キイィィンと白い機体が尾を引いて、遥か頭上を追い越していく。抜けるような青空と巨大な入道雲。僕らの頭上。
 あァ、何て天気がいいのだろうか!

「きっもち、いィー!」

 僕はふたりの貯金を出し合って買った中古のオープンカーで、ハイウェイをぶっ飛ばしながら、隣の彼に向かって叫ぶ。

「ねえ、見て見てー! 空がめちゃくちゃでっかいー!」
「こら、おま、前見て運転しろよ! 今何キロ出てると思ってんだ! 馬鹿!」

 そんなふうに怒鳴りながらも、きみは笑っていて、風にぐしゃぐしゃに乱される髪を適当にかきあげた。スーツのジャケットを脱ぎ、ついでにタイも抜き取って風に流す。タイは猛烈な勢いで後方へ飛んでいった。

「あー、勿体ないことしてー!」
「はァ!? 聞こえねえ!」

 すさまじい風音と激しくシャツのはためく音でお互いの声が掻き消される。

「きみのこと好きだよーって言ったのー! 聞こえなかったー!?」
「バーカ! そんなもん、聞こえてたまるかよ!」

 眉を寄せ目を細めてくしゃりと笑う。きみのこんな笑顔を見るのは初めてかも知れない、と僕は急いでこころのシャッターを幾度も切った。

「ねー! さっきのヒコーキさァ、追っかけちゃうー!?」
「ならもっと全速でぶっ飛ばしやがれ!」
「イエー! このままふたりでアメリカまで行っちゃえー!」
「はっ、ぜってえ途中で止まるんじゃねえぞ!」
「あっはっはー! 聞こえないから無理ー!」

 脳裏に広大な無人の大地とその中央を真っ直ぐに貫く輝くような道が浮かんだ。その上をひた走るこの真っ赤なオープンカー! 超格好よくない!?

「悪くねえなアメリカ!」
「きみといっしょならどこだって僕はサイコー!」
「くっせえ台詞吐くんじゃねえよ! 耳が腐る!」
「だったら腐るまで言っちゃう! 僕たちの前に道は無く、僕たちの後にも道はなーい!」
「は! どんなモンスターだ、俺ら!」

 そうだよ、僕たちは化け物みたいなものだ。世界で1番勝手な流れ星とペテン師だ。最強に最凶で、最高な組み合わせだと思わない?
 きみとなら、たとえ堕ちてもきっと天にでも昇るような気持ちがする。傲慢も偽善も嘘も涙もどんと来いだよ! だってきみはふたつとない!

「ねえ! きみ、僕のこと愛してるでしょー!?」
「バァーッカ!」

 日本からアメリカまでは地続きじゃあ無いけれど。さあて、行こうか! このまま海にダイブしちゃったって、何か全然死ぬ気がしない。行く先がどこであろうとも僕ときみとならきっとどこへでも飛んで行けそう! アメリカンドリーム、僕はきみのことだけ愛してるよ!

(いま世界で1番僕らはハッピー!)
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