コレの続き
(途中からお読みになる方はあまりいらっしゃらないとは思いますが<概略>は前編のほうに記載してあるので未読の方はそちらをご一読の上お願いします)


   

 だってどいつもこいつも何もかも。我慢ならない程に穢らわしい。ヒトは──人類は、穢らわしさでできている。きれいなものも、可愛いものも、甘くて美味しいものも、掻き乱されてさえうつくしいものも、この世界ではエレンだけなのだ。何れ程穢らわしい生き物によって穢されようと、あたたかな陽だまりのような光で内包して、だから決して穢れない。エレンだけがいればよい。世界はそういうもので秘密裏に構成されている。成る程それはミカサの妄言通り。
 エレンが──世界だ。

「あぁああっ、ひっいあっ、……────っ! ────っ!」

 まるで我を忘れたかのようなエレンの、苦悶と悦楽にのたうつ姿は惟れば惟る程とてもかわいそうで、いじらしい。けれど、そのあとに続けられた、掠れて嗄れて引き攣った、喉で、叫び助けを乞うような聞き取りにくいそれは、間違いようもなく、エレンには誰より大切な、少女たちにはどうあってもゆるしたくも聞きたくもない、ただひとりの──あの男の──名であった。たかだか不愉快だとか不快だとか、そんな程度のことではない。少女たちにとってそれはそれはもう、ひどい気持ちの悪さに陥るもの。おさえてきた殺意にすらもおさまらない。

 あの、クソ野郎。
 早い者勝ちのように、エレンを、食べた。

 なのにその名を呼び続ける。ここには最早辿りつけもしない男の名を階級を。何をもってしての最強だ。エレンひとり護れないただの咎人であるくせに臆面もなく、ここに存在せずとも容易くエレンを掻っ攫う。世界はどうあっても罪深く、暗流の渦中で溢れ零れるひとつひとつを壊悪を正さず寧ろ敢えて落としてゆく。そう──ならば──もう。諦めを無視する少女たちは欲しがるだけだ、光がなくても生きていける、人間としてのいい加減さを。ヒストリアとミカサがどれだけ救いだしたくとも救うどころか掬いあげられもしないそれが世界であるのであれば。
 あたかも──泣いている愛し子をあやすように慈悲を込め伸ばした腕、に、思いきり噛みつかれた、ような、そんな気分だった。
 こんなにすきなのにこんなに愛しているのにこんなにも必要としているのに、だがほんとうは理解していた。先にエレンの信頼を裏切ったのは少女たちのほうだった。知っていた、わかりきっていた。所詮、裏切りには裏切りしか返らない。翼もなく翔んだ記憶も生きることを否定した記憶も全部消えてしまえばよいのだと、わかっていてもそれができないのであれば。

((だけど光がなくても生きていけるなら、もう人間なんかやめてしまったっていいんじゃないの))
((あなたがすぐ誰にでも咲うから、手持ちのカードが尽きたテーブルゲームに負け続ける))

 世界と自分の自分と世界のためのエオルス音はどこまでも果てしなく。自分と世界以外の誰のものでもない世界と自分は純粋に果てしなく。神話のような奇跡のよう、鮮やかに続いていけたらと願いながらその鮮やかさが嘘をついて目が眩んだってよい。1度たりとも燃えあがりもしなかった、返事のない手紙のかたちをしていた湿気た紙切れより、ずっとよい。終焉の付け入る余地もない程に、この1番に沸き起こったどうしようもない単純のまま、そうして、世界を続けさせてしまおう。
 エレンの白い肌に赤い痕は残らない。それでもその首筋にはあの男がつけた、もう誰の目にも見えはしない、消えて、消えぬ痕がある。ヒストリアが掻き混ぜていた尻孔は既に充分に過ぎる程には馴染んでいて、指を抜く、ついでに軽く掻くような鼻先思案で肛門に指先の爪を滑らせた。それにすら大袈裟なまでに反応して身を震わせ泣くエレンの、頬に、肩に、腕に、手の甲に、口付けてヒストリアは告げる。

「エレン。あなたは私に逆らっちゃいけないんだよ。女王に逆らっても仕方がないでしょう? くちごたえも、歯向かうのも、抵抗も、私たち以外のヒトの名前を口にするのも、すべてだめ。ゆるさない」
「……ヒ…ス、トリ…ア……」

 エレンは震える声でヒストリアの名前を呼んだ。

「そんなにつらそうな顔をするのはどうして? もう何の心配もいらないのに。──私が全部してあげる。大丈夫だよ、安心して。エレン。ちゃんと、あなたが安心して生きてゆけるように私たちで何もかも、してあげるから」

 ヒストリアの話す声が遠い。散々にペニスをあらゆる方法で苛まれアナルをもほぐされてしまったエレンの躰は確かに解放されたがってはいるが、畳み掛けるような暴虐的な快感の連続に頭のほうが追いついていないのだ。ヒストリアが話している声も台詞もきちんとエレンの耳には聞こえている筈であるのにそれらを理解し考えるだけの余力がもうなくて、脳が情報処理能力を小休止させていて、エレンはうつくしい双眸をうつろに濁していた。だからミカサが灼熱した視線でじっと、エレンの赤くなりつつもひろがって入口に成り果てひくついている尻孔を興味深げに視姦して、エレンの乱された姿に興奮し処女である膣を愛液で濡らしていることになぞまるで気付かない。赤の他人でしかないヒストリアでさえ気付いているのに。暁知されることのないばかりか意識も向けられぬミカサの姿に、かわいそうだとヒストリアは思う。それはヒストリアがヒストリア自身をかわいそうだと思っている程度に。ゆえにヒストリアは問う。

「ミカサは何色がすき?」

 履いている下衣越しに自らの股間を撫でて浅く息を吐いていてもそれ以上はどうしてよいかわからぬミカサは、問いかけられた意味に首を傾げて、けれど決然たる声で即答した。

「赤」

 突然に崩壊した日常で。殺された両親の遺体から溢れて流れていたその色は、エレンが殺めた男たちからも同じく飛散し滴り落ちた色であり、ミカサが初めて人間を殺したときに浴びた血飛沫の赤だった。でもエレンが巻いてくれたあたたかなマフラーと、も、同じ赤でもあった。悪人も善人もその皮膚の内側では等しく赤い血が流れているのだと知って、身も心も凍える程に寒くてたまらない絶望を包んでくれた優しさもまた、等しく赤い色をしているのだとエレンに差し延べられた手で知った。何より愛しい金色と同じくらい大事な色。それと同じ赤い棒切れが、今度はヒストリアの手にあった。

「…これは、何?」
「平均的なおちんちんを模した張り形。ミカサをエレンと繋げてくれる。生地には上等なシルクを誂えているし固すぎない素材でできてるから、初めはちょっと痛くても、ミカサのなかを傷つけたりしないよ」
「どう、つかえばいい、の」
「簡単だよ。下を全部脱いでミカサの濡れて焦れているところに挿れるの。初めてだから慌てないでゆっくりね。片側をエレンのお尻に挿れて、あとはミカサのしたいようにすればいいよ」
「!? ヒスっ…おまえ! ミカサに何てことさせようとしてんだやめろ…っ!」

 さすがにそれは聞き逃さなかったらしい、エレンはヒストリアを咎めたが、ミカサは表情こそ変えないけれど火照る熱を持て余し上気した頬と欲情しきった黒曜石の瞳でエレンを見ながら、羞恥も澹如たりに下衣を脱ぎ捨てて。そしてヒストリアからそれを受け取った。

「エレン。選んだ、のは私自身だ。私は、あなたと繋がりたい。と、願ってきた」
「っ正気に、なれよっ…ミカサ!」
「私は、正気」
「エレンたら、逆らうなって言ったばかりなのにもう忘れちゃったの? 馬鹿な子程可愛いとは言うけど…それって母親が子に思う母性本能だけに限った話だったのかな。って言っても──私のお母さんは、母性本能なんて欠片も持っていなかったから、本でしか識らないんだけれどね」

 まァいいや。と何もよくないだろう不穏さを隠しもしないヒストリアが共笑する。だって可笑しいのだから仕方がない──だって、

「エレンは──前だけでも、後ろだけでも、寂しいでしょ?」
「う、あ、っ!?」

 包帯を巻かれている手で軽々とエレンの躰を持ち上げて、ミカサはベッドの上、沈むエレンを跪かせるような体勢をとらせた。否、整えた、と言ってもよいかもしれない。ヒストリアは先程嬲っていたように再びエレンのペニスを圧挫させるかの如く力いっぱい、全身全霊、わきだしては枯渇する兆しもない、どれだけ激しかろうともいずれ去る雷雨ですらまったく比較にもならない、小さな躰のなか滾るだけ滾って猛威をふるい溢れいくばかりの愛欲を込めて、踏みつけた。

「…ッ! あ゙ゔっぐ、ア゙っア゙ァア…っひ──ア゙ア゙ァ!」
「ほら。そうやって泣き叫ぶくらいしかできないくせに」

 ぐりぐりと足の裏で弄ばれるペニスはとうに真っ赤に腫れあがり、塞き止めるため用いられた縄の下では充血した皮膚がおぞましい色となっているだろうことは、わざわざ確かめる必要もなく想像にかたくない。悲鳴をあげながらも淫らに感じているとまるわかりの、いやらしい躰で、痛い、痛い、とエレンは喚く。

「うそつき。痛いだけじゃあないんでしょう? 訓練でも闘いでもあんなに勇ましかったのに、ふふ、エレンはほんとうに弱いね。あァ、あいつがあなたを弱くしちゃったのかな? じゃあ、そんなの。もっと、もっともっとずっと、虐めてしまいたくなっちゃうじゃない」
「ゔゔぁあっ、ヒ、ィあ゙あ゙あ゙あ゙痛い゙あ゙あ゙あ゙っ踏む、なっあぁあ゙あ゙っ」
「そんなたまらない泣き顔を、あうさわに見せるから、エレン、あなたはだめになっちゃったんだよ」

 ひんひんと小さな子供のように泣きながらそれでもよがるエレンのペニスを乱暴に扱いつつも、ヒストリアの胸のなかには言葉にならない歓喜がつのっていく。まだ。まだもっと。たりない。満たされない。満たされたくないのかも、しれない。

「ン、っ…く、……ぁ、」

 エレンの真後ろで膝立ちになっているミカサの膣へミカサ自身の手によって緩慢に、慎重に、沈み込み呑み込まれてゆく赤い色。うつくしく筋肉のついた内腿へと、滴る体液さえうつくしく。やや眉間を寄せながらもはやくエレンと繋がりたいと伝わる、はやくて浅い呼吸を繰りだすその薄くひらかれた唇が待ちきれないのだと僅かに震えて。

「は、っあ、はぁ…っ、……挿っ…、た」

 ミカサは、今にもあざりだしたい程嬉しそうに呟いた。エレンをすきにしてもよい。それは断じて悪魔の囁きなどではなかった。すき、エレン、すき。そう言って、ヒストリアにペニスを嬲られているエレンの尻をミカサは持ちあげて、自分のなかにおさめた赤い張り形のサオをエレンのアナルめがけてひと思いに、叩き挿れた。

「!? だっ…ア゙、……ミ、カサ…っあっぁあああっ!」
「エレン…っエレン、はっ…ぁ、エ、レンは──どうされ…たら、気持ち、悦い?」
「やッぁあア゙ア゙ァ! い、やだ、ひっぐぅうあ゙ァあ゙ゔゔゔ──ッ!」
「ミカサのすきなように動いちゃえばいいんだよ。エレンはおちんちんだって私にすきにされて、ほら、とっても悦んでるでしょう」
「わかった。そうしよう」
「む、りぃっ! あっが、ア゙ア゙ア゙ア゙ァ、! ひっ、い、いまッ……動か…っれ、た、らっ────ア゙ァぁああ゙あっっ!」

 まるで獣だ。ヒストリアは陶酔した瞳でエレンを見詰めそのペニスを嬲り、ミカサはエレンの爛れ熟れたアナルを何度も何度も、何度だって突く。──エレン、ねえ、エレン、

「ねえ聞いてどこにも行かないでずっといっしょにいて」
「あなたがすき」

 徒夢に見てきた少女たちの切実な望みはたったそれだけ。きっとエレンには聞こえてなどいないだろう。だがそんなことはどうでもよかった。埋もれてゆくことに感じる安堵感と恐怖がヒトによってそれぞれ異なるように、たったひとりであっても輝いてしまう彼が、世界が、この恍惚と劣等感が。これから先をただ壊そうとしていたのだ。ただそれだけのことなのだ。もう、声を抑える気力すらもない、いたぶられるペニスの激しい痛みに強制的に引き出され感じる幾久しい多幸感。と、同時に。抉り掻きまわされるアナルのなか、舞い狂うような動きでやまぬ抽送の度に、先刻までのどこか跳ねるような嬌声ではなく、だらしなく間延びした声を漏らし、あだめくエレンの躰はひくひくと震え続けていた。柔らかな前髪が汗で額に張りついても隙間から覗くその金色の瞳は、熱せられた蜂蜜のようにどろどろに蕩けきっており、勇ましさや優しさやつよい憧れを湛えたあの瞳とはもう随分遠く掛け離れていた。涎まみれになった口許で舌を淫靡にだらんと垂らして、はふはふと荒い呼吸のままに欲望に支配された理性を放棄し、もっともっとと言葉にもなっていないすだきながらの色声だけで駄々を捏ねる、エレンは娼婦なぞより余程ヒト以外の何かのように、快楽を貪る程おかしくなった。──違う──おかしかったのはあの男と共にいた頃のエレンで、ここにいるエレンはおそらくやっとまともさを取り戻したのだろうと。どこにもないのなら、つくりだしてしまえばよい楽園。──私たちのためだけにある世界を──ヒストリアはそう結論づけて。

「あ゙ぁ…ゔゔッ──っ! も…ォッ、ひぃやァだ…ア゙ア゙ァっ……ぁ、ぁ、ぁ、あっ、」
「いやなの? エレン、やめて欲しい?」

 女王は優しく、まるで幼い子供を寝かしつけるお伽噺を語るような声でエレンのその耳に唇を寄せ、吐息をそこへ這わせて問うた。

「ふ、ぅ……っも…せ、て……」
「うん? なあに? そんな小さな声じゃ聞こえないよ、エレン」
「っ、もぅ──っイ、かせ、っ…てぇえぇ…! おかっ……おかし、く、──なる……ッう!」
「射精したいの?」
「ア…っ──した、いっ……しゃせ、え、──したい、っ、だし、たいぃい゙ッ──……」

 エレンのペニスから足をどけたヒストリアの袂に縋るようにして、エレンは弱々しく泣いた。

「そう、そうだね。このままじゃ精液だせないもんね。ね、ミカサはどう思う?」
「私、は……エレンがつらい、まま、なのは、いや」
「ふふ。私もそう。じゃあ1度、出させてあげようか。……エレン、もう我慢しなくていいよ」
「ック……っふ、ぅ、ぅ、ン、っうん……!」
「あはっ、──可愛いね、エレン。ちょっと待ってて? ……ん、と。はい、いいよ」

 エレンのペニスの根元、かたく結び縛りつけていた縄をヒストリアがほどく。相当いかしくも、つよく食い込んでいたのだろう。ほどいたそこには醜い程の鬱血痕が残り、きつく縛られていた事実を如実にあらわしていた。そうしたのは他の誰でもない、ヒストリアなのだが。

「っあ、ァ、ぁ……っヒ、スト、リアっ…、んんっんあ゙あ゙あ゙あ゙ァ──っ」

 ひときわ盛大にエレンは息を呑むような嬌声を上げて、ヒストリアの名を呼んだ。差し延べられた小さく細い如何にも女の子らしい手をぎゅ、と握って、

「あ、っは──ひあっ、ああああああぁぁぁい゙ッ…あ゙あ゙あ゙──……ッ!」

 嬲られたペニスから精液を沛然とたりに撒き散らしエレンは激しく達した。がくんッ、と前のめりに倒れこむ薄い躰をミカサが後ろから抱き締めとめた。あまりにも激しく惨酷なまでにぐちゃぐちゃにされたのちの射精であったせいで未だ暫しぴくぴくと震える躰、そのエレンの頬に、少女たちは左右からそれぞれそっと口付けていた。エレンの白い肌には何も残らない。残せない。おぞましい程の鬱血痕すらも、エレンの持つ再生能力ですぐに消えてしまうのだ。けれど、もう、大丈夫。ミカサに抱き締められていなければ即座に崩れ落ちるだろうエレンの手を取りそこにある指を絡め小指にばかり力を込めるミカサを抱き返すこともできないエレンに、自分も、と、抱きつきながらまた泣きだしたヒストリアが、エレンの髪を撫でた。汗でぺとりと張りついているエレンの髪はどしゃぶりの雨にでもうたれてきたかのように指にひっかかって、撫でにくい感触だった。
 そんなふうにヒストリアとミカサはエレンを犯した。嵐が去り雷雨がやんでしまうまで数えきれないくらい、幾度も幾度も、順々に。それはエレンにとって、もしかしたら発狂するほうが楽なのではあるまいかと思わせる肉欲の嵐だった。いったいヒストリアは、ミカサは、──エレンは、どこから釦をかけ違えたのだろう、だとか。そんなくだらない思考はどうでもよいので更なる享楽と欣幸を求めた。どうせ生きねばならぬのならば、どうせ世界を憎むこともできぬのならば、手のなかにあるものを存分に活かしてつくられた時間を謳歌するべきだ。少女たちは自身を偽る孤独をほんの少しの勇気でもって見せかけだけの複雑さごと単純に殺してやった。
 数日に渡り停滞した嵐の翌朝はまるで、何ら普段と変わらずまったく何も、何もかも、起こらなかったかのように、空高く突き抜けるきれいなスカイブルーをゆったりと漂う雲の隙間から、あたたかで優しい木漏れ陽にも似た光を、相知らぬ顔で晴れた世界へとただ無邪気に注いでいた。穢さなど一切知らない、新しく生まれた赤子のような素振りで。





 揺さぶられる黒い尻尾にあわせて勝手にくねる少年の腰が漏れいく色気を孕んでいる。エレンの白い肌に赤い色はとても映えていたけれど、白の対象色である黒も同等によく映える──違う──例えば結婚式の主役が着る衣装のように、あなたの色に染まります、と居もしない神の御前でキスを交わし誓いあうように、白には、なに色であろうがきらきらと映えるのだ。それが、かなしい程に、重ねれば重ねていくだけ純白からは遠ざかってしまう色であっても。

((光は重ねれば重ねていくだけ純白へと、完全な無へと──還ってゆくのに──そしてまた孵ってゆくのに))

「あっ…んっ、ふ、…っ! ねえ、ミカサ。あなたがっ……は、ぁっあ、エレンのためにここへきたとき…っン! 私が尋ねた、ことをっ…あっあっぁああっ、覚え、てる? ──うん。そうっ……くっふぁ! 家族について、それもある。ッ……あぁっもう、エレンっ…締めす、ぎっだってばぁあっ…! んっ、でも…まだ、答えを…っ教えてもらって、ないっ…よ、……くっふぅ、っあン、エレンったらァあっ!」

 エレンのアナルと繋がる黒い尻尾を抜ける寸前まで引きながら直後に最奥へと叩き込み、セックスにおける男と女の両方の悦びを味わうヒストリアはミカサに問い掛ける。

「っ…は、ぅ、……どれ、っの、こと?」
「幼い…っ頃の、ミカサは、エレンと添い寝、してた? ……はっぁ、あぁっ」
「した。……ッは、1枚の毛布をかぶって、1度っ…だけ、」
「1度だけ? いっしょに暮らして……あっ、いたのに…っ?」
「そう。私が初めて、自分から、エレンに、家族、だと言った日の、夜」

 ヒストリアが動く度に前のめりに崩れていくような、エレンのますます薄くなった躰は、嵌め込んだミカサの膣のなかを突く。ミカサの膣はそれを咥えて離さず貪り食べている、そう今は。今は、まだ。こんなふうにしか。

「ど、うしてっぇえぇ…1度だけ、だったのっ…? はぁっ…、ぅっんっ」
「頻繁にくっつこうとする、と、エレンが、弟扱いするな、と……、怒る。ので」
「ふうん……男の子って、変なこと…ッあ、気に、するんだね…っぇ……ッ、エレンらしい、って、言えば、っああぁ……っ何だか、エレンっ、らしい感じっ……だけれど…、ぅうっ、…んっんっんん…!」

 部屋中に満ちる水音は、少女たちの愛液と少年の腸液がぐちゅぐちゅと鳴く。エレンのアナルのなかから溢れてしまっている円滑剤がヒストリアとの接続部でひどく泡立って。ねとり、絡みつく卑猥さを増して。

「よくわから、ない。…ただ、エレン、と、アルミン、はっ…、しょっちゅう、いっしょに……ッ外で、本、をっ、読みながら、いつのまにか、顔をつきあわせ、て、昼寝を、していた。ッく、…エレ…ン、深い…っ子宮に届い、て、っ…し、まう! けれどヒスっ…トリア、私は、……っ混ぜてもらって、いない」
「え、ぁ、あうっ……、それっは、何で? ミカサが…ぁ、女の子、っだから…?」
「違…う。私はふたりを起こす、役。……なので、時々、夜中に、エレン、のっ…ベッドへ、勝手に、もぐりこんで、いた。ッでも。エレンが起きる前に…っは、はぁっ…、出ておかなければ、いけなかった、から、それは、添い寝、と呼べ…な、い……っ」
「ひぁあっ…ぅんっもう! エレンっ……」
「エレンを、っ抱き、締めながら、ちゃんと……っ眠りたかった。ずっと、したかっ…た、」

 添い寝。
 と、いま現在ここで隠しきれもしないでいる積極性が不思議な程に、ミカサは控えめに喘ぎ、呟く。

「……アルミンはよくて私はだめ、なんて、エレン…は、わけがわからない」

 寂しげにそう言ったミカサにヒストリアは共感共苦をしてみたくて、わざとエレンを非難するような口ぶりで言い做す。

「だって。エレン、聞いてる……っ? 家族なら尚更、っん、添い寝くらい…してあげれば、よかったのに。今っ…みたいに、私たちと、する、みたいに……ッ」

 添い寝。

「あっくぅ……、んっん、ふ、…っあ、あ、っ」

 ヒストリアに攻められつつミカサの膣内を穿ちながら、思い出してみる。そんなつまらないことを──おそらく今よりずっと短絡的な幼いばかりの子供だったエレンがただ照れ臭くて拒否していただけであったのだろうことを──つまるところ、エレンには取るに足らない程にたいして記憶にも残っていないようなことを、ずっと、何年も独りぼっちで押し殺しては、ミカサは握り締めてきたのかとその寂しさを想像すれば、手の施しようがないくらいに、押し只管にいたたまれなくて、どうしようもない気持ちになって、エレンは自身の真下で女性器をひろげっぱなしているミカサの手のひらに、ふわり、と包み込もうとして、自分の手を重ねあわせた。長身で筋肉質なミカサの手はエレンの手より、少しだけ、小さくて。

「エレン。エレンはもう、ここからどこか、へ、私たちじゃない誰かのところへ、出て行こうなんて……思っていないよね?」

 エレンをバックから犯しながら、堂々たる女王然とした態度で脅すつもりだったのが噛んでしまったような、やたらと意固地に怯えているふうに、らしくもなくおそるおそる尋ねたヒストリアに、エレンは答える。

「んっ…ぁ、はあっ、……どこにも、行か、ねえよ」

 贖罪にもならない。逃れたければいつでも逃げだせるエレンがおとなしくも逃げだそうともしないのは、屈したというわけではなく同情の類いでもなかった。こんなことでよいのなら、あれ程嫌悪し続けてきた巨人よりも深い罪悪のかたまりであるこんな穢れた化け物の身ひとつでよいのならば、よろこんで差しだそう。少女たちのすきにされようと。それくらいにしか役にもたたないこれは既に圧壊する夢の抜け殻だ。もう飽きたといつか放置されようと、殺されてしまおうとべつに構わない。日に日に鈍っていく生存欲求。いまはもう与えられる原始的な快楽をただ受け入れるだけ。
 それでも気持ち悦さに揺れる不埒なこの躰はエレンが望まなくとも生産をやめない精子で遺伝子を残そうと、生存活動をやめないのだから我ながら呆れかえる程に救えない。どうして種をつくるのだろう。いらないものでしかないのに。切羽詰った声をあげ、エレンは心から依願の意を込め叫ぶ。

「ッ……ミカ、サ! 出、るっ…どいて、っぁあ、どっ…いてっ…、くれ…っはや、く!」

 愛ではない。いたわりでさえない。でもエレンには次の命を繋いでゆるされる、権利がない。つい先程ヒストリアはエレンの子供を生むのは自分なのだとミカサに主張し、ミカサはミカサでエレンの子供なら自分にも生めるだなどと話していたが、エレンはそのどちらも嫌だった。自身の精液で、この遺伝子で、何かが生まれてくるなんて考えたくもない。したくもない臆想を巡らせるだけで、耐えがたく吐き気がする。どのようなかたちであろうとも、ミカサには、ヒストリアには、いつかここから──自分から──離れて幸せになって欲しいのだ。そうならなければ不憫すぎる。
 ミカサは一瞬だけ躊躇するような、如何にも名残惜しそうな顔をして、けれどいつものことでもあるのでひらいた躰をずらしすり抜ける。嵌っていたエレンのペニスを膣から吐き出して。そこで漸くエレンは胸を撫で下ろし、ヒストリアに射精を促される。苦しい。何が。すべてが。何もかもが。──生き続ける、ことが。エレンは冷たさを失った床へと精液を散らした。白濁した青く生臭い、異臭。どこにも遣れない拳を行き場を持て余し握り締める、ミカサがエレンの背を撫でた。固い床につけていたせいで背骨が痛んでいるのはおまえのほうだろう、エレンはそれを言えなくて、脱力した躰で荒くなった息をする。ほんとうはもう、呼吸をすることすら億劫だ。無理に食事を喉へ流し込む行為より、もっと。ヒストリアが白濁にまみれた床に手をつけて、掬った精液を泥遊びでもするように、その小柄で女の子らしい躰にぬりたくる。

「エレン」

 呼ばれて、それだけでこの先をどうすればよいのかを知悉しているエレンは秩序を保つそれだけのために、すぐには整わない息吹を乱したまま、ヒストリアの慎ましやかな胸へ腹へ臍の窪みへ、ぬりたくられている肌の隅々まで、舌を伸ばし、ぴちゃぴちゃと音を立てながら、自分のペニスから出た精液の残骸を舐める。そこに不味いも美味いもない。舐めて、というひと言の命令さえも。無心で舌を這わすエレンのその姿に、あァ、と、ヒストリアが満たされていくような熱い溜息とささやかな声を漏らす。ヒストリアを舐め尽くしたら、掬いきれずにミカサの足許に点々と残っている、床へと舌を伸ばすのだ。プライドなどという無駄なものはいらない。軋んだ嘘でできているから。うまくいかない悔しさも、死にたくなるような恥ずかしさも、ずっと前に亡くしてできてきた躰だから。どこにも行かない、ここにもいたくない、居場所など欲しくもない。雨風も凌げない、木陰さえもらえない、見つからないってどこにもないって云いながら、命を棄ててもよいいつかを探しているほうがよい。きっとこれから先の日にも誰のものでもないエレンに、エレンが飽きる日はこないのだろう。血じゃないの、私がずっと欲しかったものはそんなものじゃあなかった、女王にされた少女は云った。どうしよう、どんなふうに繋がろうとしていても光とセックスはできない、家族であった少女は云って。透きとおるだけで何も残らないのだと泣く。不可侵の世界。つくりものの楽園。避け続けるチェック・メイトは、子供たちのわがままで続いている。世界は世界における世界のもの、以外の何でもないのだと抱き合わせに目を潰すようなアンチ・バランスで何とか成立している、禁書をめくり壁の外を夢に見た擬似海原の底にある、ような。誰かの命を救いたくて集めてきた誰かの血を踏まれた花に名前も知らず振り撒いた傲慢、に。だから、ごめん、少年が少女たちへとこうべを垂れて云ってしまえば、それらは一気に崩壊するということを理解している。それでこそのものであるのだ。自身の精液をすべて舐め尽くし、ふっと息を吐いてから、くあ、と、おおきくあくびをしながらエレンは伸びをした。どこもかしこも甘ったるい、ここは退屈で、エレンの睡眠時間は毎日どころか数時間も経たずに延びていく。

「エレン、が。眠そうだ」

 ミカサが言った。

「ん。んー……? 眠い」

 エレンはベッドに頭だけを突っ伏し答える。ふかふかのそこへ頭は沈む。

「エレンは小さな子供みたいに眠ってばかりね。だけど、せめてシャワーくらい浴びてから寝よう?」

 ヒストリアが言った。

「眠い…やだ。起きたら、風呂…入る。眠い。寝た、い……」

 うつらうつらとエレンは答える。

 閉ざされてゆく瞼の下で蜂蜜色はもう誰のことも見ようとしない。少女たちは顔を見合わせ困ったようなふりをして、やわらかな微笑みを浮かべる。包帯などとっくにいらなくなった傷のない手はエレンを抱えてベッドに転がし、小さく女の子らしい手はベビーピンクのブランケットを薄っぺらい痩身に掛けた。少女たちは少女たちの世界をそこかしこに見ている。いずれエレンはここで死ぬだろう。密やかに。眠るように。それはきっと、近い日に。平和はいらない。もしも少女たちが少年を泣いたとしても。

((あァ何て──しあわせなんだろう))

 少年を真ん中に少女たちはメルヘンチックなベッドにそうっともぐりこんで。両側から抱き締めて。

((あなたがすき))

 ちっとも眠くはないので代わりに少年の寝顔を飽きもせずに眺めていたい。頬杖をつくのがだいすきな少女たちの肘と片頬は──今日も赤く──色をかえる。





sakiさん、まずはごめんなさい。1年越しにならなかったことがせめてもの救いかとさえ思うくらい驚嘆する程遅くなってしまいました。すみません。しかしてsakiさんにより「女神サマをやめたヒストリアとエレン厨すぎるミカサでエレンを性的に虐め尽くすのはどうか」というリクエストっていうか、最早私を気が済むまで苛むおつもりだ!(笑)としか思えぬメールを齎されたときは流石にsakiさんの頭を疑いまry(失敬!w)。だってカオスにも程があるでしょう!?(笑)ほんとにもうsakiさんまじsakiさんんん……っ_( ´ ω `_)⌒)_いったい私はどうすれば良いのかと。寧ろsakiさんはいったい私をどうしたいのかと(笑)。考え抜いてやっと此度書き上げることが出来ました。ぶっちゃけ疲れたよ…www
ですが、sakiさんとのとても長いお付き合いのなかで、またもや新たな進撃二次を楽しく書かせて頂いたのも本音です。うん。正直めちゃくちゃ楽しみながら書いていましたよwww脳のてっぺんかっぴらいちゃったような状態でしたよ執筆中ずっとwww
心から、ありがとうございました。なので少しでも楽しんで頂けたならば幸いです!(……でももうコレ書き直しようも続編とかも無理ですからねっ!?笑)
あー……sakiさんまじsakiさんwww(大事なことなので2度以下略☆彡)
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