
「銀時と私の子供ができたら、髪の毛ストレートだと思う?それとも天パ?」
「…は?」

ほんとに他意はなかった。
結婚を迫ってるわけでも誘っているわけでもなく、純粋にどっちが優勢遺伝子なのかっていう雑談をしたかっただけ。
ただ銀時は楽しい雑談とは捉えてくれなかったみたいで、ジャンプを床に落とし、唸るような低い声で返事をしながらこっちを見る。

「え、何、そんな睨まないでよ。気を悪くさせたならごめんて」
「いやおまえ…」

何。怖いんだけど。すごい形相でこっちを見つめてくる銀時。
ただただ怖い。いつもの死んだ魚の目に戻ってくれないかな。

「はい目を閉じて〜深呼吸。吸ってー吐いてー。」

そういいながら銀時の目を手で覆って無理やり視界を暗くさせる。
手の下で、銀時が目を閉じるのを感じた。
よし、落ち着いたかな。

「…じゃあ、試してみるか。」
「…は?」

今度はこっちが驚く番。
目を覆っていた私の手を一瞬で掴んで頭の上にまとめ、肩を押してソファに倒す銀時。
ゆっくりと開いた目は、獣のそれと酷似している。


「…ん?これどういう状況?」
「お前が下手な誘い文句言うからだろ。」
「いやいやいや誘ってないですね。断じて。」
「お前そりゃねーだろ。こっちはいつになったら告ってくれんのか今か今かと待ってたのに」
「告…?え、待って、え?」
「銀さんがお前の熱視線に気づかないわけないだろ?」
「〜〜!!!!」

ぼっと顔がほてるのがわかる。
気づかれてた…気づかれて、告白され待ちだったのか…!

「そしたら急に子供が欲しいなんて言うからお前、据え膳はちゃんといただかないとなあ」
「ち、ちが、違う!!!子供ができたらどんな子かな!って!!!」
「ほら、想像したんだろ?ほしいんだろ?」
「うっ、いや、でもまだ早いっていうか…」
「お前に合わせてたら十年たっても関係が進展しねーわ。もうわかった。銀さんが進めてやるしかねーなこれ」
「〜〜銀時!!」

自らの着流しに手をかけた銀時。
手首を拘束する手が離れたから逃げようと思ったけど跨る銀時が重くって動けない。
だからあえて近づく。
銀時の頭を思いっきり抱きしめる。

「…え?何?サービス?」
「違うわ!!!…ちゃんと、私が進展させるから待って。聞いて」

聞いてって言ったらちゃんと手を止めて大人しくなってくれる銀時。
今この状況を打破する方法がそれしか思いつかない。
きっと押し付けた胸から心拍音は聞こえているんだろう。バックバクだと思う。
ばれてるのにいう意味って?とも思うけど、でも、なあなあな状態で先に進みたくないから。

「…私は、銀時が、好き。…私と付き合ってください。」
「…おー」

しばらく沈黙が流れるリビング。
私はまだ気持ちが通じ合った実感がわかなくて、ぼんやりと天井を眺めている。
そしたら、不意にごそごそとお腹周りをまさぐられる。

「…何してるの?」
「何ってそりゃ…付き合ってる男女がすることといえば一つだろ。」
「ま、待って!!!」
「え?何?まだなんかある?」
「…私が、進展させた。」
「?…ああ、そうだな。」
「だから、この先も私が進める!今日はもうここまで!」
「は!?おま、…はあ!?!?」



一歩先に、進みましょう

…ちなみに、次のステップはいつ頃進めそうですか。
そうですね…半年後くらいでしょうか
なげーーよ!!!!!!!




2020/07/22〜2020/08/23
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