<概略>
モブショタエレからの英雄リヴァイさんでリヴァ→エレ/2回言うけどショタ/殺伐/非合法ドラッグ/りばいさんのソロ有り/






   


 リヴァイは知らなかったのだ。ただ、ただ、知らなかっただけだったのだ。
 正義感が強いだの熱血漢だのとは無縁の生活を送ってきたリヴァイが、何の因果か調査兵団の、それも、兵士長、と云う肩書きを似合いもせずに拝命したことがあってか、最近自分の性格に変化が起きてきたような気がしなくも無い。相手が健気な弱い者であれど自己防衛さえ出来ぬおまえが悪い、とずっと思ってきたのに、いつの間にか、見て見ぬふりというやつが出来なくなったのだ。最早それは性分となり、たぶん神さまだって──リヴァイは当然ウォール教など信じていないけれど──そういう隠されていた優しさのようなものを見越し『人類最強』なぞと云う称号を賜わる異常に高度な身体能力を授けたに違いない。兎に角そういう性格や職業意識なんぞも相俟って、今回はエルヴィンに地下街のパトロールを頼まれたのだが、ひと通り見てまわってもリヴァイが居た頃と大差無い──寧ろ悪化している有り様に辟易し、呑まなきゃやってられねえと適当な酒屋で黒ビールを呑んでいた。溜め息が出る。盛り場にある店のカウンターで、どう見てもガラの悪そうな輩が、どう多めに見積もっても10歳未満の子供に絡んでいるのを、リヴァイは物凄くやきもきしながらちらちらと見続けていた。もう否定の余地はどこにも無い程に、完全に完璧に男たちは淫行目的だ。それは判る。だが、子供のほうに然程嫌がっている素振りも無いので、それにかこつけて割って入ることも出来ず、つまり何も出来ず、リヴァイはうんざりしながら1人で呑み続けていることしか出来ない。溜め息は、無力さと同じだけ吐き出される。そうやってリヴァイが無駄な感傷に浸っていても事態が好転するわけでも無く、もしかすると彼らがただの家族、或いは親戚等の関係である絶望的に低い可能性にかけてすごすごと退散するしかないか、と諦めかけていたところで、ふとリヴァイは男たちのうち1人の手元の動作に気が付いた。子供から最も遠い席に座っている男、そいつが何やらごそごと手を動かしていたかと思うと、それはどうやら錠剤のようなものを手近にあった灰皿の裏ですり潰す動作のようで、そして粉末状になったそれをさらさらと酒のグラスに入れる。軽く揺すられて粉が拡販された酒は、子供の口許へ。幾ら何でも──あれは幾ら何でも、同意の上、と云うことにはしておけない。ドラッグをやりとりするだけなら態々誰かに見られるかもしれないリスクを冒す必要など無く、トイレでもどこででも、こっそりと落ち合ってそこで受け渡しすれば良いのだ。そのグラスが空けられてから少し経って、男たちは誰からともなく立ち上がると、あーあ、すっかり潰れちゃって、とか何とか態とらしい台詞をにやけ顔で発し、子供を連れて店を出て行った。リヴァイは、自分の手元の酒の残りをほんの少しだけ舐めてから、オーナーに酒代を払い席を立った。
 背後を気にする様子も無い人間のあとを、気付かれぬようにつけていくのは容易い。男たちが入っていったのは、繁華街から道を1本入ったところにある、ごく安い一般的なモーテルだった。別にポルノグラフィによく登場するような界隈でも無い。そのモーテルも、一泊寝るだけの素泊まり客が多く、セキュリティが確りしているわけでも無い代わりに、客のほうにも詳細な身分証明は求められない。リヴァイは少し待ってから、如何にも今夜の宿でも探しているようなふりをしながら、フロントに入った。廊下を進んでいこうとする男たちは後ろを振り返ることも無い。だからリヴァイは部屋を探しているそぶりで堂々とついて行く。子供は時折足取りをふらつかせ、男たちに腕を取られ引き摺られるようにして並ぶ部屋の1室に消えた。また溜め息が出る。嫌な世の中だ。それでなくとも地下街は特別治安が良くない。そのことは充分過ぎる程度には既知していたが、成る程、エルヴィンが管轄外と云えどリヴァイの見廻りを必要とするわけだ。
 少しだけ間を置いてからリヴァイは深呼吸をして、そして、部屋のドアの真正面に立つと、ドンドンと無遠慮に拳を打ち付けた。フロントです、と随分適当なことを言っていると、唐突にドアが開かれる。

「何の用だ」

 応対に出てきた男の奥にはすぐに部屋が広がっているが、奥に置いてあるベッドの様子はバスルームの配置のせいでよく見えなかった。漏れ聞こえてくるのは男たちの笑い声で、未だに合意の上の行為ではないという証拠は得ていないリヴァイが、分が悪いのは確かで、若干、眉を顰めてしまう。だがそこで、切れ切れで舌っ足らずの小さな声を耳が拾った。やめろ、さわるな、ころしてやる、と。そっと拳を握ったリヴァイを見て、目の前の男が警戒心も露わに眉を顰める。

「なんだよ、てめえ」
「……ただの通りすがりの兵士だが」
「あ?」

 男が何か反応してくる前に、リヴァイは男の顎にまわし蹴りを叩き込んだ。ぐへっ、と呻き声を上げながら、その躰が後ろ向きにぶっ倒れる。リヴァイはドアを後ろ手に閉め素早く部屋のなかへ歩み進んだ。1人の腰を打って床にひれ伏させ、もう1人の首を掴み上げて鳩尾に拳を沈めて、子供の上からひっぺがす。全行程を引っ括めても30秒もかからなかったのでは無いだろうか。一瞬だけいきり立ちかけた男は、仲間の2人が既に床に倒れ伏していること、そして自分の腹が盛大に痛んでいることから、すぐにそれを諦めたようだった。苦痛に歪んだ顔でひゅうひゅうと息を吐き出しながら言う。

「てめえ……もしかして、調査兵団の、リ…リヴァ……っ」
「そうだ。何だ知っているのか。だったら無駄な抵抗はやめといたほうが吉だ。なァ、そうだろ?」
「な、何で俺たちに、」
「無視出来ねえことを俺に見付かるから悪ィんだろうが」

 こういうのだ、と言いつつ、ベッドに顔を向けると、子供は驚いたようにこちらへ顔を向けていたが、その焦点はいまいち合っていないし、膝と腕も小さく震わせているだけで、自力で起き上がることすら出来ていないようだった。下半身はズボンも下着も脱がされ、上もシャツを胸まで捲り上げられて脚を開かされている格好でのそんな反応を目の当たりにすると、勝手に眉間にちからが入ってしまう。

「明らかにガキにヤバいもん飲ませてんじゃねえか」

 男に視線を戻すと、床に崩れ落ちている男が、ちら、とリヴァイの前の男のほうへと視線を動かした。それを見逃さず、締め上げている男のジャケットの内ポケットに手を突っ込む。勘弁してくれ、と泣きごとを言われたが、こんなことをやらかしておいて白々しいにも程が有る。果たして、男のポケットから出てきたのは、小瓶に数粒入った白い錠剤だった。

「たっ、頼むから、勘弁…してくれよォ……」
「あァ? そんなこと、どのツラ下げて言ってんだ」
「やべえんだって、クスリ横流ししてるって上の人にバレたら……」

 片手でつまみ上げた小瓶を眺めてから、リヴァイははァ、とこれ見よがしにもう何度目か判らぬ溜め息をついた。びくり、と男が肩をすくめる。その躰を蹴り飛ばして、リヴァイはなるべく重苦しい口調で告げた。

「……今すぐここで俺に殺されるか、ヤサに帰ってその『上の人』とやらに殺されねえよう言い訳するか、好きなほうを選べ」

 慌てて立ち上がり、片足を引き摺ったりしながら背を向けて足早に去っていく2人の男に、玄関でのびてる奴も回収していけよ、と、声をかけて、リヴァイは改めてベッドに向き直った。何とか脚を閉じ、上のほうに摺り上がって身を縮めている子供に、注意深く手を伸ばす。

「あ……、あ………ッ」
「もう大丈夫だ。安心しろ。俺はあいつらの仲間じゃあねえ」

 ふ、と苦しそうに息を吐いて、俯いた子供の横顔は、男たちがこんなところに連れ込んできただけあって確かに出来の良い顔をしていた。小さな顔に大きな金色の瞳で、派手さを表す長い睫毛が影を落として整っている。身なりは一見質素だが小綺麗な子供だ。そういう関係でこんな時間に地下街をうろつくことになってしまったのかも知れない、と思いつつ、その肩を掴んで胸に抱くようにして立ち上がらせた。

「ぅあっ、あ、おっ…おれ……っ」
「大丈夫だから落ち付け。気分が悪いだろうが、少しばかり我慢しろよ」

 バスルームに連れて行き、細い躰を便器の前にしゃがみこませる。片手で胃のあたりを支えて、空いた片手をその喉の奥に突っ込む前に、小声で一応注意した。

「辛抱しろよ」
「……っ!? ぅえ゛ぇ……っぅぐ、っ」

 えづく唇から、ビチャビチャと少量の固形物が混じった吐瀉物が吐き出される。指が思い切り汚れたがそんなことを気にしていてもどうしようも無い。子供は、生理的な涙がたっぷり溜まった蜂蜜のような双眸を、ふらふらとリヴァイへと向けた。

「す、みま゛、せ、」
「いや、いいから出せ」
「う、え゛っ……げほっ、ッ!」

 再度指を濡れた舌の奥まで飲み込ませ、腹に当てた手のひらで鳩尾を強く押さえる。有る程度腹のなかのものを吐き出させたところで、濁った液体を端から垂らしながら荒く息を吐く口許を、洗面台で濡らしたタオルで拭ってやり、部屋に連れ戻した。だが、その僅かな距離を歩いているだけで、がく、と崩れ落ちそうになる膝はどうしてやることも出来ず、慎重にベッドに腰かけさせるしか無い。リヴァイはテーブルにあったグラスをすすぎ水道水を並々とつぐと、ちから無く座り込んでいる子供の目前に差し出してみる。

「自分で飲めるか?」

 伸ばそうとした己の細腕を支え切れず、ベッドに倒れ込みかけた子供の躰をリヴァイは急いで支えた。自分もベッドに座って、その軽い躰を抱え直す。つらそうに眉根を寄せて、すみません、と吐息で呟く唇に、グラスの飲み口を当てた。首の後ろを手のひらで支え、ゆっくりとグラスを傾ける。項に指が触れたとき、子供はうんん、と眉を顰め呻いたが、一応、喉元をゆるゆると水が下っていくのを確かめることが出来た。ただ、唇が閉じ切れない様子で、胸元がだらだらと濡れてしまう。

「っん、……っは、ぁ、……んっ」
「大丈夫か? ……と言っても、見りゃあ解るがな」

 子供は腕を上げることも出来ず、呆けたような瞳を向けてくるのにその痩身は異常に熱い。リヴァイはグラスを置いて、子供の濡れた口許を拭ってやりながら、どうしたものか、と考える。

「親か……通報して保護、か」

 だがもしも親がやって来て、自分の息子のこんな姿を見れば卒倒するに違いないし、こんな様子の子供から連絡先を聞き出すことは、不可能に近いように思えた。結局、まずはこのまま調査兵団の宿舎まで持って帰り保護してやるのが手っ取り早いのかも知れない。しかし、リヴァイの呟きを聞いた途端、子供がはっとする程つよい光を浮かべて視線を上げた。

「ッま、まって……っ」
「こら、おい、落ち着け」
「や、ま、…ってくださ、お、ねが……か、ぞく、に…おれ、こ、んな、しられたく、な……っ」

 小さく震える細腕で、辛うじてリヴァイに縋り付いて、懇願する調子で口を動かす。うまく呂律のまわっていないその口調からでは、理由までは理解できなかったが、まァ、当然のことながら保護者を呼び出したり兵団の世話になれる程度の事情であるなら、この歳の子供がこんな時間にひとりでうろついていないだろう。

「解った。通報もしねえし、おまえの親の連絡先も聞かねえ。ひとまず誰にも言わん。だから落ち着け。大丈夫だ」
「……っ、みま、せ……」

 興奮した感情を抑え込むように吐息を飲み込んだ子供の、目尻からつうっと涙が零れた。はあ、はあ、と断続的に吐き出される、浅く速い淫らな呼吸に、子供は自分でも混乱しているようで、思い通りにならない躰を持て余しているような瞳が宙を泳ぐ。リヴァイのシャツを掴んだ指が、びくびくと痙攣するのを目に止めて、吐き出したくなる溜め息を押さえ込むのにかなり苦慮した。今も子供は下肢には何も纏っていないし、硬く勃起しきっているのも先程から目に入っていた。そして、自分の衝動をうまく把握出来ていないどころかいっそ初めてだろう性衝動の感覚に、子供自身よりも、殆ど物欲しげなその表情が何を求めているのかも、大人であるリヴァイのほうが解っている。ただ、このろくでも無い状況を生み出した理由の一端はあれど、こんな幼い子供に、自己責任の義務も、責任能力も、有る筈が無い。自分の性欲の管理もままならない相手に、これ以上溜め息を聞かせるのは流石にリヴァイも気が引けた。

「は、ぁっ……」
「……仕方ねえ、か」
「あ、っあ、おれ、」
「あァ、だから、大丈夫だ。興奮するな。…その苦しさは、おまえのせいじゃあねえんだ」
「え、……あ、…?」

 後頭部を抱えるようにして、子供の額をリヴァイは自身の胸元に押し付ける。状況を把握出来きていないまま、それでも素直に体重を預けてきた小さな躰を腕のなかに抱き込むようにして、やんわりと脚を開かせた。その中心に手を伸ばすと、反射的に驚愕の声が上がる。

「っあ!? ぁ、だ、だめっ、だめで、す、」
「暴れるんじゃあねえ。大丈夫だ」
「ひっぅ、ぁあっ、あ、ひやぁ……っ」

 既に先走りを垂らしている子供のペニスを軽く握り、様子を伺いつつもリヴァイは強引に扱く。最初のうち聞こえていたのは悲鳴だけだったが、簡単に押さえ込める躰を抱き込んで、先端をきつめに擦ってやると堪らないとばかりに子供の花びらのような唇から甘い声が漏れた。全身を震わせ、リヴァイの躰に擦り寄るようにして、呆気なく射精する。どろりと粘ついた精液を受け止める、が、リヴァイのその手のひらのなかで、兆したものは硬さを失っていない。そろそろと瞼を開けた子供は、顔を背けて小さく啜り泣いた。大丈夫だ、と言い聞かせるために何度も繰り返し、手を拭おうと躰を捩る。そんなリヴァイのその動作に、なぜかびくりと子供が反応した。

「んん……っ!」
「どうした?」
「あ、っ、……はぅ、はあっ……、な、なんか……、……っ」

 見れば、潤んだ瞳には、さっきまでとは比べ物にならぬ程の大粒の涙が幾つも盛り上がっては零れていた。理由が解らず頬に触れようとすると、子供は恐慌を来したかのようにリヴァイの指を避けて、けれど、矢張り躰にちからは入らないらしく、リヴァイに額を押し付けてくる。その一連の、おそらくは無意識の行動の途中、もぞもぞと気持ち悪そうに腰を揺らめかせているので、リヴァイはなるべくゆっくり──陰部のほうへ、もう1度手を伸ばした。子供の尻のほうが、ベタベタと精液以外のもので濡れている。思わず顔を顰めた。後ろに触れられて上がった子供の悲鳴に、喜悦の色が滲んでいることにも自然気付いてしまう。スプリングが軋む粗悪なベッドのサイドテーブルに目を向けてみると、パッケージにラベルの無い、得体の知れぬ小瓶に、ほんの少しの軟膏薬を残した容器が転がっていた。あの男たちは、完璧な常習犯だったと云うわけだ。あとであれを回収して持ち帰ったほうが良いかも知れない、とリヴァイは頭の隅で考えるが、それよりも重要なのは、いま目の前でひっきりなしに涙を流しながら、制御出来ない感覚に喘ぎまくっている子供のほうだ。

「おい、ガキ。痛いとか、痒いとか、そういうことは無いか」
「わ、わからな……っ、からだの、なかっ、が、あ、あつくて……ッ」
「熱くて?」
「くる、しい…っ、あっあ、……たすけ、て……っ」

 もうこれはあれだ、無心になるしか無い、と決意して、なるべくも何も常の無表情が崩れぬよう心掛けながら、抜いたスカーフを用いて表面の液体を拭い取ってやったあと、子供のなかに指を突っ込んだ。にゅる、と何の抵抗も無くそれを受け入れた小さな体内は、外側と同じようにぬかるんでいる。この部屋のドアを叩く前、もたもたしていないでせめてこんなわけの解らぬ薬を塗りたくられる前に無理矢理にでも部屋に押し入ってしまえば良かった、と云う後悔がリヴァイの頭をよぎるが、実際のところ今現在は、それどころではなかったりもする。

「うっあ! ひ、あぁっ! ……っ、んぅん、んっ…!」

 リヴァイが少し指の角度を変える度に腰を跳ねさせ、快感を享受するのでいっぱいいっぱいらしい子供は、もうほんとうに躰にちからを入れていられないらしく、それまで握り締めていたリヴァイのシャツから、腕をずるずると落として、リヴァイの腕に纏わりつかせた。唇は開きっ放し、悦がりっ放しで、薄皮を剥いだ桃のような上等な頬が幼くもてらてらと光っているのが、涙のせいなのか涎のせいなのか判別が出来ない。ずぶ、と奥のほうまで指を挿入し、軽く出し入れしてやると、ぞくぞくと過ぎる刺激にのけぞるようにして喘いでみせる。

「ぅあ……あっ、ああぁっ、も、もっと……」
「どうして欲しい?」
「もっと、おく、に……っぁ、く、ほ、しい……っ」
 
 腰をくねらせるような動きで悦いところに指を自分で擦り付けながら、表情はひどくあどけないままで無体を強請る。リヴァイは指を増やし、なかで動かしてみたが、ぐちゅぐちゅと卑猥な音を立てるその動きに、子供は物足りなげに涙を零すだけだった。勘弁しろよ、と頭のなかだけで呟いて、リヴァイは天井を仰いだ。別段リヴァイにはその気があるわけでは無い。決して無い、が、我先に、と、魁た娼婦にも、貴族の姫君にも劣らぬ美しい顔と躰付きの、おそらくはこういう子供を美少年と呼ぶのであろう、と無用な納得をしてしまうような子供が自分の目の前でぐちゃぐちゃになって、哀願してきているのだ。正直に言って、リヴァイのほうもほぼ完全に勃ち上がっていた。白い柔肌を赤く染めて強請る痴態はあまりに背徳的で、もう結構限界に近く、しかも今の状況はリヴァイから望んでのものでは無い、という──狡く完璧な大義名分がある。リヴァイはそうっと子供の躰をシーツに横たえて、指を引き抜いた。

「ぁ……」

 ──と、ぼんやり呟いた子供は、リヴァイが自分のペニスを取り出し、脚を割り開いてくるのを見てこくりと小さく息を飲む。

「……つらかったら、言えよ」
「んんんんっ……っぅ、あ、あっ……あぁ…あ、あ、ああっ」

 挿入は驚く程にスムーズで、すぐに甘い喘ぎ声が上がった。とろんとした蜂蜜色の目には、どこまでも苦痛の色は見当たらない。その瞳がまっすぐこっちを見返してくると、胸の内に沸き上がるのは途方もない罪悪感だけで、リヴァイはそっと手のひらで子供の瞼を覆った。そのままゆっくりとリズミカルに腰を突き上げる。嬌声を上げながらも、リヴァイの手のひらに触れるのはとめどなく溢れてくる水分ばかりだった。リヴァイは自身がどうしていたいのか、自分でもまるで理解出来ない。アルコール漬けにされ、おかしな薬を使われて苦しんでいたとしても、こんなにも幼く無垢な子供の、やわらかな肢体に興奮し、それで人助けのつもりになるなど傲慢に過ぎる。これではあの不埒な男たちと差して変わらぬのではなかろうか。

「ぁ……っふ、あぁ、ぅあっ……!」
「大丈夫か? 苦しいのか」
「っぁア、あっ、あ、きもち、い……っ」

 殆どやけくそで、子供のなかを抉るようにリヴァイの性器を飲み込ませると呆れる程に白い内腿がひくひくと痙攣し、て、ぎゅっとなかのものが締め付けられた。腹に近いほうを擦られると悦さそうな声ばかり出すので、それを狙って何度も抽挿をしてやると、顎を反らして身悶えする。いつの間にか子供は、精液よりももっと色の薄い、ねばつかない液体を先端からとろとろと垂らしていた。
 目隠しをしていた手のひらを取り払う。子供のペニスを握ってやり、腰も打ち付けながら軽く刺激してやると、子供は中空を見つめていた瞳をぎゅっと閉ざして、泣いているような声で喘ぎ、リヴァイの手のひらを白く汚した。リヴァイは子供のなかに挿れていた自身のペニスを引き抜いて、そのまま擦って自分で達した後、流石に小さく溜め息をつきながら後始末をする。ふと、ゆるく焦点を合わせてこっちを見つめる子供の唇が、また謝罪の言葉を紡ぎそうだったので、

「大丈夫だ」

 と、たぶん子供にとってはまったく大丈夫では無いだろう慰めの言葉を吐いた。
 行為を終えるとリヴァイは子供に浴びる程水を飲ませて、小1時間もまどろませていると子供はふらつきながらも何とか自力で着衣し歩ける程度にまでは回復した。その間に何とか聞き出せたことは幾つか有って、どうやらこの子供の父親は王都にまで呼ばれる名医であり、ふたりはシガンシナから遠征してきたのだが、途中ではぐれてしまい、気付けばエレン──この子供の名らしい──は先程のゴロツキに後ろからハンカチを顔に押し付けられて気を失い──ハンカチにはクロロフォルムでも染み込ませてあったのだろう。気付けばあの酒場に連れ込まれていた、ということであった。迷子になった際の待ち合わせ場所が市場近くの噴水だと云うので、そこまで送ろう、とリヴァイが提案するが、エレンは、それを断る様子で取り敢えず地上に連れて行ってはくれまいかと嘆願する。とは言えど、すみませんでした、ちじょうにでられさえすればもうかえれます、ありがとうございました、とふらついた足取りで言われても、はいそうですかと頷けるものでは無かったが、ではどうするつもりなのかと問われれば確かにリヴァイに出来ることはもう無い。少なくとも噴水までは送らせろ、と言ってはみたものの父親とリヴァイを遭わせてはもうはぐらかせなくなると言われてしまい、結局、地上の王都に有る市場のはずれまでで、頑なにそれ以上の同行をさせてくれようとしないエレンと言葉少なに別れるはめになる。リヴァイはいろいろと複雑な気持ちでいっぱいだったのだが、エレンのほうはと言えば、何だかんだ殆どさばさばしていると云うか、まるでつらそうな様子が見受けられなくて、それが逆に気になった。何しろ今夜は、随分と酷い目にあった晩のはずだろうのに。

「……ありがとう、ございました」

 別れ際にそう言われてリヴァイは瞠目する。

「エレン。おまえには、俺を罵っても赦される権利があると思うんだが」
「あなたが、……だいじょうぶだってなんどもいってくれていなかったら、おれは、だいじょうぶじゃあなかったです。たぶん」
「…………」

 リヴァイが何も言えないでいるうちに、エレンはふいと顔を背けて歩き出してしまい、それを追えないリヴァイはその小さな背中を見送ることしか出来ず、すぐに角を曲がってしまったエレンとはそれきりだった。それきりだったから、リヴァイは、エレンに薬を飲ませた男たちがエレンのことを待ち伏せており、リヴァイと別れた直後ひとけのない路地でエレンが散々に輪姦されたことも知らなかったし、それから幾度も似たような目に合い、開拓地に居た頃には自ら躰を差し出したりして、そしてそうしてまで得ようとした結果のすべてが徒労に終わっていったことも知らなかった。
 リヴァイは何も知らないままだった。知らないままだった、し、リヴァイがエレンに出来たことはひどく少なく、それは、大丈夫だ、と根拠もなく無責任に決めつけることくらいのものなのだ。知らなかったし何も出来なかった。例えば、大丈夫、必ず人間の本質が深淵で有ること以外を知ることが出来る、おまえが夢を失わぬうちは、と言うことくらいでしか、張り詰めている気持ちを和らげてやろうとすることが出来ない。未だにそうだ。あれからほんの数年のうちに超大型巨人が壁を壊したり──エレンが本人すら預かり知らぬところで巨人化してしまったり、様々な事件が起きた。それでもリヴァイを慕い英雄視してくるエレンの、何と罪深く無邪気なことか。

「兵長」
「何だ?」
「俺は今日、大丈夫でしたか? 明日も、大丈夫ですか?」

 地下室でベッドに横になり、リヴァイを見上げ訊いてくる。その髪を指で梳いてやればくすぐったそうに小さく咲う。ひまわりのような笑みだった。

「ああ、明日も明後日も明明後日もその先も、おまえはずっとずっと大丈夫だ。エレン」

 寝付く前に必ず尋ねてくるエレンに繰り返す。リヴァイの手がエレンの頭を優しく撫でた。そうするとエレンは嬉しそうにくすくす咲うのだった。兵長に頭撫でられると安心します、などと言っては強請る。

「兵長はいつも、鬼みたいに強いけれどほんとうは誰より優しい。そんなきれいな手をしてる」
「…………そうか」
「はい」
「眠れそうか。明日も早い」
「兵長…手を、握ってください」

 言われた通りにすれば、ふにゃりと表情を破顔させる。この手が好きだとエレンは言う。この手が、優しい、のだと。リヴァイは自身の手なぞきれいだとも優しいとも思ったことは一切無いが、エレンが咲うならそれで良い。すうすうと健やかな寝息をたてるまで握られていた手を、エレンを起こさぬよう慎重に抜いて、リヴァイは鉄格子に施錠をする。エレンが少しでも安らかであるように、そう祈りながら。それらは断じて嘘では無い。嘘では無かったが。地下室は寒かった。でもエレンの手は、とてもあたたかだった。
 自室に戻ったリヴァイは、後ろ手に扉を閉めてから施錠しひとりきりになる。エレンの声を、笑みを、姿形を思い起こす。違和感の拭えぬ己の下肢に手を伸ばせば、そこは盛り上がっており窮屈だった。ベッドに腰掛け前をくつろげれば予想通りにリヴァイのペニスは勃っていて、赤黒く変色している。リヴァイはついさっきエレンに優しいと言われきれいだとも言われ繋いでやった手を、執拗にねぶる。唾液で濡れた手のひらで、ペニスを扱くと簡単に先走りの透明な液体が先端より溢れてきた。優越と背徳心は最早起爆剤にしかならぬ。エレンの寝顔を思い出す。エレンの笑顔を思い出す。声を。初めて逢ったあの頃はまだ声変わりもしていなかったのに。エレン、エレン、エレン、エレン──。少年の名前だけがリヴァイのなか、飽和する。何れだけの絶望をその身に背負っていても、一縷の希望も手放さない。救えなかった子供の声がする。今も救ってやれない声が。

「あ、っ、……はぅ、はあっ……、な、なんか……、……っ」
「わ、わからな……っ、からだの、なかっ、が、あ、あつくて……ッ」
「くる、しい…っ、あっあ、……たすけ、て……っ」
「うっあ! ひ、あぁっ! ……っ、んぅん、んっ…!」
「ぅあ……あっ、ああぁっ、も、もっと……」
「もっと、おく、に……っぁ、く、ほ、しい……っ」
「んんんんっ……っぅ、あ、あっ……あぁ…あ、あ、ああっ」
「ぁ……っふ、あぁ、ぅあっ……!」
「っぁア、あっ、あ、きもち、い……っ」

 子供の頃のエレンの声と、有りもしない現在のエレンの嬌声と。今だってエレンはまだ子供だ。それを利用し獰猛で可愛いペットを飼っている。もう何もかも、頭がおかしくなりそうだ。自然に上がるリヴァイの吐息。どんどんとスピードを増す手のひらに、ぐちゃぐちゃと音が響きリヴァイは得も言われぬ恍惚な気分に落ちていく。

「はっ……、ぁ」

 堪らず声が出た。
 妄想のなか、リヴァイの手は、エレンの頭と言わず手だけと言わず、余すところ無く全部を知りたい。おまえを、好きだ、と言えたら何れ程楽だろうか。決して言えないから想いばかりが募るのか。こんな穢らわしい行為を、エレンで夢想するなぞ手酷い裏切りにも程がある。侮蔑の視線を投げ掛けられて、むやみに怯えさせるくらいならば、感情なんか要らないとまで思う。しかしいつかは隠し通せなくなるだろう。リヴァイはエレンの双眸が好きだ。憎しみにぎらぎらと澱むとき、普段のきらきらした笑みに光るとき、その両方を持っているエレンの、あの正直且つ真っ直ぐな蜂蜜色にリヴァイが映りこむとき。リヴァイはいつも冷やりとする。

「ふ、っ……エ、レン……ッ」

 未発達な少年のすべてが知りたい。
 だってリヴァイは知らなかったのだ。ただ、ただ、知らなかっただけだったのだ。
 出る、と思った瞬間には既に遅かった。リヴァイの精液がぱた、た、と床を汚した。こんなものが──こんな欲望からくるものが、エレンのなかに入るなんて何とおぞましい。夢想したエレンの痴態はリヴァイの想像でしか無い。何せあの頃は状況が今と違い過ぎた。ただ、それでも自分は救われたのだ、と、リヴァイは自分にとって誰よりも頼れるヒーローなのだ、と、エレンは信じ、そしてそれを聞いているリヴァイのほうが、もっと、ずっと、複雑な気持ちで、泣きたいような気分になる。特に、こんな、虚しい夜には大抵いつも。だから、幻にキスをする。
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